二日目、夜。
――新規脱落者、無し。
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「とりあえず、野宿は免れましたけど……あの、本当にここで寝るんですか……?」
震えた声で尋ねる
「仕方ねぇだろ? それとも野宿の方がよかったか?」
「だからって……なんで! 教会の中なんですか!」
そう。二人がいるのは小さな教会の中だった。シンプルながらしっかりと装飾が施されているその中の、礼拝堂の長椅子を適当に選ぶと、景梧は寝転がった。
「ただの教会に、なに怯えてんだ? こっちは命がけなんだぜ? ここで寝て罰が当たるとでも? はっ! そもそもこんなところに連れてこられている時点で、俺達は
それだけ告げて、景梧は目をつぶった振りをする。そうしているうちに、純汰も諦めたのか、少し離れた位置で椅子にもたれかかって静かにしているようだった。
それを確認しつつ、景梧は再度欠伸をする。なにせ、ずっと警戒している上この三日、軽くしか眠っていない。いい加減、眠さなどでストレス反応が来そうだった。
(……だが、案外ストレス反応でてねぇんだよな。これも魔女の力の影響かねぇ? 身体能力もかなり向上しているわけだしな)
ガウェインの座に就いている彼との戦いを思い返す。彼の剣技もそうだが、自分の戦闘も普段ならありえないくらい熟練された動きだった。
この現代の日本において、甲冑を着た状態でましてや剣を振るう機会などほぼゼロに近い。
つまり、ここに集められている者達に、剣術の技量は本来高くない。勿論、剣道部などに入っていたなどの差異はあるだろうが――少なくとも殺し合えるほどの腕前にはならない。
(身体能力、機能の上昇がこの厨二臭いペンダントのせいとして……問題はあの張り紙だ。意味については|な《・》|ん《・》|と《・》|な《・》|く《・》|わ《・》|か《・》|っ《・》|た《・》。だからこそ、この場所を選んだわけだが、さてどうでる?)
狸寝入りでいびきを大げさにかいてみた。しばらくして……純汰がゆっくりと身体を起こし、ふらついた足取りで景梧に近寄り――槍を呼び出した。
それを確認した景梧は勢いよく身体を起こし、すぐに剣を取り出し純汰に切っ先を向ける。
そして、気づいた。彼の目が虚ろなことに。
「なるほどな? 俺達が殺し合わねぇから介入し始めたってか? 魔女さんよぉ?」
正体をあっさりと見抜かれたからか、純汰の身体を借りた魔女が口を開いた。
『やはりあなたの目は誤魔化せませんか。初めまして、ケイ卿。ワタクシはガレス卿の担当を任されております、魔女・ティティスと申します』
静かな口調で名を名乗ったティティスに対し、景梧が鋭い目つきをしながら尋ねる。
「それで?
『いいえ、これは……ワタクシの、ティティスの独断でございます』
その答えを聞いた時だった。景梧の魔女・モノロエが久しぶりに声を発した。
『ティティス、これは重大な違反です。騎士の身体を操ることは
だが、ティティスは反論する。その声は、機械音声にしては感情があるように思えた。
『いいえ、これ以上は我慢なりません。ケイ卿、あなたのガレスへの扱いにはおおいに不満があります。扱いを改めるか、ここで死ぬかを選びなさい』
「はっ! なるほど? 魔女様はガレス君が可愛くて仕方がねぇと? お笑いだな。……たかが
そう言い放つと、景梧は切っ先を向けたままティティスに向かって告げる。
「俺はそのガキと助け合う約束をしたんだ、てめぇじゃねぇ。朝春の張り紙を仕組んでここに連れて来たのは褒めてやるが、それ以上しゃしゃるなら、今ここでこのガキを殺す。それでもいいのか? 言っとくぜ? 身体ってのはな……
景梧の言葉に沈黙するティティスに対し、更に話を続ける。
「それに、扱いはともかくとして……俺は何度もそのガキを助けているはずだが? じゃなきゃ、とっくに脱落している。違うか?」
『それは……そう、ですが……』
「なら……黙ってみていろ。俺達の戦いをな?」
その言葉がトドメになったらしい。ティティスは純汰の身体を元いた椅子のところまで戻すと、身体から離れたのか純汰が動かなくなる。そして、彼の寝息が聴こえて来た。
その様子を確認にして、景梧は再度長椅子に横たわる。
(……焦ったぜ。だが、収穫はあったな。魔女には統一された目的はあるが、その中でも騎士になった連中への入れ込み方などに差異がある。だとしたら……それこそが鍵かもな?)