夕方を迎え、野宿は危険と判断した
「ふぅ~。歩き回ったけど、収穫なかったね~?」
太陽が近くの木箱に座ると、忠義も床に
「いえ、収穫ならありましたよ」
「え?」
訊き返せば、忠義がハッキリと告げた。
「おそらくですが……我々は監視されています。いえ、というよりも、観察されていると言った方が正しいのかもしれません」
彼の言葉の意味が理解できず、太陽が首を傾げる。その様子を見ながら、忠義が続ける。
「わたしが思うに、このペンダントが我々の力でもあり、枷なのでしょう」
「それはまぁ、そうなんだろうけどー。それが収穫なわけ~?」
ようやく理解した太陽が伸びをしながら尋ねれば、忠義は律儀に返事をする。
「いえ、それだけではありません。……アーサー王に該当する人物はおそらくすでに亡くなっているでしょう。そして、それが鍵なのかと思います」
「まぁ、アナウンスでもそう言ってたしね~? それがどう鍵なわけさ?」
「アーサー王伝説がイギリス発祥というのはご存じですか? 古くから愛されている物語の一つで、昨今の日本ではメジャーかつ有名です」
そう言われて、太陽は深く頷く。
「そうだね~、めっちゃ有名だよね。特にエクスカリバーだっけ? あの武器とかさ、そこらへん凄いよねぇ。不動の人気って感じするよねー」
太陽も凄くアーサー王伝説に明るいわけではない。それでも、オタク気質な客が店に来ることもあって、多少の知識はある。
「そうですね。アーサー王が少年期に選定の剣を引き抜いたことで物語が始まり、彼が死に、エクスカリバーがあるべきところへ返されたところでこの物語は終わります。至極簡単に説明すればですが」
「それで~? その話がどうかしたの?」
訊き返す太陽に向かって、忠義が答える。
「では、この戦いの主催者が言うところの
「そう言われてみれば、ぼく達……知らないね?」
「そうです、問題はそこです。伝承においての円卓の騎士は、アーサー王のもとに集いし者達です。ですが、我々は……そもそもアーサー王の顔も名前すら知らないのです。その状況でなにゆえ円卓の騎士を名乗れと言うのでしょうか?」
言われてみればその通りのため、太陽は素直に感心して拍手を送る。だが、忠義の顔は晴れない。
「だからこそわたしは知りたいと思うのです。――彼女達がアーサー王とする人物のことを」
その眼差しは鋭く、それでいてどこか影があった。