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第22話 その一方で

 同時刻。


「なっ!? 高い! 高いですよ、この壁!!」


 背丈をはるかに超える高さの壁を前に、純汰じゅんた景梧けいごはいた。


「言われなくてもわかるから、静かにしろガキ」


 そう純汰に言い放つと、景梧は思考を巡らせる。


(これほどの高さの壁をなぜ用意した? 逃げられたくないからか? それとも場所を特定されたくないのか? このクソゲーを主催している奴の狙いはなんだ? |朝春《あさはる》となんの関係がある? いや、そもそも本当に朝春の死と関連しているのか?)


 モノロエと最初に出会った時言われた言葉を思い返す。彼女は確かに『朝春の死の真相を知りたくはないのか?』と尋ねて来た。


 だが、実際に今起こっているのは殺し合いゲームだ。その事実と弟の死がどうしても繋がらない景梧は、知らずと舌打ちをしていた。


「お、お兄さん……あの……あの!」


 勇気を振り絞った声色にも、景梧は気にすることなく視線は壁を睨みつけたまま訊き返す。


「なんだ? 俺は今考え事の最中なんだが?」


 やや苛立ちげな景梧に、純汰は怯えながらも口を開いた。


「あの……さっき視線をやった時に見つけたのですが……あの張り紙の男の人って……お兄さんに少し似ている……気が……して……その……」


 そう語りながら張り紙を指さされ、視線をやればそこには――景梧と同じ赤髪の青年の顔が写された、張り紙が確かにあった。


「なっ……あさ、はる……?」


 あまりにも突然の展開に、思わず景梧が声を漏らす。


「あさはる……さん? お兄さんのお知り合いですか?」


「……」


 答えないかわりに景梧は訝しむ。なにせ、朝春のことを考えていた途端に、この張り紙が現れたように思えたからだ。


(タイミングが良すぎる……どういうことだ? このガキ……はねぇか。コイツが仕掛けているならあんな動揺はみせねぇな。……いや、役者なら別か?)


 隣で不思議そうな表情を見せる純汰に視線をやる。その目に嘘は感じられない――そう自分の勘が言っているのか、それともそう信じたいだけなのか、景梧自身


 その事実がまた、景梧を苛立たせる。だが、それに純汰が当然気づくわけもなく。どこまでも純粋瞳で景梧を見つめてくる。


「ちっ……。この張り紙、木に打ち付けられてのか……。イイ趣味してんな? 人様の弟君に失礼すぎんだろ。可哀そうな俺のだことで」


 三度目の舌打ちをすると、景梧は木から張り紙をはがす。

 というのも、彼らがいるのは小さな森が近いところで、そこにある壁へと辿り着いていたのだ。


 通りすがりに戦いの痕跡は確認できたものの、それ以外の情報は得られなかった。


 ――なのに、ここに来て情報が与えられた。


(……狙いは……なんだ?)

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