「はぁ、はぁ……!」
壁に囲まれているとはいえ、広いこの殺し合いの場。
その中にある小さな森の中で、ガウェインの
(おいおい! 冗談じゃないぞ!? まさか日光があまり当たらないところに追いやられるなんて!)
伝承において、ガウェインは朝から正午になるまでの間、その
故に、今、ガウェインである彼にもその特性がもたらされている。なのにも関わらず、日陰にしかならないような森の中にいるのには事情がある。
「ちきしょう!
苦み虫を潰したような表情で、なんとか木陰から脱出し日光が照れされる場所に出たい。出たいのだが……。
「逃がしはしません! ここで死んで頂きます!」
水色の短髪をなびかせた青年が、十字架が描かれた逆三角形の盾を持ちながら追いかけてきていた。
その重そうな盾や甲冑の見た目とは裏腹な、迅速な動きにガウェインである彼は悔しさをこれでもかと言葉にしてぶつける。
「あのさ! しつこい野郎とは気が合わないんだよね!? いい加減にしてくれないかなぁ!!」
完全に負け犬の遠吠えだが、水色の髪の青年は耳を貸す気はなさそうだった。
「大丈夫です! あなたの死を無駄になど致しません! 必ず、仇は取りますから……死んでください!」
どう考えてもサイコパスな発言をする彼に改めて畏怖するガウェイン。そうこうしている間に、小さな水たまりのある場所へ来てしまった。
逃げ場を探そうにも四方が木々に囲まれ、日光が遮られている。この状況はガウェインにとってかなり不利だ。
(はぁはぁ! 森の中じゃ、能力が! 最大限に引き出せないのに! コイツ、それを知っていてわざと!?)
ガラティンを構えながら、追いついてきたガラハッドと対峙する。
かたや剣、かたや盾。
状況だけを客観的に見るなら、追い詰められているのは盾を持つガラハッドだ。だが、現実は違う。
「さぁ、ガウェインのお兄さん? この盾の前に跪き、そしてぼくに大人しく殺されてください」
もはや宣告に近い。伝承のガウェインの特性に紐づいた能力である彼にとって、この状況は完全に――
それでもなにか策がないか? そう必死に思考を巡らせていた時だった。
別の騎士の気配が突如感じられた。……殺意も、殺気も一切感じられない不可思議な気配が。
警戒を解くことなく、二人が同じ方向に視線をやる。すると、木漏れ日を浴びながら薄緑色の髪と瞳をした優しそうな青年がゆっくりと二人の前へと現れたのだった。