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第13話 一方その頃彼らは

 その頃。

 円柱状の建物を探索していた景梧けいご純汰じゅんたは、会話を特にすることもなく数時間が経過していた。その状況に耐え切れず、たまりかねた純汰が声をかける。


「うーん……ここには資料になりそうなものとか、ないのでしょうかね?」


「さぁ? 適当に入ったからな……。だが、存外捨てたもんじゃねぇんだぜ? こういう寂れた場所にこそある情報だってあるもんさ」


「そ、そういうもんですか?」


 動揺する純汰をよそに、ありとあらゆる場所を漁る景梧。その様子はまるで盗人だ。荒らし放題な景梧に、純汰が思わず声をあげる。


「あの! そんなに荒らしたらマズイんじゃ……」


「は? 誰が何にマズイってんだ? 脳内お花畑もここまでくるとさぞ幸せなんだろうなぁ? いいか、俺達がやらされてんのは、殺し合いだぞ? どう考えたって何もかもが異常だろうが。そんなところで、礼儀なんざあるわけねぇだろ」


 あっさり言い切ると、景梧は更に室内を荒らしていく。この円柱状の建物は、高さがあるだけで階段などもなく、ただの物置のように使われているものだったのか、あらゆるものが大量に置かれていた。

 それを一つ一つ、雑ながらも抜かることなく調べて行く。


(なるほど? アーサー王伝説ってのはブリテン……つまり今のイギリス発祥ってわけか。皮肉だな。|英雄譚《えいゆうたん》が殺し合いのモチーフに使われてんだからよ。はっ、よほどこの主催者殿は頭がどうかしてるらしいな? まぁそんなことなんざどうでもいいが……)


 思考を巡らせながら、断片的な情報をパズルのピースを当てはめて行くかのように、整理して行く。

 その間、純汰もなにか手伝おうとしたのだが景梧に一蹴されたため黙って立っている。

 曰く。


「てめぇみてぇな考え無しが下手に動いて、情報を潰す気か? お花畑な不器用君は大人しくそこで見張りでもしてろ」


 そうこの建物に入った途端、言われてしまったものだから反論もあったものではない。だが、理にかなっているが故に反論もできず――今に至る。


 しばらくして、ようやく景梧が一息吐いた。そして、適当な椅子に座る。


「はぁ……全く、イイ趣味してんなこの主催者さんはよぉ。どんなツラしてんのか拝ませてもらいたいもんだよ。さぞ、不細工なんだろうぜ?」


 最後はただの悪口だ。だが、それを気にすることなく景梧が続ける。その表情は呆れたような口調とは裏腹に真剣そのものだった。

 その目つきの鋭さに思わず恐怖を感じる純汰だったが、静かに景梧の話に耳を傾けることにした。


「ガキ、確かガレス……だったな?」


「え? あ、はい?」


 話の見えない純汰に対し、景梧がハッキリと告げた。


「お前は運がいいぜ? 伝承もしっかりある有名な騎士のようだ。元ネタがな?」


「えっ!? そうなんですか?」


「あぁ、なんでも愛され君だったみてぇだぜ? ただし――最期は悲惨だったみてぇだが」


 景梧の言葉に純汰が思わず息を飲む。


「そ、の。どうやって……そこまで?」


「そいつを知ってどうする? ここは情報の宝庫だった。それだけのことだし、おかげでつくづく不公平なゲームに参加させられてんだと理解したぜ。全く……」


 そうぼやくと、景梧はハッキリと断言した。


、警戒すべきなのはおそらく二人――モルドレッドとガウェインだ」

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