大きな螺旋階段にたどり着いた
「あの? お兄さん、行かないんですか?」
小首を傾げる純汰に対し、景梧が心底めんどくさそうな声色で答える。
「こんなバカでかくてなげぇ階段なんざ、いい
「あっ……た、確かにそうですね。でもほかに、上に行けそうなとこなん……!?」
景梧がいきなり純汰を蹴り飛ばした。不意打ち故に上手く動けずダイレクトに地面に転がった。
「いっ! な、なに……を……!!」
痛みをこらえながらなんとか声を絞り出した純汰の目の前で、景梧が見知らぬ青年の剣を剣で受け止めていた。
それが俗に言う奇襲なのだと気づいた純汰の方へとは目もくれず、景梧は上から仕掛けてきた青年に対し、声をかける。
「上から奇襲して来るなんて、随分とイイ趣味してんな?」
「それはどーも! そっちこそ、顔面偏差値高いのに目つきが悪い上に死んだ魚みたいで減点~! それじゃあ女の子には受けづらいかなぁ?」
「生憎、女に困ってねぇもんで。つーか、そんなん気にするとか発情期か? あんましすぎるとハゲるぜ?」
互いに挑発し合う二人の間に、純汰は割って入れない。景梧に蹴られたのもそうだが、二人の鬼気迫る圧に屈している自分に気づいたからだ。
奇襲してきたウルフカットの銀髪の青年は、軽やかな身のこなしで一度後退する。景梧も手にしている両手剣を再度握り直した。
「それは困るなぁ。一応、これでもナンバーワンホストなんで、ね!」
青年が両手剣を構えながら景梧に向かって突進する。それをギリギリでかわすと、景梧が声をあげる。
「モノロエ!」
『はい』
「煙幕!」
『承知しました、ケイ卿』
その声と同時に、煙幕が辺りを包む。あまりの量に視界が灰色に染まる。その中で、純汰は誰かに勢いよく引っ張られ引きずられていく。
気付けば、中庭のようなところに逃げてきていた。引っ張っていた人物、景梧に向かってなにか言おうとした純汰だったが、彼の目つきの鋭さに思わず生唾を飲み込む。
しばらくして、ようやく景梧が口を開いた。
「おい、あの奇襲野郎の様子をどう思った?」
「あ、え?」
言葉の意味がわからず、困惑していると景梧が独り言のように呟きだした。
「気配なく、いきなりどうやって現れた? なんのからくりが? いや、そもそもアイツは円卓の
そう告げると、座り込んでいる純汰に向かって今気づいたかのように声をかける。
「おいガキ、座ってないでとっとと立て。行くぞ」
「い、行くって……どこにです?」
悪人面としか言いようのない表情で、景梧が告げた。
「亡きトリスタン卿のとこだよ」