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第5話 対峙する二人

 目の前にいる青髪で片目を隠した青年と対峙している霧彦きりひこは、未だを発動させない彼に疑問を感じていた。


「ねぇ、? 能力、使わないでいいんです? それとも、オレが使っちゃいましょうか?」


「その名前で呼ばれるのは遺憾だね。ボクには烏頭保季うずやすときという、立派な名前があるんだ。君にだってれっきとした名前があるんじゃないのかい? ?」


 モルドレッド卿――そう呼ばれた霧彦は口角を上げる。


「ありますよ~? でも、これから死ぬ奴に名乗る名前は持ち合わせていないんですよ、ね!」


 再び剣が重なり合う。先程からこれの繰り返しで、霧彦は飽きてきていた。


「いい加減、飽きて来たん、ですよぉ!!」


 痺れを切らした霧彦が次の手に出る。能力の使用だ。これは、魔女達から与えられるそれぞれの円卓の騎士由来の特殊能力のことなのだとか。

 それはどの円卓の騎士とされた青年達にも説明はされている、いわば共通認識のようなものだ。


 それを再度認識しながら、霧彦が胸元のペンダント、魔女モルガンに声をかける。


「モルガン!」


『イエス、モルドレッド。あなたの望みを叶えましょう……クラレント、目覚めなさい』


 霧彦が手にしている両手剣が赤く光る。それをみた保季も自身のに呼びかけた。


「なるほど、我慢できないお年頃かな? 悪いけど、ボクにも死ねない理由があるんだ……マゾエ!」


『把握致しました、トリスタン様。クルタナ、解放いたします』


 保季が持つ細剣も青く光る。双方の剣の輝きが増していき、騎士達に与えられた能力が解放されていく。奇しくも発動は二人同時だった。


「クラレント・オーバーレイ!」


「クルタナ・トランス、モード・フェイルノート」


 霧彦が放った光の飛ぶ斬撃を器用に回避し、細剣から弓へとマゾエを変化させ、保季は霧彦を狙い撃つ。


「なるほど! 遠距離ってわけですか! じゃあオレも遠慮なくバンバン放ちますよ~?」


 そう告げると、霧彦は本当に周りなど気にせず先程の攻撃を何発も放つ。それを回避し続けながら、保季は何度も矢を放つ……だが。


(……おかしい。なぜ矢がこんなにも当たらない?)


 フェイルノートは、必中の矢を放つとマゾエから説明を受けた。だが、実際はどうだろうか?

 ほぼ全く、矢が当たっていない。勿論、霧彦の回避能力と猛攻も要因だろうが、それ以外にも


「一体! どういうからくりなのかな……?」


 保季の疑問に答えるかわりに、斬撃が飛んでくる。何かからくりがある。だが、それがなんなのかまで、思考する余裕がない。

 額に冷や汗が浮かぶ。

 保季には、どうしても生き残らなければならない理由がある。


「ここで……死ぬわけには! いかないんだよ!」


 自分を再び鼓舞し、矢を放ち霧彦からの斬撃を回避しつつ、どうにか思考をまとめようとする。


(なにか……なにか……突破口はないのか?)


 その刹那、何かが視えた……気がした。

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