広い廊下に出てしばらくは誰とも会わなかった。
窓はあったが高さがある上、味気ない景色が見えるだけで、ここが日本のどこなのか判別できなかった。
なにせ、見ても空と
その事に内心苛立ちながら、
「おい、誰とも会わねぇんだが?」
『それは位置的な問題かと。もうはじめておられる方達もおります』
「……なるほどな。ってお前、そういうのがわかるなら先に言え?」
苛立ちを込めた景梧の言葉に対し、モノロエはあっさりと答える。
『とくに訊かれませんでしたので』
「……おい、このペンダントぶっ壊していいか?」
『それは推奨できかねます。ケイ卿のお命に関わりますので』
そう言われてしまうと、自分の勘が正しいのだと改めて認識させられる。あの時……武器の使い方と同時に流れて来たもう一つのイメージ。
それは、このペンダントが自分とリンクしており、壊れたりすると自分にもダメージが入るということだ。
「ほう? つまりお前は訊かれないとなにもできないポンコツってわけか。理解したぜ、ありがとうよ。んで……」
話を続けようとした時だった。突如大声が響き渡る。
「わぁー! 人だ! 人に会えました!」
警戒心を上げながら、嬉しそうな大声がした方向へと振り向けば、そこには十代後半くらいの金髪碧眼の青年がいた。
白い甲冑に金色のマントを羽織ったその青年は、子犬のように目を輝かせて景梧の方へと向かってくる。
「あの! 僕は
純汰の純粋無垢そうな表情と雰囲気にも、流されることなく景梧は警戒を含んだ声で尋ねる。
「俺は
「僕はガレス卿と呼ばれています! まぁ僕、円卓の騎士? 全然わからないんですけどね!」
嘘のなさそうな声色と仕草。それでも景梧が警戒を解くことはない。
「それで? この殺し合いの場所でなんで無警戒に声をかけて来た?
カマをかけたような景梧の物言いにも、純汰は素直に答える。
「あ、はい! それはですね……僕、殺し合わなくていい方法を探したいんです!」
突拍子もない純汰の発言に、景梧が思わず目を瞬かせる。
「お前、なに言ってんだ? 殺し合わねぇとここから出られねぇんだって説明されたんだろ?」
「それはされましたが! でも、良くないと思うんですよ! だから、なんとかできないかなって!」
「……なんとかって?」
「なにも考えていません!」
純汰の言葉に景梧は呆れて声も出ない。彼の主張には何一つとして合理性がないからだ。
「なるほどな? つまりてめぇは考えもなく他人を頼る能無しってわけか。ある意味肝が据わっているようで感心するぜ。こんな場所でただ"よくないから殺し合わない方法を探したい"? ご都合の良いこったな。頭お花畑か?」
どこまでもこき下ろす景梧に純汰が思わず何も言えずにいると、近くから轟音がした。