「うっ、うぅ……」
目が覚めたと同時に彼は違和感に気づいた。
「どこだ……ここは?」
豪華なシャンデリアが最初、次に大きなベッドに自分が寝ていること、そして、裸であること。あまりにも普段の自分の生活とかけ離れた室内に、困惑するしかなかった。
「俺……ラブホにでも入ったか? にしては相手がいねぇし、なにより俺にこんなお高そうなとこ入る金なんてねぇはずなんだがな……?」
周囲を見渡しても、他に人の気配はない。
「ラブホじゃねぇなら、ここはどこだ?」
上半身をゆっくりと起こす。そこではじめて、自分の首に見慣れないペンダントがぶら下がっていることに気が付いた。
「あ? なんだこの厨二のガキが好きそうなデザインのは? 悪趣味だな」
中央にガラス細工のようなものがはめ込まれた西洋の剣の形をしており、その周りに蔦のようなデザインが施された銀色のペンダントだった。
右手でペンダント部分を手に取り、首から外そうとした時だった。――そのペンダントから音声が響いてきた。
『お目覚めのようでなによりです。
そう呼ばれて、彼は目を瞬かせる。
「は? ケイ卿? 俺の名前は
景梧がそう告げるが、その女性の音声は静かに返答する。
『ケイ卿。あなたには円卓の騎士として、務めを果たして頂きます』
「だから俺は景梧だっつってんだろ……話聞いてんのか?」
景梧が静かに、我慢の限界に達した時だった。天井の隅に設置されているスピーカーから若い男性の声が聴こえて来た。
『目覚めし円卓の騎士達よ、今こそアーサー王の死に報いる時。さぁ新たな王を決めようか!』
「……あ? アーサー王? 円卓の騎士?」
戸惑う景梧にペンダントから再び音声が響く。
『あなたの事でもあります、ケイ卿。新たな王を決めるため、どうかワタクシをお使い下さい』
話が全く見えない景梧に対し、そのペンダントが名乗った。
『ワタクシはモノロエ。ケイ卿のサポートを任されました……
「は? 魔女? 待て! 話が全くみえねぇっつーの! 一から説明しろ!」
声を荒げる景梧にモノロエの口調は変わらない。静かに淡々と説明をしはじめた。
『これは……王を決めるための戦いでございます。ケイ卿、あなたは……ワタクシを使い、戦い、勝利しなければ――死にます』
「……は?」
『もっと正確にお伝えいたしましょう。ここは新たな王を決めるための場。そして、集いしは円卓の騎士達でございます。ケイ卿、あなたは円卓の騎士として他の集いし騎士達と戦い、勝利せねばなりません。そうしない限り……あなたは日常に戻れず死を迎えます』
断言され、景梧は黙り込む。だが――その口角は無意識に少しあがっていた。