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-南③- 百二十六話「魔剣使いヨークシャー」



 ■:魔法大国グラネイシャ・王都王城、南城壁サウスランパート



 ヨークシャー・ケミル視点。



 仮名【やしゃ】。

 その単語は聞いた事がありませんが、なんにせよ。

 この男が危険であるという結論には変わりませんでした。


 その漂わせる死臭、そして異様に人に近い外見、知能が高い様を見ていると。

 ただ物ではないと手に取るように分かるのです。



 男から発せられた閃光が消え、城壁上で静寂が戻った。

 わたくしは結論から言うと閃光を避ける事は出来た。だが。


 わたくしは屈みながら、もう一度下を見る。


「…………」


 右足の半分が抉れていた。


 まるで削り取るような威力。

 あの閃光、ただの魔法にしては規格外だ。

 魔法というのは魔力をかえし行う術式であり、そこから生み出される者は魔力物質であるが。

 今の閃光はまるで――飲み込み滅するような力を感じた。


 邪悪な気配が全身を支配してくる。

 わたくしの直感が、あの男をとにかく危険だと伝えている。

 悍ましいなにか、想像叶わない醜悪が。真相が。

 あの男の正体であると直感的に理解している。


 異形種【やしゃ】。

 その正体は、ただの“人間”ではない。

 もし人間であったとしても“普通”じゃない。


『ごめんなぁ、痛かったよな』

「……全然、この程度っ……何ともありませんとも」

『強がりか? 人間風情で』


 男は立ち上がろうとするわたくしを見ながら、見下すような態度で台詞を吐く。

 そんな彼に見られながら。

 わたくしは自らの右手を抉れた箇所にかざし、詠唱を行った。


「――世界のマナ、並びに君臨者に命じよう。我が傷を赦し癒し給え」


 淡くとも暖かい魔力が光の粒となり集まった。

 心臓の鼓動と世界のマナが同調し、脈動に連動した光を放ちながら。

 わたくしは詠唱を続けた。


「憚られよう。啼いても赦しを獲よう。心臓さえ生きていれば、全てはやり直しの聞く残響歌。――永久に」


 詠唱を終えると共に、わたくしの抉れた箇所は肉を取り戻していた。

 これこそが最高級の治癒魔法。そしてわたくしの特技は――。


『……驚いたな。人間風情と揶揄したが、それは撤回しよう。それは俺の時代にもなかった離れ技だ』

「治癒魔法の常時活性化エタニティーオーバーヒール、それこそがわたくしの真骨頂」


 過去、治癒魔法の常時活性化エタニティーオーバーヒールを可能にした治癒魔法士は存在しなかった。

 しかし彼、ヨークシャーがもちうる卓越したセンスと魔力量が、

 それら荒業を現実の物へとしていたのだ。

 負傷すればすぐ癒し、肉が削れようとも、腕が無くなろうとも、全て即座に癒すことが出来る。

 それこそが、彼を『序列』たらしめた真髄。【治癒】の名に相応しい御業であった。


 男――、『やしゃ』と名乗るその男はその様を見届けるや否や、少々不服そうに口を開いた。


『現代にも化け物はいるって事かい。今時の魔法は全て、あの時代の粗悪品であると思っていたが。あれほどの戦いがないこの世でも、やはり天才はいるのか』

わたくしを天才ですと? それまた、過分な評価を賜ったものですねぇ。ただの下ネタが好きな中年であるというのに」


 ヨークシャーはサーベルをもう一度握り直した。

 先ほど頭によぎったこのサーベルの真相、あの『やしゃ』が口走った言葉。

 その魔剣が一度でも気に入った男という言葉に、ヨークシャーは手持ちのサーベルの秘密を垣間見た感覚を覚えた。


 故にヨークシャーは。

 『やしゃ』に向けサーベルを構え、白銀の髪を揺らし。

 青い瞳に戦意を宿した。


「ふっ。どうやら、わたくしはあなたとは戦う必要があるようですね」


 その宣告に、意外な反応を示したのは『やしゃ』自身であった。

 首を傾げ、彼は言葉を作り出す。


『んー? 好戦的な奴なのか? 第一印象と違うが』


 第一印象。そんな、ヨークシャーにとってどうでもいい言葉を使われ。

 ヨークシャーは心の中で小さく笑った。


「第一印象など、第一印象でしか無かろう?」

『――はッ! それも言えているなぁ! いいだろう。貴様の相手をしてやろう』


 戦いの火蓋は切られた。

 同時に。

 視界外で、壁内にそびえたっていた王城の一角が、虚しく瓦解していき。


 剣の閃光が残像となり。

 ヨークシャー・ケミルは果敢に『やしゃ』へと距離を縮め走りだした。


『ハッ!』


 その様子を見ていた『やしゃ』は、楽しそうな笑みを言葉で表し。

 そして『やしゃ』も同じようにヨークシャー・ケミルへと走り出した。


 先行はまだどちらも距離が離れている一コマで起こる。

 『やしゃ』が振りかぶった右腕から――鬱蒼と伸びたのは真っ黒い影であった。

 影はヨークシャー目掛け飲み込むように地面を覆い尽くし、そして刹那の一瞬。

 その影からトゲの様な物体が勢いよく生成され、それらはヨークシャーを襲った。


「ッ――」


 ヨークシャーはその攻撃に反応した。

 右手に携えていた自らのサーベルを地面に無理やりねじ込み、その瞬間発生した衝撃波を利用しその場で跳躍した。

 幸い、黒いトゲを避ける事は叶ったが、どうやらワンテンポ遅かったようで。


「くッ」


 右足に黒い影が移っていた。

 ――経験した事のない激痛が右足に走り回り、それに気を取られたヨークシャーを決して『やしゃ』は見逃さなかった。


『ぅうううア!!』


 腹の底から感情に任せた汚い声を出すと共に、『やしゃ』は左足で地団駄を踏む。

 すると――覆い尽くされた影に白い波紋が広がり、生えていたトゲが消えたと思った瞬間。


 ――黒い影がほんの一瞬で剣へと変貌し、たちまちそれらは休憩もなしに空へと上昇した。


「――――」


 空にはもちろんヨークシャーがまだ跳躍していた。

 怒涛の攻撃、それも既にヨークシャーはダメージを負っている。

 ものの数秒で既に、勝敗が決しようとしていた。


 だが、この程度でやられるほど、彼は弱くはなかった。


「――【剣技】」


 使徒発火、後述詠唱、――散りなさい、破壊し尽せ。


 サーベルを縦に構え、ヨークシャーは白銀の髪を揺らす。

 ――途端に剣先に姿を現したのは、蛇に酷似した発行体であった。

 その蛇は、何故かいつもと違い少々長めに顕現し、丁度数メートル先に居た『やしゃ』に一瞥した。


『それは……!』


 鋭い眼光を『やしゃ』は認知し、そしてヨークシャーは彼の興奮に気が付いた。

 だがその前に、ヨークシャーはサーベルを向かってくる黒剣へ向けると。

 剣先から伸びた閃光が、剣戟に斬撃の様な光が、黒剣を全て破壊するほどの攻撃力を見せた。


 黒い影が破壊され粒となり、空中へ浮いている中を進むヨークシャー。

 その右足は――既に治癒していた。

 改めて実感する治癒の凄まじさに『やしゃ』は愉悦を隠しきれなかったが。

 それ以上に、彼の目に移った蛇の姿が。

 次の言葉を紡ぎ出した。


『久しいなぁ!! オラーナぁああ!!』


 増す、猛攻。


 『やしゃ』しか目になかったヨークシャーの視界内に飛び交っていた黒い破片が――。

 宙に飛び散っていた破壊されたての黒い影があかくうねり出し。

 そして全ての破片から人間の絶叫のような音が漏れ出すと共に、空間が僻んだ感覚を肌で感じ。


 流石のヨークシャーも場を危険と認識し、サーベルをもう一度立てた。

 が――。


 その様子を見逃すわけがない『やしゃ』は、ついに。



 城壁が割れ吹き飛ぶほどの力が加わり、一部が消し飛んだその空には、一人の人型異形種が男へ迫っていた。



「――ッ!?」

『逃がすと思うかア!』


 ヨークシャーに向かい飛び発ったそのスピードは、

 既に人間技では再現不可であり。

 上る黒閃が異形種を差し、ヨークシャーは男の介入を想定しきれなかった。


 そう『やしゃ』は剣技を使う瞬間が隙であると既に見切っていた。


 たった一度見せただけで対応する理解力、

 そして速攻実行できる行動力とパワー。

 やはりそれは人間技ではなく、彼の前世。


 いいや。

 異形種となる前が『生物』であったかすら怪しいレベルであった。


 当然戦慄した。

 ヨークシャーは男の圧倒的な力を間近に感じ、戦慄しない人間は確実にいなかった。

 治癒魔法の常時活性化エタニティーオーバーヒールは動いている。

 しかし周囲は既に影の欠片にて周囲は埋まっている。

 同時に、1秒もすればあの異形種がぶつかってくる現状。


 1秒。

 たった1秒で全てが決まる狭間で、思考することなんて不可能に近い。


「――――」


 故に誘発されたのは、ヨークシャー・ケミルの勘であった。


「――【魔法】」


 一つ、魔法とだけ呟き、続く詠唱を全て破棄した。

 並びに行った事象は、サーベルに頼った力任せに近い戦術。

 鋼を空に打ち付け、その場に走った衝撃波にて、更に上空へ脱出する。


 だが果たして、『やしゃ』にとって、それは想像できない可能性であったのか。

 否である。

 『やしゃ』の真の目的はそこであった。

 下には影の破片で生成した爆弾があり、それを避けようとサーベルを元々構えていた。

 だからそこへ自らが急接近し、――わざと上空にしか逃げられないような状況を作り出したのだ。


 『やしゃ』は自分が行える手札を総動員していた。

 男をあなどる危険性を重々承知していたからだ。

 だからこそ、確実に積ませる手法を模索し、見事ヨークシャーは術中へとハマった。


 刹那の一時、何もかもが動くには足りない時間に、全てが込められていた。

 人の命も、人の時間も、人の人生も、全てが含まれていた。

 可能性すらも、全てを潰し、そして奪うための作戦により。全てが奪われようとしていた。


 だが。


「――――」


 一つ、可能性を考慮することが出来ていなかった。


 それはヨークシャーは“サーベル”を使い上空へあがると踏んでいた。

 その刹那に起こっていた。


 ただ一つのイレギュラーであった。



 



 それは『やしゃ』の弱点でもあった。

 恐ろしく単純な、己を害する存在に対する理解の欠如。

 要は、“驕っている”という。

 ただ一つにして、何のあてにもならないような、弱点であった。


 そこを突いたのはヨークシャーであって、実質ヨークシャーではなかった。

 何故なら彼の思考がその結末を描いた訳ではない。

 ただ彼の反射神経が、勘が、経験が、その結末を描いたからであった。


 だとしても、万人がそれを成し得る力がある訳がない。

 ヨークシャーであったから叶った偉業であった。


 ――サーベルを『やしゃ』へ向け。

 ――ヨークシャーは【神技】ザ・プロトコルの劣化版である。

 ――【魔法】マジック・プロトコルを発動した。


 【魔法】マジック・プロトコルとは魔法を保護する物であり、決して魔法から身を守る物ではない。

 しかしその魔法の効果は“魔法自体を守る”事なのだが、魔法理論の一部を組み替えれば、それを“閉じ込める”事が可能だったのだ。


 もちろん、はなから詠唱破棄にて使用した時点で、少なくとも本来の魔法効果は望めない。

 だがヨークシャーは過去の経験を糧とし、一瞬でも耐えうるだけの、過剰ともいえる”魔力”を術式へ流し込んだ。

 故に、不完全な術式に流し込まれた魔力という現象は、魔力過剰と不完全の相乗効果にて、【条件であった”魔法”と定義できないもの】でも対象と認識するようになり、魔法として成立したのだ。

 成立するわけもない魔法術式の発動。そして魔法は――。

 その宙へ飛び散っていた影の欠片を【保護】した。


 そして影の欠片が空気を飲み込みながら爆裂した。

 だが過剰に与えられた【魔法】マジック・プロトコル 改により。

 それは封殺された。


 ――そして、サーベルはただ流れるように、『やしゃ』の胸部へと刺さった。


『グ、があ!』


 何の液体も吐き出てはいないが、吐血したかのような嗚咽を耳元で漏らす。

 それを触感で感じながらも、ヨークシャーはすぐさまサーベルを引き抜き。


「――【剣技】」


 使徒発火、後述詠唱、――貫きなさい、岩盤さえも。


 その攻撃を二激目へと繋げようと奮闘した。

 だがその攻撃は虚しくも『やしゃ』には入らず。



『――ィ!』



 ――サーベルを避け急接近した『やしゃ』の顔には、黒い膜の奥側に微かに”丸い瞳”があるように見えて。





 ヨークシャーはその急接近で、

               下半身が吹き飛んだ。



――――。



 セレナ・グウェーデン視点。




 戦場には一時の静寂があった。

 城壁を破壊しながら落下してくる一行を見届けたセレナら隊長は、彼らの増援へと駆け出していた。

 剣を構え、砂煙の中をかきわけ辿り着いた先にあった光景は。


 城壁の真下で広がっていた光景には、誰しもが絶句した。


『……あぁ?』

「あっ、あなたは」


 ヨークシャー・ケミルの欠損死体を右手にぶら下げた人型の異形種が一人、そこに立っていた。


「――――」


 あれは。

 先ほどヨークシャー隊長が城壁上へ持って行った異形種ではない?


 でもこの嫌な感覚は、間違いなく異形種ですわ。

 まさか……新手ですの?


『ふん。なるほどな』


 その異形種はわたくしらを見てから、何かを理解したようにうなずいて。


『ヨークシャー・ケミルさんよ、お前の名前はしかと魔剣に刻まれたさ。でもよぉ、こんなちっぽけで可愛い人間を守るために戦うって、もったいない野郎だぜ。まぁ、同情はするがなぁ』


 魔剣、その言葉を把握すると共に、異形種の左手に捕まれていたサーベルを見つけた。


「……」


 ヨークシャー隊長が負けた……?

 あの凄まじいお方が、まさか負けるとは想像も出来ない……。

 ですがそうなると。


 やはり、戦わなければなりません。


「――【装備開示】円舞曲ワルツ


 わたくしは剣を開示し、均一な装飾が施された剣を異形種へ向けた。

 エヴァンも同じく自身の武器を開示し、眼前の異形種へと剣を向ける。


 あの異形種は他の物と明らかに違う。

 浮いているどころではない。明確に別物な感覚がします。

 ――異形種。その存在が未知数であるが故、どんな敵が来てもいいような心構えでいましたが。

 今となってはこのわたくしの長年の矜持すらも傷つけられる始末。


 わたくしながら、嫌な感覚ですわ。

 でも、それも挽回するならこのタイミング。

 例え殺されようとも、例えわたくしの全てを破壊されようとも、この異形種にダメージさえ与えれば。

 誰かに繋げられれば。


「――――」


 緊張が走っていた。

 異形種の格が恐ろしいほど上であるのは、ヨークシャー隊長の死で明白。

 だからわたくしは、先ほどのように、足手まといにだけは――。


『魔剣カルベージュの能力は三つ。一つ、適合者の前に現れる。二つ、切った相手に所持者の名前を刻み込む。三つ、魔物どころか、存在が魔王に近ければ近いほどダメージを与えられる。く、ふふ。とんだ特攻武器じゃねーか』


 意味不明な言葉を苦笑気味に話す異形種は、何がおかしいのか笑いにふけた。

 そして異形種はサーベルを睨みながら。


『なあヨークシャーよう。貴様はどれだけこの剣の力を理解していたかは知らねえが』


 言葉を途中でやめ、――異形種はこちらを睥睨し、サーベルを振りかぶった。


『ア?』


 刹那、サーベルが振りかぶり切る前に停止し、異形種は何かを察知した。

 そして――放たれた斬撃が宙を飲み込み、破裂したような轟音と共に、異形種とセレナの前に人影が現れた。


「だ、誰ですの?」

『…………ほう』


 再度衝撃によって立ち込め始めた砂煙に邪魔をされ、その存在が何者かを見破れないセレナ。

 そして何かを感じ取り、攻撃をやめた異形種。

 その二人の視線は、異変があった場所へと向けられた。


「――――」


 数秒その人影を見つめ、やっとその姿が何者かを理解しするとともに。

 その人物が喋り出した。








「おいおい、なんつうデカさの魔物なんだよ。どうしよ、勝てる気しねぇ……」

「弱気になってどうするんですか。ご主人様」







 そこに現れたのは、二人であった。

 そしてその存在こそが、この場にいた全員にとって、とても驚く真実であったと共に。

 狭間に現れた二人が、ニヤリと笑みを浮かべ、そして喋り出した。


 ―― 1人、白いシャツに黒髪の男性が、

    格好に不釣り合いな剣を右手に構えていて。


 ―― 1人、白い髪の毛を後ろでまとめ、

    少し背が伸びた背丈をしている小さな女の子が、杖を構えていた。


『……はは、そうか。お前らが到着したって事は、間に合ったって訳だよなぁ?』


 どうやら異形種は、わたくしの目の前に現れた人たちを知っている様でした。

 そして彼ら二人は。

 異形種の前に立っても、恐れすら見せず、装飾が豪華な剣をその怪物へ向けて。


「久しぶりに帰って来たっていうのに、こんなのも荒れ果てているのは心苦しいですね」

「まあそうだな。でもいいじゃねえか」

「……そうですね」

「どんな形になろうと、ここはここだ。変わらねえよ」


 男は言いながら崩れかけた城壁の先を見た。

 先の異形種の落下に伴い、異形種は城壁を破壊しながらくだって来ていたのだ。

 その行為はまるで、その右手に掴み上げている男にトドメを差すような行動であったが。


 それがかえって、現着した男に――火をつけた。



「随分待たせたな、魔法大国グラネイシャ。待っていろよ、アルフレッド」


 【人魔騎士団】

 幹部――ケニー・ジャック。



「ええ、やってやりましょう」


 【人魔騎士団】

 構成員――アーロン・ジャック。



 2人の面持ちは、とてもたくましい物へとなっていた。


 そう。やっと。

 戦いは、終わりへと向かい始めたのだった。








 人魔騎士団、青の騎士団、城壁に到着。


 正面城壁フロントランパート ――トニー・レイモン

          カリス・グレンジャー。


 東城壁イーストランパート  ――アリィ・ローレット

          ソーニャ・ローレット

          イアン・ベイカー。


 南城壁サウスランパート   ――ケニー・ジャック

           アーロン・ジャック

           ニーナ・バレット。


 西城壁ウェストランパート  ――ナターシャ・ドイド

          サリー・ドード。


 それぞれ時差で現着。


 そして。


 王都・近衛騎士団、第三部隊 隊長 ノーラン・サンライダー 一行。

 正面城壁フロントランパートへ進行中。


 作戦予定時刻まで残り1時間。


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