堀さんの低く押し殺した声が、僕の頭の中で、いつまでも響いていた。
あの子は、殺されたのか。そんな、くだらない奴等に。
自分達の罪を隠すという、身勝手な理由で。
堀さんは推測だと言うが、彼の話は欠けていたピースにしっかりと噛み合った。カチリと、脳内で音がするほどに。
彼女の調査ノートは、開かずの間についての話が書かれた時点で終わっている。実際に調べに行って、そこで男達に見つかったのだとしたら……姉が自殺なんてするはずが無いと主張していた、弟の言葉が蘇る。
僕の内に湧き上がるこの感情が怒りなのか、それとも悲しみなのか、それさえも良く分からない。怒りをぶつけようにも、ぶつける相手は既にこの世に居ないのだ。もう十五年も前に、死んでいる。
せめて、当時知っていたのならば。
――知っていたら、僕は彼等を殺したいと思っただろうか?
いや、それ以前にもっと彼女の傍に、この学校に、居られたならば。
――そんなのは無理な話だと、自分でも分かっているくせに。
いくつもの言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡っては、沈んでいく。
僕は、あまりにも無力だ。十五年も経ってから、今更、君の苦しみを知るだなんて。ごめん。不甲斐ない僕でごめん。気付いた時には、僕の両目からはボロボロと涙が零れていた。
「神尾さん、あんた……」
堀さんが驚いたように何かを言いかけて、それっきり口を噤む。詮索せずに居てくれる彼の優しさが、今はただ有難かった。