「おーい、二人とも居るかぁ?」
事務室の扉を叩きながら、堀さんが声をかける。夜の廊下は、相変わらず雨音が響いている。この廃校の暗さにも、慣れてしまった気がするから不思議だ。
「何?」
少しして扉が開き、舞子さんが顔を覗かせた。事務室の奥には、菜摘さんも居た。椅子に座る後ろ頭が廊下から見える。
「あの、私も職員室でこの人達と一緒に居ようと思いまして……」
「ふぅん、そう」
成美さんの言葉に、舞子さんが興味なさげに頷いた。どうやら舞子さんと成美さんは、それほど仲は良くないようだ。いや、そもそも年も違うし、元々接点の無い赤の他人なのだから、素っ気ない態度になるのは自然か。
「あんた達はどうするんだ。一緒に職員室に来るか?」
「んー、どうする菜摘」
舞子さんが振り返り、菜摘さんに意見を求める。やがてこちらに向き直り、首を横に振った。
「別にいいって。私達は保健室で寝るわ。あそこなら、ベッドもあるし」
「ん、そうか」
舞子さんの言葉に堀さんは頷き、軽く手を振って踵を返した。成美さんも頭を下げ、それに続く。二人を追いかけるように、池中さんがのしのしと歩き出す。
「お二人も、気をつけてくださいね」
「ええ、分かっているわ」
僕は一応そう声をかけてから、皆の後を追った。