調査ノートに目を通し終えた後、堀さんも池中さんも無言になってしまった。仕方が無いので、僕はメモ帳の白いページを開き、ペンを手に二人に声をかける。
「少し、纏めてみましょう」
「ああ、頼む」
堀さんが力強く答え、池中さんは青ざめたままでこくりと頷く。懐中電灯の位置を変えて手元を照らし出すと、僕はメモ帳にペンを走らせた。
これまでに発生した
・安藤瑞穂の
・荒木進の
・上田宏治の服毒死?(学食)
・谷本伸治の
ここまで書いたところで、堀さんがもう一つ付け足す。
「もう一個、生徒の行方不明事件、な」
・謎の生徒の
書き足されて、僕は思わず苦い表情になってしまった。不確定な事象まで同列に並べられるのは個人的に納得がいかないが、彼等の中では既に七不思議の恐怖として染みついているのだろう。
「残る二つの謎は、こうなります」
気を取り直して、再びペンを握る。
いまだ事件が発生していない不思議
・女生徒への
・開かずの
「刃物による裂傷は、流石に喰らいたか無ぇなぁ」
堀さんの言葉に、僕も池中さんも頷く。池中さんの顔は真っ青だ。
「もう一つの開かずの間ですが……死因に繋がるような詳しい内容が分かっていないのが、悩ましいところですね」
「部屋に閉じ込められるとか?」
池中さんが震える声で言った。
「ろくなもんじゃねぇな」
「そうですね。やっぱり、しばらくは一人にならない方が良いでしょう」
開かずの間で、一体何を見たのか。それが分からないと、そもそもの対処法を考えようが無い。
「これ以上の事件なんて、そもそも起きてほしくは無いのだけど」
僕の言葉に、二人も無言で頷く。
「そういえば、さ」
僕が書いたメモに視線を落としたまま、堀さんが小さく呟く。
「さっき、こいつがあんな悲鳴を上げたのに、校長の奴、姿を見せなかったよな」
「ああ、そう言えば」
脅迫めいた文字を発見して、三谷先生の様子を確認するのを忘れていた。
「もう寝ているんじゃない? それか、雨や雷の音で聞こえなかったとか」
「てめぇは本当、暢気だな」
池中さんの言葉に、堀さんが呆れたように声を上げた。池中さんとて、暢気な訳では無い。あえて考えないようにしたいのだろう。その脳天気な言葉は、怖さからの逃避のようにも思う。
「あの校長なら、当時のことに俺以上に詳しいはずなんだがなぁ」
「まぁ、寝ているかもしれないんなら……女性陣の部屋にも、この時間から話を聞きに行くのは気が引けるしね」
「ってなると」
自然と、僕と堀さんの視線が池中さんに向く。
「ええ、僕? 僕から話を聞いても、何にもならないよぉ」
「そんなの、聞いてみなきゃ分からねぇだろ」
「それはそうかもしれないけどぉ」
堀さんは何故か乗り気なようだ。退屈なのか、それとも黙っているのが嫌なのか。
レコーダーを準備して、今度は僕と堀さんとで池中さんを囲んでの取材が始まった。