目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
アウルム六才

 男衆には朝から仕込んでおいたカブや人参などの根菜と内臓の麦の粥。芋を煮潰したものを卵の白身で膨らませて牛脂で揚げ固めたもの。それと牛の肉を捌いたものを男衆にその場で焼いてもらっている。

 もう夜寒くもない陽気なので、エールと氷を他に差し入れてある。

 翌朝は青豆と押麦の粥に溶き卵を流したものを足して出す予定だ。

 朝の分に足りなければパンやベーコンチーズを足せばいい。

 来客に風呂と厠の説明をするとたいてい新顔が驚き、それを眺めるのが密かな喜びでもあった。


 風呂に入って旅の汗を流した男衆の食べっぷりは人数といい勢いといい騒がしさといい、アウルムには好ましく感じられるものだった。

 喜んでくれるというのはそれだけで仕事の成果になる。

 日頃から館にいる間は欠かさない手入れ掃除をしてある客間の様子を確かめて、風呂と酒と食事で色艶の良くなった客と主が食事をしているのを覗いて風呂に入って汗を流し、台所で食事をする。

 見栄えの良い方も量が多い方もマジンが次々捌いてゆくのに合わせて準備と片づけを手伝っていたので、仕込みの段から味を確かめて自信もあったが、チーズや干し肉を足したりニンニクやネギを焦がしたもので味を足したりして密かな贅沢をする。

 ひとりのときに来客だとちょっと忙しすぎて、暇になると寂しい。冬の間はよかったなぁ、とアウルムは思った。

 姉や妹達はどうしているだろうとアウルムはいつもよりちょっと早いがチーズとお茶を持って電話室に向かった。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?