それがどういうモノであるのか。
ということを、彼が理解していたとは思えない。
彼はそのときはるか彼方、この宇宙の果てと言っていい位置から、反対側にあるここにたどり着いたところだったからだ。
実際に彼が出来たことはいくつかの空間をつなげていって、自分の望むサイの目が出るまで振るそういうサイコロ賭博のようなものだったけれど、そもそも望む目が全てのサイコロに含まれているか、彼は知らなかったしその方法もなかった。
せいぜいが互いに必要だと思って「美味しそうだ」と思っていたことくらいだろうか。
そう。
彼らは互いに捕食しあい接触した。
そういう風にいうべきだろう。
よく焼けた果物のようなソレは元来そういう風に使うためのものではなかったが、初期においては細胞小器官としての研究もおこなわれていたし、実際にそういう風にデザインされていたこともある。
人体細胞と接触をした時点でホロニック構造の方向子が人体と融合を始めていた。
そういう適合例は少なくないし、上手くゆく例も多い。
もちろん失敗する例も多い。
今回も不正規な手段と手順によっておこなわれたホロニック接合によって、異常な処理が発生してしまった。
自覚ある場合、一般に魔法使いと呼ばれる。
マキシマジンという自意識はあったが、既にそれがなにを意味しているのか、そもそも意味があるのか、接合領域の不足が出力制限を起こしている自覚はあった。
だが、ともかく家に帰りたかった。
どこだかわからないが。
彼は、家に帰りたかった。