1.
アラディア魔法学校からそう遠くない場所にある町は、歴史的な建築と最新の建築技術などによって
しかし、少し外れてしまえば
たとえば、北部のほうには倒産した工業地帯がある。
この近年に周辺地域との
アラディア魔法学校が行政的に置かれている地域の中心部にある町が栄えているほうだが、それ以外は
アラディア魔法学校の周囲にある山間部には、人がいなくなって随分になる
というわけで。
ハウス・スチュワードとの交戦後、この最寄り駅を待ち合わせ場所に決めてからすぐに解散したのだった。
(『人が住まなくなると家は駄目になる』って聞いたことがあるなあ……)
鳩原は祖母の言葉を思い出しながら、ダンウィッチに案内される道を歩いた。
ダンウィッチに案内されながら鳩原がやってきたのは廃村だった。
村に続く道路は
木造の建造物と思われるものがあったが、そのほとんどは
全体的に灰色だ――と思った。
原型が残っている建物は切り石などで作られた建物だ。それが実際に灰色っぽい色合いをしていたが、そういう視覚的な意味を感じたのではなく、村全体から
時間が止まっているという感じだ。
(この村には、どれくらいの時間……人が住んでいないのだろうか)
廃屋を見て『これはいつ頃の建物だ』なんてわかるほどに
自転車で移動できる道ではなかったので、駅前に置いてきて正解だった。
山道や獣道ではないにしても、
(鍛えているのかな? あるいは……)
あるいは?
そこから先の言葉がちゃんと出てこなかった。
『あるいは』――いったい何だと思ったんだろうか。
「こちらです」
なんて考えごとをしているうちに案内されたのは廃墟だった。
それは切り石で作られた建物だった。塀に囲われていて、ほかの家よりも大きい。
数段の石段を登り、門を抜けた。
その家の敷地内には、それほど背の高くない木が植えられていたが、それは既に枯れていた。
扉のない玄関から中に
薄暗くて空気は
「ここは?」
「私の拠点です」
だろうね。予想していた返答だった。
壁に黒いローブがかけられていて、テーブルの上に真っ黒な帽子が置かれていたので、わかり切っていたことだ。
「片づけたので寝泊まりはぜんぜん余裕ですよ」
ダンウィッチはそう言った。
とてもそうは思えない、と鳩原は思った。
隙間から風は入ってきているし、床だって濡れているからきっと雨漏りもしている。風は入ってきているというのに
窓には何もなくて剥き出しになっている。これじゃ外とそんなに変わらない。
「あ、外と変わらないって思ったでしょう?」
「……思ったよ」
「それは外をナメてますね。外で寝るよりはぜんぜんマシです」
それはそうかもしれないが……。
扉はないし、そこらへんにあるテーブルやベッドはほとんど腐っている。鳩原としてはこんな環境で寝泊まりするのは信じがたい。
そりゃあ、そこらへんの木の幹で寝泊まりするのに比べればマシかもしれないが……。
「
なんてふうにはにかんだ。
さすがに盛っているんじゃないかとも思うが――そうだった。そういう話をするために来たんだった。
(……『私のいた世界』)
ダンウィッチの言葉を頭の中で繰り返した。
その意味を鳩原なりに考えた上で、
「ダンウィッチ。きみの言う『私のいた世界』っていうのはどういう意味なんだ?」
と、訊ねた。
ダンウィッチはベッドに腰を下ろした。
傍らにあった帽子をひょいっと手に取って、深々と被った。
そして前髪と帽子の
「私はこの世界の人間ではありません」
ダンウィッチは言った。
「私は『