3.
その日の授業を終えた放課後、学校に外出届を提出した。
門限までに戻ってくることを条件に許可が下りたので、
ゴシック調の石造りの建物が密集している校舎、それらを取り囲むようにある石造りの塀。周囲には背の高い木々が生い茂る森がある。
アラディア魔法学校は、そういう
金属でできた
鳩原は友達から自転車を借りてきた。
緩やかな傾斜になっている道を下って行きながら、
(戻るときは大変なんだろうなあ)
と思った。
これは
それこそ、びゅんっ! と、ひとっ飛び。
箒に乗れたら……。
(魔法使いのための学校……か)
僕なんて場違いもいいところだ、と思った。
建物のない木々を掻き分けるようにして作られた舗装されただけの道を進むと
この無人駅がアラディア魔法学校の最寄り駅である。
学校に提出した届け出には『町まで買い物に』と書いたが、平日の学校終わりに駅から電車に乗って町に出ると到着しても十数分後にある帰りの電車に乗らないといけない。とてもじゃないが門限の六時には間に合わない。
だから、平日の学校終わりに出かける奴なんてまずいない。
そりゃあ事務員さんにも届出を出したときに
駅の
そこにはひとりの少女が座っていた。
昨日の夜とは格好が違う――悪魔の角みたいな真っ黒な帽子は被っていないし、膝丈まである不気味なローブも着ていない。
昨晩では薄暗くて顔まではっきりとは見えなかったが、整った顔立ちをしている。
その中でもやはり気になるのは、その痩せ過ぎな
髪なんて適当な刃物で切り揃えただけで痛んでいるし、爪なんて割れていて、指先はぼろぼろになっている。
「こんにちは、ダンウィッチ」
「
何やらご機嫌が
「……ダンウィッチ、もしかして、かなり待った?」
「いいえ、なんてことありません。ちっとも待っていません。私は待つことが大好きですので。太陽があの位置にあるくらいからいました」
指差したほうは東のほうだった。
朝じゃねえか。
しまった……。
『また明日、ちゃんと話をしよう。駅で待ち合わせだ』と言ったのが昨晩のことである。確かにお昼休憩の頃に『そういえば時間を決めなかったな』と思って不安には思っていたが……。
これはやってしまった、という感じだ。
時間の指定をしていなかったほうに落ち度がある。
朝から待たされて、夕方にやってきたら……そりゃあ機嫌も悪くなる。
まあ、仕方ない……。
予定していなかったわけではないが、町に出て、何かごちそうしよう。それで機嫌が直るかわからないけど、何もしないよりはいいはずだ……。
仕送りがあるとはいえ、あまり手持ちがあるわけではないけど……。
門限を破ることになるのは……それは、まあ、怒られたら謝ろう。
それよりも先にダンウィッチに謝らないと。
「ダンウィッチ、すまなかった」
「いいですよ」
あっさりとそう言った。
「では、行きましょう」
ダンウィッチはすっと立ち上がった。
「もう怒っていませんよ。ちゃんとここに来ていただけたのですから、それで私は十分です」
そう言って、ダンウィッチは駅の待合室から出て行った。
「どこに行くんだ?」
「場所を変えます」
人差し指を
「