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第28話 八の試練/敵意①

 慌ただしい日々が進み、AWO内は今日も盛況だ。

 それは空の上も同じで、オクト君のクランが主催のイベントも大好評で幕を閉じた。

 栄えある一位はやはりフィールのところのクランだった。何せシェリル経由で地下ルートの素材まで提出していたからね。アレじゃ後続との差が著しいよ。

 それでも別枠の私が大差をつけていたというので未発見素材と言うのはそれだけ大きな功績を残せるのだと知ったプレイヤーも多いだろう。


「それでお父さんはまだ次の試練に行かないの?」

「いや、私は行く気満々なんだけどね?」


 娘のパープルからの投げかけに私は困り切っていた。

 何せ真・シークレットクエストをこなすには人数が必要だ。

 今までの難易度から察するにソロで攻略できる難易度ではないだろう。

 しかしあろう事かここでジキンさんやスズキさん、探偵さんが コンビ組んで霊装集めに行ってしまったんですよね。


「お待たせしました、マスター」


 そこで満を辞して登場したのがジキンさん。

 ちょっとだけ成長したように太々しい笑顔で私を見てきます。


「ほらー、やっぱり呆れてる顔ですよ、アレ」

「|ー〻ー)仕方ないですよ。あからさまにハブってましたし拗ねてもおかしくないです」


 探偵さんが私に指をさし、スズキさんが宥めるような口調で濁す。全く失礼な人たちだ。


「それで、成果はどうだったんです?」

「そりゃ勿論バッチリ取ってきましたよ、新しい武器を」


 得意満面でジキンさんは頷いた。

 早速見せてもらうと、全身が黄金色に輝いていた。

 これって確か……金狼氏の?


「霊装発動〝黄金の衝撃パーフェクトストライク〟」


 ジキンさんの身体中から黄金の光が立ち昇る。

 これらは効果時間中与えるダメージが三倍、受けるダメージが二倍になる背水の陣の霊装らしい。余計打たれ弱くなってどうするんですか、と言ったらミラージュ★でなんとかなると笑っていました。


 続いて探偵さんがお披露目してくれる。

 ちょっと少年探偵アキカゼを意識したポージングで名称を叫んだ。


『霊装発動。顕現せよ、〝第四のスクエアスロー〟」


 探偵さんは緑色のオーラを纏いながら概念武器を構えていた。

 続け様に発射した光線は同時に四つ。

 それが回転しながら対象に選んだ岩肌を削るようにしながら前進し、そして武器の足元にゴロゴロとクズ石を量産した。


「なんです、その霊装?」

「これ? 単純に時間内に四回攻撃できるって代物なんだけど、通常攻撃しか無理でさ、ずっとゴミ扱いされてたのを僕が活用してみた」

「はぁ……」

「ちなみに概念武器でも問題なく発動したね。今のは採掘をのせて放ったんだ。うまく扱えば四つバラバラのスキルを同時に発動できると思う。どう、ロマンがあるだろう?」

「出来なかったら笑い者じゃないですか」

「笑わせておけば良いのさ。僕はそれを扱って見せてさらにドヤ顔をする」


 やっぱりこの人自由だなぁ。

 ほら、ジキンさんが飽きれてますよ?


 続いてスズキさんはソワソワしながら出番を待っていた。

 いつでもやって良いですよと誘ったら、喜んで見せてくれた。


「霊装発動、〝空間遊泳アクアリウム〟」


 水色のオーラを纏ったスズキさんは、まるで水中で泳ぐように空を泳いでいる。それ、日常で使えたんじゃないのと思うが、たった三十分という制限があるのと、いざというときに使えなかったら意味がないという事で今まで取らなかったそうだ。

今回手に入れたのはチャージングと言う概念装備専用のスキル更新に伴って。

 私がワープするなら泳いでついていくと言う彼女なりの健気さを感じた。


 ちなみにうちの妻達は普段使わないだけで霊装自体は持ってると言う。

 せっかくなので使って見せてよと言ったら嫌がられてた。

 酷いんだ。


 というわけでメンバーが揃ったので八の試練に赴く。

 あといくつあるのか知らないけど、そろそろ終わらせて地下に行きたい反面、まだ確信に至れてない心細さが浮かび上がる。


 イベントは終わっても七の試練需要は未だ陰りを見せない。

 どうせすぐに終わらないんだしと思って今回はクエストを除外し、どんな場所か探索を進めることにした。

 そこにあったのは雲の遺跡。

 積乱雲のように膨れ上がった峰にポッカリと穴が空いてる場所がある。

 そこから入れというのか?


 用心しながら妻とランダさんに移送をスキル複合で合わせて使い降り立つ。

 だが穴に入る寸前にエネミー反応。

 ガラスを砕くようなエフェクトと共にその遺跡が姿を現した。


「この遺跡、まさか意識を持っている?」

「その様ですね。しかもエネミー扱い。僕たちはエネミーの腹の中で探索を強いられるらしい」


 どこか呆れた様な口調で肩を竦める探偵さん。

 他のメンバーも同じ様な感想を抱いていた。

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