ジキンさんに言われたからではありませんが、私達は再び四の試練へと赴いた。
殆どタネが割れてしまってるので流れ作業で。
問題の氷塊の対処法は滑り台に転がってくるという状態からスタートするのだからと機転を利かせた探偵さんが水操作で途中からジャンプ台を作り、土台に水操作で作った氷をガン積みして強度を保たせて何とか乗り越えた。
でもやっぱりというか何というか。ここに来る時点である程度試練を乗り越えてる必要はあるね。
大体はスズキさんがノリでバシャーと水操作を行なっているけど、それが一番の功績だろう。彼女は物怖じせず、言われたら即座に実行出来る準備が出来上がっているのだ。
むしろ実行しろという前から動き出すので失敗した時が怖いが、まぁまだ失敗してないので平気だ。
今なんか自分たちの真横を氷でできた丸のこがすごい速度で通過していったのに、イエーイって言いながら探偵さんとハイタッチしてたし。
そしてついに私達は最後の関門を乗り越えて、鯨くんの顎先が現れる。スクリーンショットを覗くだけでニマニマしてしまう。
ちょうどログに中継ポイントのマーク。
けれど私達が欲しい情報はそこにある。
「なんて書かれていました?」
「はい。~扉を開き導く。かの古代都市アトラ~までですね」
「ふむ、繋げると[我は鍵にして門。天空のお膝元、かの大地エルメロイの中央に座する、暗黒球。全ての鍵を手にし、封印されし扉を開き導く。かの古代都市アトラ__]ですか。ここら辺でタイトル回収するんだ」
「やっぱりこれってアトランティス大陸のことですよね、ね!?」
「まず間違いないでしょう。しかし試練の数は9つで、アトランティス大陸に行くには全ての試練を乗り越える必要があるわけだ」
チラリ、とジキンさんを見る。
「なんですか?」
「いや、ジキンさんも一と二の試練受けたほうがいいんじゃないかと思って。今だったらミラージュかけっこで余裕で取れそうだと思いますよ」
「|◉〻◉)あ、それ僕思いました」
確かに今一の試練を受けたらすぐに合格できそうな感じはするな。二の試練に関しては泳ぎが得意かどうかで決まるけど。
「やってみたらどうです?」
「僕は泳ぎが苦手で……」
そう言いながらスズキさんを見やって、すぐに探偵さんに目を向けた。
「|◉〻◉)ちなみにですが、僕は肺呼吸が苦手です。でも出来ました。犬のじぃじも頑張ってみて!」
えっへんと胸を張るスズキさん。
こう言われてしまったらジキンさんも逃げ場所を失いますね。
「どうしてみんな、僕なんかに期待するかなぁ」
「どうせだったらみんなで一緒にクリアしたいじゃないですか。私達なりの優しさですよ」
「無理強いすることのどこに優しさがあるんです?」
「無理強いでもしないと一人でいじけてるじゃないですか。知ってますよ。いつも羨ましそうに二人を見ていたのを。自分も活躍したいぞって顔に書いてあります。もっと素直になってみたらどうですか?」
「なんだか乗せられてる気がしないでもないけど。まぁやるだけやってみますよ」
ジキンさんがやる気になってくれたところで帰路に着く……まって。ここってこれ以上行けないよね?
ついさっき乗り越えた試練は入ってきた入り口に氷塊を当て込むことで乗り越えた。うん、乗り越えたのはいいけど帰り道はなかった。
仕方ないのでその場でログアウトし、再度ログイン。
ジキンさんがしこたま買ってくれたおかげでオクト君がちょうど地上に買い出しに来ていたので飛空挺に乗せてもらい、再び四の試練へ。したルートで再び試練に合格すると、ようやく名前が載るようになった。
ちなみに上も下も赤の禁忌に帰る道がない。
なんという嫌がらせか。師父氏の顔がなんとも言えないものになっていた理由がわかったよ。
私達はそのまま下に降りてトップクランの皆さんと合流、近況を語り合った。
向こうは向こうで影の巨人をやっつけたようだ。素晴らしいね。しかしそのあと複数体の巨人に襲われたので、巨人がいる方角への探索は打ち切ったらしい。
倒せたとは言っても、倒しにきてはないので相手取るのは手間だと言うことだ。
ちょっと会話しただけだけど、半分くらい何を言ってるかわからない。探偵さんは頷いてたけど、年寄りにゲーム特有の略語や専門用語は使わないで欲しい。特に英単語の頭文字だけを取った英語の羅列を並べられてもちんぷんかんぷんだ。
探偵さんに説明されたけど、私には理解できなかった。同じゲームをやってるはずなのに、おかしいね。
ジキンさんは何やら偉そうに頷いてましたけど、きっとこの人のことだから分かった振りでしょうね。まさかジキンさんの癖して私より理解があったらショックだもの。
結局この影のエネミーばかりのフィールドからも出れず、ちょうどお昼になりそうだったので私達は引き上げることにした。
五の試練はどんなものだろうか? 今からドキドキである。