目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第53話 四の試練/真偽③

 探偵さんと合流してから早速称号だけ貰いに行くと、そこで同じ試練に参加する挑戦者と遭遇した。


「おや師父氏。これからチャレンジですか?」

「はい。アキカゼさんに抜かされてばかりなのでここいらで追い越していこうかと弟子達と共に」

「押忍、我ら同門はアキカゼさんに多大なる恩を受けました。なので試練突破こそがその恩義に報いる手段だと師から聞かされています」

「ふむ、いいね。そうこなくちゃ。四の試練は水と氷の二面性を持つ試練だ。そして見える全てが本当ではない。ちなみにここまでは古代語で入場前に知らされるテキストだ。クリアした目線から言えば嘘は言ってないなと思うよ?」

「同時にそれだけでもないと、聞こえますが?」

「さてどうでしょうか。それをどう捉え、どう答えを出すかは個人差によります。乱気流の皆さんがどんな答えを導くか、楽しみに待っていますね」

「その期待に応えてみせよう」


 師父氏は片手を上げて門下生と共に乗り込んでいき、そのまま落下した。

 うん、知ってた。


「いい感じの出発だったのに、初っ端でくじけませんかね?」


 探偵さんが落ちていく彼らを見送りながらそんな言葉を溢した。


「逆にああいう人たちは常日頃から逆境に身をおいてきた人たちだから、あれぐらいでくじけることはないと思うけどなぁ。それに一度の失敗でくじけるような人を私が誘うとでも?」

「いいや。なんだかんだ君の人を見る目は確かだからね」


 そうこうしてる間に戻って来ました。

 落下中にログアウトして再度ログインして登って来たんだろうね。手際がいい。でもどうやって四の試練まで来たんだろうと思いきや、うちの飛空挺がちょうどオクトくんと合流して出航するところに便乗したらしいです。一応協力関係という事で載せて貰ったようですね。

 そして何食わぬ顔で挨拶して来ました。

 この人相当面の皮厚いですよ。


「おはよう御座いますアキカゼさん。本日はいいお日和で」

「そうですね」


 やっぱり。この人さっきの事を記憶から消しましたよ。

 仕方ないので同じ会話を繰り返して見送りました。

 今度は危なげなく水操作を使っていきましたね。

 飛空挺が地上に無い事でこれ以上の失敗はできないと覚悟が完了してるみたいです。

 それにしてもすごいのが師父氏だけでなく、門下生達も使える事でしょうか。

 あの人の野望は誰にでも扱える統一流派だと語っていましたから。


「さて、僕たちも行きますか?」


 探偵さんが血気盛んにこちらに目を向ける。

 ちなみに私とジキンさんはあまり乗り気ではない。

 ただでさえミラージュ★を回数分使い切っているのもあり、非常に気が重いのである。

 フェイク★に至っては使うまもなく圧殺されたと言って過言ではない。

 シャドウ型の数が異様に多く、普段あの数をお目にかかることはない。過去に一度対面したことがあるとすれば、ファストリアの大型レイドボス討伐戦以来か。


 だから怖いんだよなぁ。

 そこがあのイベントと繋がってそうで。


 ◇



「これがフェイクか★。なるほど、面白いな」

「|◉〻◉)ノわーい、僕にもフェイク★生えましたー」


 わざと落ちて天井の氷に沿ってゴールへたどり着く。

 相変わらず鯨の体はこちら側からでは観測できない。

 やっぱり上のルートもクリアする必要があるのか。


「さて、検証のためにも乗り込みますよ」

「|◉〻◉)のりこめー」


 ハイなテンションではしゃぐ探偵さんとスズキさん。

 馬が合うと言うか、結構似てるところがあるんですよね、あの二人。


 ーーー


 検証と銘打っているように、今回はそれぞれが役割を与えられて行動している。私はスクリーンショットと古代語の読み取り。

 スズキさんは気配察知。そして探偵さんは過去情報とのすり合わせだ。本人が直接掲示板を見なくとも、優秀な部活(カネミツ氏)が欲しい情報を纏めてくれるのでそれと見合わせているらしい。楽してるよね、君も。


「これ、僕ここに居る意味ありますか?」


 ジキンさんが寂しげにクゥンと鳴いた。

 そうは言いますけど、連れてかないと貴方拗ねるじゃないですか。

 一応この中で一番攻撃力高いんだから居てくださいよ。

 どうせ暇でしょ?

 目でそう訴えると仕方ないですねと呆れたように肩をすくめる。全く素直じゃないんだから。


「シャドウ型は物理は効かないのでジキンさんにはこれを渡しておきますね」


 そう言って探偵さんは未来的なおもちゃのハンドガンを手渡している。楕円形に取っ手がついており、銃身は先端が丸くなっている。


「なんですか、その奇抜なデザインのアイテムは」

「探偵七つ道具の一つ。自動スクロール読み取り機だ。銃の上が丁度スクロールの台座になっていて、セットして引き金を引くとスクロールが開く。銃口からスクロールの効果が絞って射出される優れものさ」

「なにそれ私も欲しい!」

「ダメダメ、少年には違う役割があるでしょ?」

「羨ましいですか?」


 フフフとここに来て自慢するジキンさん。

 その顔ときたら憎たらしさ120%で横面を引っ叩きたくなってしまうほどです。


「別に。今回は貴方にお譲りするだけです。私には役目がありますからね!」

「それ、一応僕のなんだけどなぁ」


 勝者と敗者のすぐ横で、所有者の力なき声が呟く。


「|◎〻◎)敵影5。こっちに来ます」


 そこでスズキさんの凛とした声が響いた。

 ジキンさんが凄腕のガンマンの如き面構えで銃を構えていますが、絵面が酷いですね、これ。

 是非スクリーンショットに収めてブログで取り上げてやりましょう。


 私がそんな妄想で苦笑してる隙に戦闘は始まっていた。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?