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第13話 三世代でダンジョンアタック⑤

<三人称>

「チッ、よりにもよってシャドウ型か。“精錬の”、フラッシュ系の魔道具製作にかかる時間は?」


 連絡を受け取った金狼は苦々しく呟くと、すぐにオクトへと質問した。


「3分もあれば」

「その間身動きは取れずか?」

「集中するからね。移動は無理だ。作業を取りやめて動くことも可能だが、再度取りかかればその分時間はかかるぞ?」

「チッ。霊装を出し惜しみしてはいられないか。ケンタ、俺は少しの間無防備になる。ヘイト誘導は任せるぞ!」


 金狼は腕を大きく広げ、全身から光を放つ様な姿勢で『霊装』を解放した。

 自らが光源となる事でオクトの身を守る事を残りメンバーへと伝えたのだ。

 しかしそれを託されたケンタの覚悟はまだ決まってない。


 ただでさえ初見の相手。攻撃手段のパターン化さえ定まってないのに失敗せずにそれをやり切れるとは言えなかった。


「ケンタ君、ここは失敗しても良いんだよ」

「え?」


 マリンがケンタへと言葉を投げかける。

 第三世代の彼女たちにとって、失敗は何よりも恐ろしいものだ。

 成功して当たり前。だからこその情報分析能力の高さが当たり前にあった。


「でも、判断は間違えちゃダメ。ミスは誰にだって有るもの。それを補い合って、達成するの。パーティとはそういうものよ」

「……ッ」


 強く言い切るマリンに対し、ケンタは歯を強く食いしばった。

 今までは周囲の強さに引っ張られて自由にやってこれたケンタ君は、成長の時を迎えようとしていた。

 一足早く一皮剥けたマリンに対し、恋慕を抑えて尊敬の眼差しを向け、己の武器を強く握りしめる。


 集中する。

 今までのどこか抜けた態度は見せず、今ケンタの中で集中力が極限まで高められようとしていた。

 それを見てマリンもジキンも体勢を整える。


「お爺ちゃん……どうか無事で!」


 マリンはどんな状況でパーティチャットを開いたかわからぬ祖父に向けて、強い念を送っていた。

 同時に己の切り札を使用する。


「霊装発動!【銀姫の閃鎧】」


 マリンの周囲に迸るのは銀色の糸。

 それが編み込まれるように体に纏わり付き、光の鎧を構築した。効果は30分間闇属性ダメージ無効に、光属性ダメージ付与。そして移動手段がショートワープになるとっておきだ。

 1日に一度しか使えない切り札が、ついにその姿を現した瞬間である。



<sideアキカゼ・ハヤテ>


 辛くも取り込み攻撃から逃れた私は、隙を見て再度接近を試みている。

 しかし天井付近は闇が深い。

 まるで増殖してるような嫌な予感がして冷や汗が垂れた。


 パーティチャットを送った矢先、ポウッと下の方で光が断続的に灯った。

 何かの合図か? はたまた対抗手段かは分からないが『闇に対して光が有効』なのはこのゲームでも同じであるのか?

 石壁に手をついてスタミナを回復していると、天井付近で闇が蠢いた気がした。


 少しづつだが、降下してきている!?

 それも壁をぐるりと覆うようにゆっくりと影を薄めてだ。

 私は嫌な予感を感じてすぐに壁から手を離した。

 今でも冷や汗を感じる最中、先ほどまで手を置いていた場所を影が通り過ぎた。

 速度は目で終えるほどだが、まさか熱源感知で当たりをつけられたのかと思うとゾッとする。


 影自体は光に触れるとすぐに消えたが、闇が集まって濃くなればきっと物理的にもダメージを通してきそうな厄介さを感じた。


 捕まったら何をされるのかわからない。

 冷静に空を蹴り進め、私はスカイウォークの派生先のもう一つ……『影踏み』を使って薄い影を蹴飛ばすことにした。


 これらはボール型を蹴飛ばしたあたりで入手したものだ。

 だが派生先はスカイウォークから。

 一体どんなルートで何を目的としているスキルか分からないが、現状で最適かもしれないと踏んで行動に出る。


「薄い影なら踏んで回避できるな」


 それがそのスキルの特性の一つ。

 まだ実態は掴めてないが、踏んだ瞬間影が凝固するのを感じとる。それはチェインアタックのバインド効果に近いもので、効果は数秒。しかし確実に発動できることから有用性の高さは確実だ。


「検証はあらかた終えた。あとは報告だが……」


 独りごちる私だったが、瞬間冷や汗がドッと出る。

 まるで心臓を鷲掴みにされたような感覚。

 私のすぐ近くまで影と存在を薄くして接近してきたエネミーは、赤いコアをチカチカと点灯させて私の姿をしっかり捉えて覗き込んでいた。


 潜伏まで出来るのか。

 しかしそのコアからは攻撃意思はあまり感じない。

 どうも普通のエネミーとは違うようだ。


 何がトリガーだ?

 考えられる要因は『古代の代行者』くらいか。


 すぐに私から興味を外して闇が下へと降りていく。

 まさかここのエネミーは、本当に空へ上がるための門番だとでも言うのか?


 わからない事が本当に多いダンジョンだ。

 それでも決戦は近い。

 エネミーが降りるよりも先に到着するように、私は空を踏む足に力を込めた。

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