さらに季節が過ぎ去り、それから一年後。
カナーレ島の水上教会で、ボクとルィンヴェルは結婚式を挙げた。
花嫁衣装に身を包んだボクは、ルィンヴェルとしっかりと手を繋いで、ゆっくり、静かにヴァージン・ロードを歩く。
左右の会衆席には、ボクとルィンヴェルの大切な人たちが座っていた。
「ううっ……くっ……」
「花嫁の父が結婚式で泣くというのはよく聞く話だけど、花婿の父も泣くんだね」
「そ、それは当然だろう。息子の晴れ舞台なのだ」
「このあと、あんたの国でも結婚式をやるんだろ。涙が足りなくならないようにね」
近くを通った時、ヴェルテリオス王とおばあちゃんの、そんな会話が聞こえた。
「殿下、ご立派になられました……!」
その隣で、マールさんも泣いていた。実際に目はないけど、声色からして、たぶん泣いているのだと思う。
『――ナギサお姉さま、素敵です! 末永くお幸せに!』
その直後、アレッタからの祝福の念話が頭の中に響いた。
ボクは心の中でお礼を言い、その姿を探す。少し離れた席から、満面の笑みを向けてくれていた。
そんな彼女の隣には、ロイの姿がある。
少し前にアレッタが成人を迎えたということで、ロイはアレッタと正式にお付き合いを始めた。
地上の物語が好きなアレッタと、それを生み出すロイ……確かにお似合いのカップルだ。
すでにラブラブという話だし、この二人の結婚も時間の問題かなぁ。
「ナギサ、結局青いドレスを選んだのね。あの子に似合ってるし、素敵ね」
「そうだな……あ、俺はお前の花嫁衣装のほうが好きだからな」
「はいはい。言われなくてもわかってるから」
人の結婚式でも
この二人はボクたちより半年ほど早く結婚し、現在、イソラのお腹には新しい命が宿っている。
生まれてきた子どもを船乗りにするか商人にするかで、すでにブリッツさんとナッシュさんで意見が割れているらしい。
「ナギサさんもルィンヴェル様も、どちらも素敵ですわ」
「そうだな。お似合いのパートナーだ。シンシアにも、ルィンヴェル君のような恋人ができればいいのだが」
「……もう。お父様、今はその話はやめてくださいまし」
次に聞こえてきたのは、シンシアとモンテメディナ伯爵様の声だ。
あの二人にも、どれだけ助けられたかわからない。
……そんな友人たちの他にも、会衆席は島民や異海人たちでいっぱいだった。
後ろのほうは座りきれず、立っている人もたくさんいる。
皆がボクたちの結婚を祝福してくれている。感謝してもしきれなかった。
「……それでは、誓いのキスを」
誓いの言葉と指輪交換に続き、牧師様に促されて、ボクとルィンヴェルは向かい合う。
少し緊張した面持ちのルィンヴェルに微笑んで、ボクは目を閉じる。
……ややあって、ボクと彼の唇は優しく触れ合う。
次の瞬間、割れんばかりの拍手と歓声が周囲を包み込んだ。
……これまで、本当に色々なことがあったけど、ようやくこの日を迎えることができた。
――ルィンヴェル、ありがとう。そして、これからも、ずっとよろしく。
大好きだよ。
海魔法使いの少女は恋も魔法も手を抜かない!
完