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第19話『友好の証』


 ……その後も、人々は協力して街の復興に努めていく。


 そこには人間も異海人いかいじんもなく、まるで一つの目標に向かって一丸となった大きな家族のようだった。

皆で力を合わせることで、街は少しずつ、でも確実に、元の姿を取り戻しつつあった。


 ◇


 ……それから数ヶ月の月日が流れ、春の暖かさを感じ始めた頃。


 以前の美しさを取り戻した街の広場で、とある式典が執り行われようとしていた。


「えー、それでは、ここにカナーレ島とアクロネシア王国の永遠とわの友好を願い、親善都市締結の調印式を執り行います」


 式演台を挟んで向かい合うのは、モンテメディナ伯爵様とヴェルテリオス王。


 威厳たっぷりな両者の前に立つのは、スーツを着て身なりを整えたブリッツさんだった。


 経緯はよくわからないけど、島で最も力のある船頭ギルドの重役ということで、司会役に抜擢されたらしい。明らかに緊張していた。


 そんな彼の隣には、親善大使としてルィンヴェルの姿もある。


「調印式に先立ち、このたび街の復興に尽力していただいた異海人たちに対し、最大限の敬意と感謝を伝えさせてほしい。また、友好関係を築くにあたり、島民たちのたゆまぬ努力と協力も……」


 やがて始まったモンテメディナ伯爵様の口上を聞きながら、ボクは周囲を見渡す。


 会場となっている広場だけでなく、目の前に広がる運河にも、調印式の様子を一目見ようと多くの船が出ていた。


 中には、海魔法を使って海上で立ち見をしている異海人たちまでいる。


「……ありがとうございました。続きまして、調印式に移らせていただきます。まずはモンテメディナ伯爵様、調印と署名をお願いいたします」


 伯爵様の挨拶に続いて、ブリッツさんが粛々と調印式を進める。


 ルィンヴェルを立会人として、伯爵様とヴェルテリオス王がそれぞれ書類に記入していく。


 これが終われば、正式に友好関係が結ばれることになる。


 ……といっても、すでに街の復興を通じて、島民たちと異海人たちは強い絆で結ばれている。


 だからこれは、あくまで形式的なものだった。


「……ありがとうございます。これをもちまして、カナーレ島とアクロネシア王国は親善都市となりました。双方の都市の発展を、心から願っております」


 二人の署名が終わり、モンテメディナ伯爵様とヴェルテリオス王が握手を交わす。


 それと同時に、広場を包み込むほどの大歓声と拍手が巻き起こる。


 ……これから、カナーレ島とアクロネシア王国がどんなふうに変わっていくのか、ボクには想像もできないけれど。


 きっと、より一層明るい未来が待っていることは間違いない。


 だって、今この場にいる人たちは、その誰もが笑顔でいるのだから。


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