誰も来ない独房で私は叫び続ける。
鉄格子を掴む手はかつての白魚のような白くて艷やかな美しさはない。
干からび、骨張り、薄汚れ。
まるで墓から抜け出てきた屍のよう。
――これは、誰の手。私? そう。いや、違う。私じゃない。
こんなの私じゃない。
「違う、こんなの私じゃない! 私の子はどこ! アレは貴族の子よ! 私から取り上げてどうするつもり!」
声もしわがれ掠れて、自分の声じゃないように聞こえる。
あ、なんかこんな声、聞いたことがある。
そうだ、昔ひどい風邪を引いた時、半年以上治らなかったダミ声と同じだ。
あれはひどかった。
のど飴買っても、スプレー買っても効果無くって……アレ?
◆
――チュンチュン、鳥のさえずりが聞こえる。
ひたいに当たるまばゆい光に、朝だと認識する。
「はっ」
私は目を開けた。
「よぉ、目覚めた? お嬢様」
目の前には、派手なオレンジ髪の男の顔。
「――?」
記憶はある。
なんか昨日。
私、ここに宿泊してる男性をモノにしちゃえ★とか思って凸ったの。
え? いや、ナンデ!?
ナンデ Me(みー) は そんな事を……!?
「いや、まさかお嬢様がサービスしに来て下さるなんてなぁ。てっきりメイドさんかと」
餅付け……じゃなかった落ち着け、私。思い出せ。
さっきまで牢獄でしたー!
気がついたらここでしたー!
身に覚えがある状況デスぅ……。
ああ……認めざるを得ない。
これは前だか後だかわからないけど、違う人生の私だ。
というか、混ざってる。
簡単に言うと、違う人生でまともだった私とこの人生の
え、この状況からなんとかしろってミッションか何かですか?
ひょっとしてこの人生の私が罪深いがために他の人生の私が駆り出されて、まさかの尻拭い!?
色々やらかした後、過ぎる!?
いや、こんな状態になるにしろ、時間が巻き戻るにしろ。
もっと、幼少時代とかからにしてよー!?
「おい、お嬢様どうしたー?」
「あ……」
とりあえずは、目の前のこの男をなんとかしなければ。
「ゆ、ユウベハオタノシミデシタネ!?」
「はい!?」
名前紹介されてた気がするが、エレナの頭はそれを覚えてなかった。
とりあえず、オレンジ頭さん(仮)が目を見開いて度肝を抜かれたようだった。
なんで急にビックリしたのかは知らん。
てか、これの後ってことは、私の腹にこいつの子どもが宿るの確定ですか!?
多分、収容所で産んだあの娘! こいつそっくりの瞳でしたよね!?
困るんですけど!!
「いや、その……はい、楽しませては頂いてありがとうございます……? (あれ? オレはこれにこりたらエドガーに手をだすなよ、と警告してやるつもりだったんだが、流れがおかしい!?)」
「オ客様ニ、楽シンデイタダケテ、コレ幸イデス……」
エレナってどんな喋り方だったっけ。
なんかテンパって、ロボットみたいになった。
とにかくこの場を逃げ出して態勢を整えなくては……!
「そいでは、あっしはこれで……」
「面白しれぇ女!?」
前世?で見た時代劇のようなセリフで私は、その部屋を脱兎のごとく逃げ出した!
走りながら私は思った。
こいつぁー、