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天使の行きつく場所を幸せになった彼女は知らない。 【連載版】
ぷり
異世界恋愛ロマファン
2024年09月19日
公開日
79,663文字
完結
孤児院で育った茶髪茶瞳の『ミューラ』は11歳になる頃、両親が見つかった。
しかし、迎えにきた両親は、自分を見て喜ぶ様子もなく、連れて行かれた男爵家の屋敷には金髪碧眼の天使のような姉『エレナ』がいた。
エレナとミューラは赤子のときに産院で取り違えられたという。エレナは男爵家の血は一滴も入っていない赤の他人の子にも関わらず、両親に溺愛され、男爵家の跡目も彼女が継ぐという。
両親が見つかったその日から――ミューラの耐え忍ぶ日々が始まった。

■※※R15範囲内かとは思いますが、残酷な表現や腐った男女関係の表現が有りますので苦手な方はご注意下さい。※※■

※IFルートは、33話からのルート分岐で、ほぼギャグとなっております。

【00】プロローグ

 その日、その産院で、ほぼ同時に2つの産声が上がった。


 生まれたのは、うっすらと茶色い髪が生えた赤子と、金髪の赤子だった。


 担当看護師たちは、その2人を産湯で綺麗にし、隣同士のベッドに寝かせた。

 次は産着うぶぎを着せようとせわしなくしていて――勢いよく互いにぶつかった。



「あっ」

「きゃ、ごめん」


 新生児たちのベッドにも、仕事道具が置いてあるサイドテーブルにも衝撃が行き、いくつも物が落ちる音がした。


「あれ、名前のタグが」

「落ちてるわ」


 落とした物の中には、新生児を見分けるための名前のタグがあった。


「わぁ、最悪。……これ、どっちがどっちの赤ちゃんのタグだっけ……」

「あ……えーっと……」


 どっちのタグが、どっちの赤子の物かわからなくなってしまった。


「やばいよ、1人はお貴族様の赤ちゃんだよ!」

「お、お貴族様なら、こっちの綺麗な金髪の子がこのタグだと思う!」

「だよね! 私もそう思う! 合ってますように~!」


 彼女達は、そんな適当さで、赤子達にタグを付け、ミスを誤魔化した。


 その後、赤子の様子を見に来た貴族――男爵夫妻の容姿を見た彼女たちは、すぐに気がついた。

 自分たちは取り違えミスをしたのだと。


 男爵夫妻の容姿に面影があるのは、茶髪のほうの赤子だった。



 男爵夫妻は、金髪の赤子を愛おしげに抱き上げ、


「私達の間に、こんな天使が生まれるなんて」


 と言っている。


 もはや、間違いです、などと言える段階ではない。



 もう片方の赤ん坊の母親は、産んだばかりだというのに行方をくらました。

 産院に払う金がなかったのか、もともと産み捨てるつもりだったのかはわからないが。


 ミスした2人がさりげなく、分娩室での担当看護師にさぐりを入れると、その女性は金髪だったらしい。


「……いい? これは私達だけの秘密だからね」

「わかってるよ。平民ならともかく、片方はお貴族様だし!! 言えないよ!」

「ああもう、なんでお貴族様がこんな産院で出産するのよ! いい迷惑!」

「ホントホント! こんなとこで出産するほうが悪いよねー!」


 最終的に、自分たちは悪くないし! と文句を垂れたその2人は、逃げるように病院を退職した。


 ――かくして。


 茶髪の赤ん坊は孤児院へ送られ、金髪の赤子は男爵夫妻に引き取られていった。


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