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のちの話

 戦後しばらくして、その館の所有者の何代目か後の人物が、国営放送の取材に応じたことがあった。


「ええ、この館は戦前には幽霊屋敷と呼ばれていたんですよ」

「ほう、それはまたどういう」

「ちょうど居心地が良かったのですかねえ。国会議事堂にも近かったから、貴婦人達のサロンが行われている、って噂が立ったものですよ」

「今は大丈夫なのですか?」

「ええ。私の祖父がですね、効くのか効かないのか判りませんが、その筋の方に頼んだそうです。ただそれがあの、ザ・ブリッツの時でしてねえ」

「何と! あの時期に!」


 ロンドン大空襲ザ・ブリッツの中とは、と聞き手側は唖然とする。


「いやいや館が壊されるかも、というのは、住み着いた者達にとっては大変なことだったそうですよ」

「それで、その筋の方というのは? なかなか興味深いものですが」

「いやそれがですねえ。その辺りになると祖父は口を閉ざしたんですよ。報酬はしっかり渡したから、それ以上のことはと考えるな、と言われてましてねえ」

「今言ってしまっていいんですか?」

「いやあ、それを言っても判らないでしょう?」


 あはははは、と持ち主が笑ったその時。


『判ったらどうするの?』


 え?

 と、持ち主と国営放送のアナウンサーはぎょっとした顔になった――かもしれない。

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