戦後しばらくして、その館の所有者の何代目か後の人物が、国営放送の取材に応じたことがあった。
「ええ、この館は戦前には幽霊屋敷と呼ばれていたんですよ」
「ほう、それはまたどういう」
「ちょうど居心地が良かったのですかねえ。国会議事堂にも近かったから、貴婦人達のサロンが行われている、って噂が立ったものですよ」
「今は大丈夫なのですか?」
「ええ。私の祖父がですね、効くのか効かないのか判りませんが、その筋の方に頼んだそうです。ただそれがあの、ザ・ブリッツの時でしてねえ」
「何と! あの時期に!」
「いやいや館が壊されるかも、というのは、住み着いた者達にとっては大変なことだったそうですよ」
「それで、その筋の方というのは? なかなか興味深いものですが」
「いやそれがですねえ。その辺りになると祖父は口を閉ざしたんですよ。報酬はしっかり渡したから、それ以上のことはと考えるな、と言われてましてねえ」
「今言ってしまっていいんですか?」
「いやあ、それを言っても判らないでしょう?」
あはははは、と持ち主が笑ったその時。
『判ったらどうするの?』
え?
と、持ち主と国営放送のアナウンサーはぎょっとした顔になった――かもしれない。