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27 サーチェス医師夫人シャーロットが語る①

 そう、あの非常にあっさりと首を刎ねることができる機械のことね。

 元々あれは開発者の名前から付けられた名前なんだけど、そもそもまず「できるだけ苦しまない様に死なせる」ための道具を考案する様に願ったのは、かのルイ16世なのね。

 そう、フランス革命の際に、その機械にかけられた唯一の王。

 だけど革命ってのはまあたぶん、「王を殺す」ないしは排除するのが頂点なのね。

 ルイ16世は、何だかんだ言って、自分を殺すために作らせてしまった機械のおかげで、……まあ、半年少し後で自分の妻、そして自分の妹も殺されたし、かつてかのマリー・アントワネットと宮中で争ったとされるマダム・デュバリーにせよ、その刃の下にかかった訳だけど。

 それでも、その機械があったせいで、まあ簡単に首は刎ねられる様になった訳よ。

 それまでの首切り役人には技術が必要だった訳ね。

 下手だとなかなか上手くいかなくて、一発で首を落とせるなんて訳にはいかないの。

 ほら、我が国の歴史でも、ブラッディ・メアリが死刑になった時、なかなか役人が上手くいかなくて、大変なことになったという記録があるじゃない。

 そうなると、まあ死刑にされる側も無駄に苦痛を増やすだけ、ということで「人道的」ということを考えたんでしょうね。

 ルイ16世ってひとは、王族としては変わったひとだったそうで、地味で質素で、趣味が錠前作り。

 まあほら、今で言うところの、機械好きというか、技術者向きというか、そういうひとだったと伝わってますわよね。

 それにどちらかというと地味。

 作った経緯とか予算とかそういうのはおいといて、彼が妻と人工的な「農村」で子供達とのんびり暮らしたい、と思ったのは、まあ案外本音だったんじゃないかと私なんかは思いますよ。

 それでもこのひとは、確か死の直前に国民に対しては、自分を殺す人々を許す、自分の血が今後の国をいい方向にもたらすんだったら、という感じの内容を言ったとか。

 王妃にしたって、それこそ農村趣味があって、ベルサイユのしきたり嫌いで、子供達と仲良く暮らすことを望んでいたとすれば、生まれた先を間違えたという悲劇ですわね。

 無論、生まれた場所は変えられない訳ですから、その中で何とかしなくてはならないし、義務は義務ですし。

 と、まあちょっと脱線いたしましたわね。

 つまりは、あの機械というものは、銃と同じで、人を殺すことを簡単にできる様にしてしまったという訳ですよ。

 ほら、銃の前の飛び道具と言えば、弓矢ですが、あれには技術と練習が確実に必要でしょう?

 ですが銃はそこまでの腕は必要ではないし、そして飛び道具というのは、直接自分が血を流させるという訳ではないから、死自体に対し、鈍感になってくるものではないですの?

 だからこそ、かのフランス革命というのは1789年に勃発したというのに、四年後、1793年に王と王妃を殺した後は、もうどんどん内部分裂、というか元々とりあえず寄せ集まっていたものが分解していく訳ですよ。

 だって、革命の立役者ロベスピエールが恐怖政治を一気に進めて、それでまたそれに反動が来て、彼が殺されたのって、翌年ですもの。

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