疑問があれこれ飛び交う。
「まずやっぱり青年は死んだ、湖に身を投げたってことかしら」
マデリーンはすっと立つと、後ろ手にあちこち歩き回る。
「やだマデリーン様、無作法ですわ。でも確かにそれが一番妥当な結末ですわね。でもその場合、最後にタイにストリキニーネがついていたということは、彼が盛られた、というより彼が持っていたということかしら」
扇の先をちょい、と口元に当てるフレアはさすがにそのスカートのふくらみでは立てそうにない。
それはイヴリンも同じだった。
ただ、その代わりと言っていいのか、この二人の手に持つ扇は実に優雅にその感情を示してくれる。
「うふん。でもその場合、普段から全てを世話してもっていた彼が、いったい何処に毒を隠し持っていたか、ということになりますわね」
ローズマリーはその自由になる手と足を無作法なまでに組むと、猫の様な表情で皆をじっと見る。
「最後に自分で毒を取り出して飲んだ、ということになるのかしら」
レイチェルは頬に手を当て考えている。
しかしどうもこの点については皆それ以上の想像ができない様だった。
「じゃあその謎はさておき、何故兄上を怖れていたか、ですわね」
「と言うか、その兄上の名を知っていたこと自体が不思議ですわね。兄上は青年とどういう関係だったのかしら」
皆そこからしばらく口々に言い始める。
「兄上のお歳はどのくらいかしら」
「旦那様を亡くした奥様よりお歳上でしょう? 奥様がそもそもお幾つだったのかしら」
「あ、それは確か、奥様が三十歳くらいでしたわ」
イヴリンは付け足した。
「兄上は少し歳が離れていて、十歳くらい上。その奥様はその一つ二つ上だったということで」
「あら、てっきり奥様と義姉様、あまりお歳が変わらないのかと思ってしまっていましたわ!」
「で、あればそのごきょうだいも確かにねその下とすれば、逆に奥様とお歳かが近いんじゃなくって?」
「もしかして、兄上はそういう意味で奥様のごきょうだいをお付けになったのかしら」
「でも、じゃあ何故彼等は青年――が、犯人として、彼に毒を盛られたのかしら」 むん、とローズマリーはふわふわと結われた髪にちょいと指を伸ばした。
「おわかりにはなりますが、ローズマリー様、もう少し慎みをお持ちになったら如何でしょう?」
パメラは眉をひそめる。
「あらごめんなさいな…… ついつい。確かにそちらのドレスでは無理なことでしょうしね」
「だからその一言がですね」
「お二方」
イヴリンが声を掛ける。
「ここは論ずることで戦うのが楽しいことですのよ」
「イヴリン様がそうおっしゃるなら」
パメラはそう言って扇で顔を隠した。