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第13話 人質立てこもり事件(前編)


莉乃side


喫茶キトゥン。


「下手な真似してみろ、ぶっ殺してやるからな」

「………………」


縄で縛られ、銃を向けられた私は現在、事件に巻き込まれていた。

幸いなことにおじさんとおばさんは仲良く買い出しに行っているし、お客さんも1人も居なかった。

なので巻き込まれたのは私だけなのだが。


「集まってきやがったか」


この犯人はお金が目的ではないらしい。

何せ、目の前にレジがあるのに一切手をつけていない。

さらには今の発言。

まるで警察が来ることを待っていたかのような言い方だ。


「……何がしたいんですか?意味がわかりません」

「うるさい!!黙ってろ!!」


犯人は1発弾丸を放つ。

その弾は私の左頬を掠める。

随分と気の立っている犯人だ。

困ったものだ。


「辞めておけばいいのに……」


思わずそう呟いた。

正直、オムニバスに変身すれば、縄なんてすぐに千切れるし、そのまま犯人を制圧できる。

だが、警察が来た以上、オムニバスやその正体のことについて悟られるのはマズい。

颯斗君のようにダークエイドヴァルキリーに狙われるかもしれない。

しばらくは様子見ですね……

私は犯人の指示通り、変な動きはしないことにした。


──────────────────────


第三者side


「騒がしいな?」

「そうね」


薫と満は買い出しを終え、キトゥンへと戻ろうとしていた。

そんな彼らの横をパトカーがサイレンを鳴らしながら通り過ぎていく。


「何か事件でもあったのかしら」


2人は呑気にそう話していた。

それが、自身の義娘の危機であるとも知らずに。


───────────────────────────


颯斗の父の誠は警察署で調べ物をしていた。


「ふむ……」


七瀬家一家心中事件の資料を見返しているが特に何か進展はない。


「ん?騒がしいな……」


誠は何やら刑事たちが急いでいるのを見つける。


「おい、鏑木何かあったのか?」


ちょうど資料室を通りかかった部下である新米刑事に声をかける。


「氷室さん!休職中じゃ……」

「とあることの約束を果たすためにちょっとな。それで、何かあったのか?」

「立てこもり事件が発生したみたいなんですよ!」

「立てこもりだと?場所は?」

「喫茶キトゥンです」


鏑木の報告に冷や汗が出る。


「なんだと!?」

「ど、どうかしたんですか?」

「人質はいるのか!?」

「え、えぇ……情報によると人質は一名で、中で拘束されている模様です」

「人質の名前はわかるか!?」

「おそらくですが、高校生くらいの子との情報があり……」

「おいおいマジかよ……莉乃ちゃんか……っ!!」

「知り合いなんですか?」

「ああ。果たすべき約束をした相手だ」


誠は捜査資料をギュッと握って言う。


「絶対に助けないとですね!」

「ああ。行ってこい鏑木。何かあったら俺に連絡しろ。知恵くらいなら貸してやる」

「はい!」


そう言って鏑木は走って行った。

すると誠の携帯が鳴った。


「ん?颯斗?」


─────────────────────────────


そして、満と薫がキトゥンに戻ってくる。


「うちかよ!」

「どういうこと!?」


2人が困惑していると、颯斗がやってくる。


「満さん!薫さん!」

「颯斗くん!」

「落ち着いて聞いてください」


颯斗はそう言って。


「現在、喫茶キトゥンで立てこもり事件が発生しています。人質は莉乃です」

「莉乃が人質ぃ!?」


薫は驚きを隠せない。


「そんな……大丈夫なの!?」

「それはわかりません。俺も父さんから最低限しか教えてもらってませんから……」


するとそこへ。


「すみません!喫茶キトゥンのご主人でいらっしゃいますか?」

「はい」

「鏑木さん!」

「君は…颯斗君!」

「お知り合い?」

「はい。颯斗君の父は俺の上司です!」

「そうなのね!」

「鏑木さん、莉乃は大丈夫ですよね?」

「ああ。きっと助け出す。けど……」


鏑木は設置されたテントを見る。

そこには難しい顔をする刑事たちがいる。


「SATとかで制圧は出来ないんですか?」

「どうやら場所が悪すぎるみたいでね。突入したと同時に莉乃さんを撃たれてしまいかねないようだ」

「どうすんだよ……」


颯斗から本音が溢れる。


「犯人は何が目的なんだ……!?」


──────────────────────────────


莉乃side


しばらくして犯人は落ち着きを取り戻し始める。

頃合いかな。


「質問してもいいですか?」

「うるさい!!」

「そう怒鳴ってばかりではあなたの要求は聞き入れられませんよ」


私は冷静に言い返す。

窓ガラスもほぼ完全に塞いでいる。

狙撃対策だろう。

となると可能性があるのはSATのような特殊部隊の突入。

だけど、この距離だと私の頭を撃ち抜く方が早い。

だから警察は攻めあぐねている。

と言ったところだろう。

まずは、彼の要求を聞かなければ。


「あなたは警察に何を要求するんですか?」

「なんだと?」

「あなたが強盗であれば、レジがあるのですでにそれを奪っているはず。ですが、あなたはレジどころか金目のものには一切手を付けていない。となると考えられるのは別の要求があるということです。違いますか?」


私の言葉に犯人は目を見開く。


「お前、頭いいんだな」

「ええ。努力してきましたから」


私はまっすぐな目で犯人を見る。


「教えてください。あなたの要求を」


そうして犯人は語り出した。


「14年前、資産家の森田 貞夫が何者かによって殺害された事件があった」


14年前……私がちょうど小学校に上がるか上がらないかくらいの時期だ。


「当時、捜査は難航したが、凶器である包丁にある男の指紋が付いてあったことでその男が犯人として逮捕された。その男の名は末元 亮二、俺の父親だ」

「……っ!」


父親、か……


「だが、父に犯行は不可能だった!なぜならその時俺が一緒にいたからだ!!」


身内の証言は証言として認められない……


「父は冤罪だ。だから、それを晴らすのが俺の要求だ」

「なるほど、そういうことですか」


これは解決するべき問題だ。


「私の知り合いの刑事に頼ってもいいですか?」

「は?」

「このままではあなたの要求は果たされません」

「なんだと?」

「また別の人がやってもいない罪を被せられるかもしれません。ですので、信じられる方に協力をお願いしたいのです」


私の言葉に、犯人は頷いた。


「では、電話をしますので、私のポケットから携帯を」

「えっ」


犯人は一瞬動揺する。


「どうしました?」

「い、いや、なんでもない!」


犯人はそう言って携帯を取り出す。


「ガ、ガラケー……!?」

「早く電話しますよ」

「は、はい!」


私は犯人に指示し、颯斗君のお父さんに掛ける。


『莉乃ちゃん!?無事か!?』

「縄で縛られていますが無事です」

『そうか…いや、時間がないな。犯人の隙を見て電話しているのか?』

「いえ、犯人の協力のもと電話しています」

『え?』


颯斗君のお父さんは困惑している様子だ。


『どういう状況なんだ?』

「犯人の要求を達成して欲しいんです」

『協力しろってのかい?』

「ええ。犯罪ではないので大丈夫です」

『……聞かせてもらおう』

「犯人の要求は14年前に起きた、ある資産家の殺人事件の真犯人を見つけることです」

『14年前…ある資産家……森田貞夫殺人事件だな?』

「ご存知なんですね」

『ああ。あの事件はだいぶ面倒なしがらみがありそうでな』

「その事件の真犯人を見つけてもらえませんか?」

「真犯人…やはり冤罪だったか」

「やはり?」

『ああ。俺は当時から、末元が犯人だとは思っていなかった。そのことを捜査本部にも伝えた。だが、ダメだった。再捜査をお願いしてもダメだった……だが、この時を待っていた。今度こそこの事件の真実を明らかにする』


颯斗君のお父さんはそう言った。


『では、こちらで再捜査を進めてみる。一応、同じ要求を本部にもしておいてくれ』

「わかりました」


そこで電話は切れた。


「どうですか?」

「まさか、まともに取り合ってもらえるなんて……」

「何せ、私の事件も再捜査してくれていますから」

「え?」

「七瀬家一家心中事件ですよ」


犯人は少し辛そうな表情を浮かべた。

やはり、その事件の名を出せばなんとなく察してくるか。


「とりあえず、同じ要求をしましょう」


犯人は頷いた。


──────────────────────────────

第三者side


「ん?氷室さん?」


颯斗との会話をしていた鏑木のスマホに誠からの着信があった。


「はいもしもし!」

『鏑木か?』

「はい!」

『実は先ほど莉乃ちゃんから電話があってな』

「えぇ!?」

『それで、犯人の要求が分かった』

「なんですか?」

『14年前の森田貞夫殺人事件の真犯人を見つけ出すこと』

「14年前!?」

『ああ。お前は現場で動け。俺は資料を見て、何かないか調べてみる』

「了解しました!」


鏑木はそこで電話を切った。


「父さんはなんて?」

「莉乃さんから直接連絡があったらしい。14年前の事件の真犯人を見つけることが犯人の要求だと」

「……犯人と仲良くなったのか?」


3人は“まさかな”と苦笑した。

そんな時、颯斗の視界にダークエイドヴァルキリーガ入ってくる。


「……っ!」


彼女はニヤリと笑って移動した。


「(付いてこいってことか)」


颯斗は3人に一言入れて、彼女を追った。


──────────────────────────────

「どこに行った!?」


颯斗は見失っていた。


「グオオオオオッ!!」

「うおっ、と!」


すると目の前に現れたのは。


「Tレックス!?」

「グオオオオオッ!!」

「どう考えてもオミナスだよな……」


颯斗は若干気圧されながらもカードをスキャンする。


『プラネット!』

『フォックス!』


「オムニバスチェンジ!」


『宇宙の化け狐!プラネットフォックス!』


「行くぜ!!」


颯斗は惑星を拳に武装しながら殴りかかる。


「グオオオオオッ!!」

「うああっ!!」


しかし、Tレックスオミナスの尻尾による攻撃に颯斗は吹き飛ばされ、地面を転がる。


「強いな……!」


颯斗は立ち上がりながらそう言う。


「グオオオオオッ!!」

「でも、負けるわけにはいかない」


颯斗はチェンジャーの外枠を回転させる。


『プラネットフォックス!フィニッシュ!』


「はあああああっ!!」


惑星を出現させ、それをキツネの能力で増やす。


「はああああっ!!」


そして、増えた惑星をTレックスオミナスにぶつけ、最後に蹴りを放つ。


「グオオオオオッ!!」


Tレックスオミナスは雄叫びをあげ、爆散した。

颯斗はそれをすぐさまカードに回収する。


「ふぅ……」

「なかなかやるな」

「ダークエイドヴァルキリー!!」

「今日はこれくらいにしておこう」


そう言って彼女は姿を消した。


「なんなんだよ……」


変身解除した颯斗はそう呟いた。


           To be continue……


──────────────────────────────


次回予告

 「突入!!」

 「真犯人は彼の父親じゃない!」

 「これは……っ!!」

 「なんでお前が!」

 「なんだと!?」

 「そういうことだったのか!!」


第14話 人質立てこもり事件(後編)


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