莉乃side
「ただいま」
「「「おかえり〜!」」」
私が家に帰れば、おじさんとおばさんが常連さん達と一緒に出迎えてくれた。
「あ゛ぁ゛〜!!莉乃ちゃんだ〜!!」
そう言って描いていた漫画をほっぽり出して私に飛びついてきたのは富澤さんである。
「富澤さん酔ってます?」
「酔ってないれすよ〜!」
うん、酔ってる。
完全に酔っちゃってますね、この人。
「こらこら!富澤さん!困ってるじゃん!」
そう言って富澤さんを制止するのは伊達さんだ。
「伊達さん!皆さんも来てくれているんですね」
奥の席には伊達さんのバンドメンバーも見受けられる。
「そういえば自己紹介してなかったよね!私はボーカルの菊池 穂乃果!よろしくね!」
「俺はギターの夏目 健太だ!」
「ドラムの西城 明美よ!」
「七瀬 莉乃です。これからも喫茶キトゥンをご贔屓によろしくお願いします」
私はペコリと頭を下げる。
「もちろん!ここは落ち着いた雰囲気で歌詞を書くのにぴったりだしね」
「そうらの!漫画もいっぱい描けちゃう!」
富澤さんはそれだけ言ってカウンターに突っ伏した。
「えぇ……」
「莉乃ちゃん、バンドマンの俺が言えることじゃないかもしれないけど、こんな大人になっちゃダメだぞ」
「……反面教師にします」
すると、おじさんが声を掛けてくる。
「莉乃。疲れただろう?晩御飯の用意も出来てるし、食べてお風呂に入るといい」
「はい。ありがとうございます」
私はおじさんに返事をし、常連さん達に一礼して奥に入った。
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第三者side
莉乃が奥に入った後。
「ねぇ、伊達ちゃんさ、莉乃ちゃん目当てでこの店来てるでしょ?」
西城が頬杖をつきながらそう言う。
「別にそんなんじゃない」
「断っておくが、うちはそういう店じゃないぞ」
薫が物凄い圧で伊達を睨む。
「わかってますって!そもそも俺は別にJKに興味なんてない!そういう趣味はないぞ!」
伊達は必死に反論する。
「そういう明美だって莉乃ちゃん目当てで来てるんだろ!?」
「だって、あの子すっごく可愛いじゃん」
「わかりますよ!明美さん!」
菊池は激しく同意する。
「おいおい…大丈夫かよ……」
夏目は明らかに不安そうな表情を浮かべる。
「そういう夏目はなんで来てるんだ?」
「ここは落ち着いた雰囲気だろ?俺はこういうところが好きなんだよ。それにコーヒーも美味いし」
そう言って夏目はコーヒーを啜る。
「今はだいぶやばい酔っ払いが居るけどな」
「あの人はたまに飲んでるだけだよ」
「やけ酒ってやつだろ?」
「まぁ、な。ストレス溜まる職種だし、たまにはいいんじゃないか?俺たちが口出しする程のことでもないだろう。それに毎日飲んで泥酔してるあの人よりはマシでしょ」
伊達の言葉に3人は深く頷いた。
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莉乃side
お店が閉店時間を迎え、おじさんとおばさんが一段落していたところに私はお土産を渡す。
「これ、紅芋タルトと琉球グラス、それにシーサーも作りました」
「おぉ!」
「こりゃすごい!」
おじさんとおばさんは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、コーヒーでも淹れましょうか」
「「え?」」
「思い出話、聞きたいでしょう?」
私はそう言って柔らかく笑った。
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第三者side
修学旅行から数日。
莉乃達は相変わらず戦っていた。
「今度はミラーオミナスです。攻撃の反射に気をつけてください!」
「了解!」
「ミラアアアアッ!!」
ミラーオミナスは2人に襲いかかる。
「はああっ!」
リアクターナイトフォームの莉乃はオムニバスブレードで斬りかかる。
しかし、剣が弾かれる。
「そのレベルで反射するのかよ!!」
颯斗は莉乃の方に注意を向けていると。
「颯斗君!」
「えっ?」
颯斗が振り返れば、ミラーオミナスが眼前に迫っていた。
「うああっ!!」
颯斗はそのまま殴り飛ばされる。
「くっ……」
「(どうしましょう……)」
莉乃は思考を巡らせる。
「(直接的な攻撃が反射される……なら!)」
彼女は立ち上がってカードをスキャンする。
『ジェット!』
『スパイダー!』
「オムニバスチェンジ!」
そう言ってチェンジャーの外枠を回転させる。
『蒼空の糸使い!ジェットスパイダー!』
「これならどうですか?」
莉乃は糸を発射し、ミラーオミナスに巻き付ける。
「ミラッ!?」
ミラーオミナスはそれを反射することなく受け入れる。
「えぇ!?」
颯斗も驚いていた。
「間接的な攻撃は効くみたいですね」
「なるほど!」
「これで終いにしましょう」
莉乃はカードをスキャンし、外枠を回転させる。
『ジュエル!』
『ハンマーヘッドシャーク!』
『絢爛の狩人!ジュエルシャーク!』
再び外枠を回転させる。
『ジュエルシャーク!フィニッシュ!』
「はあああああっ!!」
莉乃は回転で勢いをつけたハンマーの一撃でミラーオミナスを正面から撃破した。
「ミラアアアアッ!!」
ミラーオミナスは爆散し、カードに力を回収した。
「これでよし」
莉乃と颯斗は変身を解除する。
「早く行かねえと遅刻するぞ!」
「わかってます。この人をベンチに寝かせてから急ぎますから」
莉乃はオミナスの素体となった男性を近くのベンチに寝かせてそう言う。
「行きましょう」
「ああ!」
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「はぁはぁ……間に合った!」
「案外余裕ですね」
「はぁはぁ……莉乃は、鍛えてるから…な……はぁはぁ……」
「ん?」
「号外だよ〜!!」
2人が学校に着けば、“号外”と題して新聞部が学校新聞を配っていたのだが、何やらだんだんと騒がしくなり、新聞部の彼女を取り囲うように人だかりが出来ていた。
「何かあったのか?」
「さぁ?ここからでは会話の内容は聞こえませんから」
「ま、何かあったなら生徒会長の出番だな」
そう言って颯斗は人だかりに突っ込んでいく。
莉乃もその後を追う。
「おいおい!どうしたどうした!」
「会長!これ見てください!」
生徒が提示したのは先ほど配っていた学校新聞の記事だった。
そこに書かれていたのは、『柔道部主将歴史的大敗!開始2秒で瞬殺!主将引退か!?』という内容だった。
「主将は足を怪我してたんだ!でも、部員が足りないからって怪我を押して出たのに……」
「この書き方じゃ、主将が弱いみたいじゃないか!!」
柔道部側の意見を聞いた生徒達は。
「うわマジかよ……」
「最悪だな」
「ちゃんと調べもしないのかよ…マスゴミじゃん」
無論非難轟々である。
「私はそんなつもりじゃ……」
新聞を書いた新聞部である益子は顔を青くして震える。
「私はあなたを許さない!!」
柔道部の副主将がそう言って踵を返した。
「マズいことになったな……」
颯斗はそう呟いた。
「新聞部益子」
「はい」
「話を聞かせてもらう。放課後、生徒会室に来てくれ」
「……はい」
益子は肩を落として歩いて行った。
「大丈夫でしょうか?」
「そろそろマズいだろうな」
「と、言いますと?」
「益子は過去にも同じようなことを繰り返している。しっかりとした取材や下調べをしないで憶測だけで記事を書き、その結果、事実と異なっていた、という今回みたいなパターンをな」
「そうだったんですか……」
「これまでのはまだ記事を書かれた当人も“自分もそう思わせてしまったのも悪い”と言って許していたし、記事があったからといっても実害が出ていたわけじゃない。だが、今回のは完全アウトだ。主将の名誉を傷つけたからな」
2人は教室へと歩きながらそんな会話をしていた。
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2人が教室に着けば、颯斗の席に1人の男が座っていた。
「お前……」
「会長。今朝の騒動については申し訳ない」
男は頭を下げる。
「いやいや、ああ書かれて怒らないのもダメだろ」
颯斗はカバンを置いてそう言う。
「えっと……」
「自己紹介していなかったな。俺は久門 大吾。柔道部主将だ」
「あなたが足を怪我していた?」
「ああ。そうだ」
「私は七瀬 莉乃です。よろしくお願いします」
「よろしく。それで会長。新聞部に聞き取りを行うのだろう?」
「そうだけど……」
「あまり責めてやるなよ?」
「それくらいわかっている。公正公平に何故あの記事を書いたのかを聞くだけだ」
「結果は教えてくれるのか?」
「ああ、お前には報告義務があるからな」
「わかった。判断はお前に任せる。何があっても部員は俺が邪魔しないようにしておくから心配するな」
「それは心強い。懸念が1つ減ったよ」
「では、邪魔したな」
そう言って久門は立ち上がる。
「彼女、大事にしろよ」
「彼女じゃないわ!!」
「ガハハ!そうか!それは失礼したな」
久門は去っていった。
「豪快な方ですね」
「だろ?でも、案外繊細なんだよ」
「そうなんですね……」
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颯斗side
放課後の生徒会室。
俺は椅子に座り、新聞部を待っていた。
するとドアがノックされる。
『新聞部益子です』
「入れ」
『失礼します』
ドアを開き、益子が入ってくる。
「そこに座ってくれ」
「……はい」
益子は椅子に座る。
部屋は電気を付けておらず、俺の後ろの窓から差す夕陽が天然の灯りである。
その明かりはちょうど益子の首あたりまでしか当たっておらず、益子の表情は伺いにくい。
「いくつか質問をする。いいか?」
「はい」
「1つ目。何故あの記事を書いた?」
「……先日柔道部の試合があったのでそれについて記事を書くことを決めて、試合会場に行きました。そしたら、主将が一瞬で負けていて、今回の記事が思いついたんです」
「2つ目。なんでちゃんと取材をしなかった?」
「……この記事を書きたいという想いを抑えられませんでした。この記事なら普段よりもたくさんの人に見てもらえる。そう思ったんです」
益子は泣きそうな声色で言ってくる。
「その行為は皆に情報を伝える者としてあるまじき行為だということはわかっているか?」
「……はい」
「わかった。とりあえず今日は帰れ」
「はい。失礼します」
益子は部屋を出て行った。
「新聞部、か……」
俺は椅子から立ち上がり、窓の外を見る。
どうしたものか……
この学校では生徒間の揉め事は基本的に生徒会が仲介し、生徒間で解決するというルールがある。
どうしてもそれが不可能、もしくは何か相談したいことがあるといった場合は教師に頼ることができる。
だから、この一件、判断は全て俺が担っている。
「どうしたものかな……」
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第三者side
「新聞部って益子さんという方だけなんですか?」
新聞部に対する聞き取り調査を終えた颯斗はキトゥンに来ていた。
「ああ」
コーヒーを出しながら聞いた莉乃に、颯斗は答える。
「他の方はいらっしゃらないんですか?」
「益子以外にも3人くらい居たよ」
「居た…ということは過去のことなのですね?」
「ああ。新聞部は今は益子1人だ」
「何故辞めてしまったんです?」
「……益子についていけなくなったんだよ」
颯斗はコーヒーを飲みながら答える。
「1人になる前までの新聞部は注目度はそこまでだが、クオリティの高い記事を書いていた。街にいる野良犬やら野良猫の情報を書いたり、事故の多い交差点を取り上げて、分析したり、美味しいケーキ屋さんとかパン屋さんを紹介したり。一部からは人気があった。だけど、注目されないことに嫌気がさした部長の益子が誇張した記事を書き始めた。そして、注目を集める代わりにクオリティが落ちて、益子のパワハラまがいの行為についていけなくなった仲間は次々と部を辞めた。これが新聞部の真実だ」
颯斗はカップをソーサーの上に置いてそう言った。
「うちの学校は退部届も生徒会が認めた上で教師に提出される。俺の初めての生徒会長しての役目は新聞部のメンバーの退部届の受理だった」
「そうなんですか……」
「うちの学校はかなりの放任主義だからな。特段深刻な問題が起きない限り生徒間で解決させる。俺からしたら意味が分からんけど。生徒会が権力を持ってるのはフィクションだろって思ってしまう」
颯斗は微笑しながらそう言った。
「益子さんの今回の件、どうするんですか?」
「処分なしじゃ柔道部から文句が出るだろうしな……処分するにしてもその度合いによっては生徒達から反感を買うからな……いい塩梅ってのが難しい」
「でも、やるしかありません」
「わかってるよ」
「……こういうのはどうですか?」
莉乃は1つ提案をした。
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颯斗side
新聞部の名誉毀損事件から数日。
生徒会室に新聞部と柔道部、そして生徒会メンバーが集まっていた。
「会長、結果が出たのか?」
「いや。結果は今ここで決める」
そう言って俺が取り出したのは投票箱だった。
「ここには今回の一件について全校生徒の意見が入っている」
莉乃が出した提案は今回の一件について全校生徒から意見を募集するのはどうかというものだった。
項目は簡単。
今回の一件に関して新聞部に対して処分を下す場合、どういったものがいいのか。
また、その理由。
「この項目で書かせた。安心して欲しいのはしっかりとした理由のないものや個人の思想で意見を書いているものは排除している」
俺の言葉に益子はホッと胸を撫で下ろす。
「これらの意見を聞いた上で話し合いをして落とし所を見つける」
公人と美香にはその補佐に来てもらっている。
俺は投票箱を開き、意見を読み上げていく。
「“今回の一件はあまりに酷い。よって廃部にするべき。理由は以前から何度もこういった問題が起きていたのにも関わらず、一切改善しようとしていないから”」
益子の表情が強張る。
「“数ヶ月の学校新聞の発行を謹慎でいいと思う。理由は今回の一件はどっちもどっちだで、柔道部の主将だって負けた事実はあるし、新聞部が取材不足だったのも事実だから。”」
副主将の眉がピクつく。
それからも意見の読み上げは続いた。
概ね、廃部と謹慎が同じ程度あり、別に処分は必要ないというのが数票あった。
「さて、これを元に話し合いを進めていく」
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莉乃side
私が颯斗君を待っていると。
「暇そうだな?相手をしてくれよ」
そこにはダークエイドヴァルキリーがいた。
「ダークエイドヴァルキリー……!」
「これでいいか?」
するとダークエイドヴァルキリーの背後からウサギの特徴を持つオミナスが現れる。
「ラビットオミナス、ですか」
「正解!」
「フン!」
ラビットオミナスは私に飛び蹴りを放ってくる。
「ぐあっ!!」
私はそのまま蹴り飛ばされ、地面を転がる。
「ハアアッ!」
ラビットオミナスは今度はパンチをしてくる。
私はそれを避けながらカードをスキャンする。
『クレイドール!』
『ケルベロス!』
「オムニバスチェンジ!」
ラビットオミナスを殴りながら、奴の体を利用し、外枠を回転させる。
『3つ首の土人形!クレイベロス!』
「ふっ!はああっ!」
連続パンチでラビットオミナスを怯ませる。
「いきますよ」
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颯斗side
話し合いをしている頃。
「………?」
外が騒がしいな……
何かあったのか?
そう思い、ちらりと窓の外を見れば。
「えっ」
そこにはクレイベロスフォームでオミナスとダークエイドヴァルキリーの相手をしている莉乃がいるではないか。
すぐに行きたいが……
今は話し合いの最中だ。
生徒会長としてこの場を離れるわけにはいかない。
早く解決してくれ……!!
俺がそう願っていると。
「会長、話し合いが終わったぞ」
久門がそう言った。
「それで?」
「ああ。今回の一件は───」
────────────────────
第三者side
「きゃああっ!」
ダークエイドヴァルキリーの攻撃によって莉乃は吹き飛ばされる。
その反動でカードを2枚落とす。
「そのカードは回収させてもらう」
「させるかよ!」
『UFOマジシャン!フィニッシュ!』
カードを回収しようと近づいたダークエイドヴァルキリーにキックを放ったのは颯斗だった。
「颯斗君……!話し合いは?」
「……終わったよ」
少し翳りのある表情でそう言った。
「貴様……」
「お前らなんかにアビリティカードは渡さない」
颯斗は2枚のカードを拾ってそう言う。
「ウサギが相手ならこのカードはちょうど良さそうだ」
そう言って颯斗は2枚のカードをスキャンした。
『ミラー!』
『コブラ!』
「オムニバスチェンジ!」
チェンジャーの外枠を回転させる。
『反射の毒蛇!ミラーコブラ!』
コブラのデザインを基調し、鏡の要素を加えられた衣装に変わった。
「いくぜ!」
颯斗はラビットオミナスに殴りかかった。
「ふっ!はああっ!」
一撃一撃にコブラのエフェクトが付き、ラビットオミナスは体を震わせ、棒立ちになる。
「はああっ!」
そのままダークエイドヴァルキリーに蹴り飛ばす。
「チッ!使えないな!」
ダークエイドヴァルキリーは飛んできたラビットオミナスを弾き飛ばす。
「これで決めるぜ!」
そう言っては颯斗は外枠を回転させた。
『ミラーコブラ!フィニッシュ!』
するとコブラが現れ、ラビットオミナスに巻き付いて拘束する。
「はあああああっ!!」
複数の鏡がラビットオミナスの周囲に現れ、颯斗が鏡にキックを放てば、その鏡からキックが反射し、反射したキックがさらに反射し……。
大量のキックがラビットオミナスに浴びせられ、そのままラビットオミナスは爆散した。
「チッ!まとめて葬ってくれる!」
ダークエイドヴァルキリーが何かのカードを取り出すのを見逃さなかった莉乃はリアクターナイトフォームになり、オムニバスブレードで彼女からカードを弾いた。
「なっ!?」
「オーロラ……?」
「クソッ!」
そう吐き捨ててダークエイドヴァルキリーは落としたカードを回収して姿を消した。
────────────────────
戦闘を終えた2人はキトゥンに移動していた。
「それで、どうなったんですか?」
莉乃は甘味とコーヒーを出しながら聞く。
「……新聞部、廃部になったよ」
「えっ?」
颯斗は暗い声でそう告げた。
「話し合いで結論付けた。もちろん益子も納得してな」
「そうですか……」
「アイツも今回の一件でだいぶ堪えたらしくてな。イジメもどきにも発展しているらしい。そのイジメもどきに関しては先生に報告しているからすぐに対処される。うちの教師陣は優秀だからな」
颯斗はコーヒーを飲みながら続ける。
「これまでは被害者側がすんなりと許してくれたから、なんとかなっていた節があったからな。今回は柔道部全員が徹底的に許さないという姿勢を取ったのがかなり影響している。主将自体は“俺が怪我を押して出てボロ負けしたのは事実だからそこまで責めるつもりはない”と言っていたが、益子本人から“廃部にしてください”との申告があった。だから、廃部になった」
「……なんとも後味が悪いですね」
「確かにな。主将もあまりいい気分じゃないだろうな」
「互いに互いの心を尊重した結果でしょうか」
「最初から心を尊重出来るのだったらあの記事を書く時点でしっかりと取材をするはずだ。だいぶ緩く見て久門に少しでも非があったと捉えても益子の方が非は大きい。しっかりとした取材をしていないんだからな。本人が納得しているから口出しはしていないが、廃部にする必要はなかったのではないかと思うがな」
颯斗はそれだけ言って甘味を口にした。
「……苦いな」
To be continue……
────────────────────
次回予告
「おいおいマジかよ……」
「父さんはなんて?」
「莉乃が人質ぃ!?」
「どうすんだよ……」
「意味がわかりません」
「辞めておけばいいのに……」
第13話 人質立てこもり事件(前編)