第三者side
休日。
店には颯斗、公人、美香、宮田が来ていた。
そんな中、颯斗が思っていた疑問を莉乃にぶつける。
「なぁ、莉乃。この店をSNSで宣伝しないのか?」
「えすえぬえす、ですか?」
コーヒーを出しながら莉乃は答える。
「そうそう!公式Twitterとか!」
「私、そういうの全くわからないんですよね……」
「ガラケーだしね」
「でも、やっぱり公式アカウントくらいはあった方がいいと思うんだ!」
「なぜですか?」
「だってそっちの方が客足伸びるでしょ!」
莉乃は4人以外がいない、がらんとした店内を見て、眉間に皺を寄せる。
「確かに、今はなんとか黒字ですけど……」
莉乃の力で不要な部分を削除し、なんとか出来ていた。
だが、かなりギリギリの状態ではあった。
「じゃあ始めようよ!」
「私も賛成ね」
「俺も!」
「もちろん俺もね!」
4人に言われ、莉乃は頷かざるを得なかった。
「ですが、それを始めるにあたって、私は何をしたらいいのか全くもってわからないのですが……」
「さすがインターネットおばあちゃん!」
「お、おばあちゃん……?」
「大丈夫!私に任せて!」
宮田は自身の胸を叩いてそう言う。
「じゃ、ちょっと待っててね〜!」
そう言って彼女は店を飛び出した。
「ちょっ、宮田さん!?」
「あの子、ああいうところあるから」
美香は冷静にそう言い放つ。
「今、意外って思ったでしょう?」
「い、いえ。そんなことは……」
「私が仲良いのはあの子とそこのバカ2人とあなただけよ」
「少なっ」
「しばくわよ?」
公人をギロリと睨みつけてそう言う。
「さーせん」
睨まれた公人は体を小さくして謝罪する。
「私も仲良くしたくないわけじゃないの。でも、いかんせん“目つきが悪い”のよね……」
「そうでしょうか?」
莉乃はケーキを出しながらそう言う。
「私はそんなことはないと思いますけど」
「優しいのね」
「莉乃。長年一緒にいる俺が断言する。初見さんからすれば怖い」
颯斗が真面目な顔で言うので、莉乃は困惑していた。
「あなた、本当に死にたいのかしら?」
ミカは眉をピクつかせながらそう言った。
すると、宮田が戻ってくる。
「はぁはぁ……お待たせ!」
息を切らした宮田の手には何か箱があった。
「大丈夫ですか?」
「だいじょぶ!だいじょぶ!七瀬さんに教えられると思ったら居ても立っても居られなくなって!」
宮田はニコッと笑ってそう言う。
「そうですか?」
「うん!七瀬さんとはもっともっと仲良くなりたいし!これあげるよ!」
宮田は箱を差し出した。
「要らんこと教えるなよ」
颯斗がジト目で彼女を見る。
「まだ根に持ってんの?しつこい男は嫌われるよ?」
「しつこ……っ!?」
颯斗は彼女の言葉にショックを受けていた。
そんな彼の肩に公人が手を置いた。
「七瀬さんに嫌われないようにしないとな」
「うるせえ」
彼らのそんな会話を他所に宮田は箱を開ける。
「こ、これはっ!?」
「美香っち、めっちゃ食いつきいいじゃん!」
「だ、だってこれはあれじゃない!一昨日発売されたばかりの最新のタブレット!YouPad Proじゃない!」
「せいか〜い!さすが機械マニアだねぇ!」
「えっ、え?」
莉乃は2人の会話に追いつけず脳がパンクしそうになっていた。
「言ってなかったけど、私と瑞稀が仲良くなったのは機会がきっかけなのよ」
「そうなんですか?」
「そうだよ〜!うちさ、パパが機械マニアでさ、色々あるんだよね〜!」
「そうなんですか……」
そこで莉乃は1つの結論に辿り着く。
「では、これは宮田さんの家のものじゃないですか」
「そうだよ?」
「そ、そんなの貰えませんよ……っ!」
莉乃は箱に蓋をして差し返す。
「なんで!?」
「返せるものがありません……」
「じゃあ、代金は……体?」
宮田の言葉に莉乃は首を傾げ、颯斗は冷たい声で彼女に声を掛ける。
「おい」
「冗談冗談!代金は、“私のことを名前で呼ぶ”こと!」
「えっ?」
「私も名前で呼ぶから!」
「い、いえ。そうではなくてですね?その名前で呼ぶことにこれと等しい価値を見出せないというか……」
「堅いっ!お堅いよ!莉乃っち!」
「り、莉乃っち……?」
「莉乃っちは人を名前で呼ばないでしょ?」
「そうですね。名前で呼ぶのは颯斗君くらいです」
「そう!それが気に入らないの!」
「はぁ!?」
「随分とはっきり言うのね……」
美香も若干驚いていた。
颯斗が反論しようとするが公人が口を塞ぐ。
「んんんんっ!(何すんだよ!)」
「し〜っ。いいところなんだから黙っててよ」
しばらくして諦めがついたのか、颯斗は暴れるのをやめた。
「それで気に入らない、とは?」
「私も名前で呼ばれたい!!」
「えっ?」
「だっておかしいじゃん!会長だけ名前で呼んでさ?1人だけとかもう恋人じゃん!」
「いえ、私と颯斗君はそういう仲ではないのですが……」
「ほぼ恋人だよっ!!」
「えぇ……」
「なので、私も名前で呼んでもらいたい!そしてあわよくば……うへへ……」
「瑞稀。綺麗な顔が台無しになってるわよ」
「おっと。これは失礼」
宮田は“こほん”と1つ咳払いをする。
「と・も・か・く!私は莉乃っちに名前で呼ばれたいわけです!!」
「は、はぁ……」
「なのでこれをあげるので名前で呼んでください!」
宮田は箱をもう一度差し出しながら、綺麗にお辞儀する。
「え、えぇ……?」
莉乃も困惑した様子を隠しきれない。
終いには周囲をキョロキョロと見てどうすればいいかという視線を送る。
「瑞稀のことを名前で呼ぶなら私のことも名前で呼んでくれるかしら」
「何ぃ!?美香っちも莉乃っちとセッごふぅっ!」
「それ以上は言わせないわよ!?」
美香は宮田に拳骨を落とし、発言を阻止する。
「だ、大丈夫ですか!?舌とか噛んでませんか!?」
「だ、だいじょぶ……」
「と、とりあえず、何か冷やすもの持ってきますね」
莉乃はそう言って奥へと入っていった。
「七瀬さんは純粋なんだからそういう発言は控えなさい」
「ごめんちゃい」
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莉乃が戻り、宮田は冷やしたタオルを頭に乗せる。
「そ、それで……」
「なに?」
「本当にいいんですか?」
莉乃は恐る恐る宮田に聞く。
「え?あ、もちろんだよ!」
宮田は笑顔でそう答えたのちにボソッと。
「……莉乃ちゃんの可愛さを共有したいし」
「え?今なんと?」
聞き取れなかった莉乃は聞き返す。
「気にしなくていいのよ?」
「工藤さんがそう言うなら……」
「やっぱり嫌?別に無理やり呼ばせたいわけじゃないから、無理なら断ってもらっても……」
「い、いえ!大丈夫です!!」
いきなり大きな声を出した莉乃に2人がびっくりする。
「あ、すいません……」
「いやいや……いきなりでびっくりしただけだよ」
「そうですか?」
美香もうんうんと頷く。
「で、では、呼ばせていただきますね……?み、瑞稀ちゃん…み、美香ちゃん……」
莉乃は少し頬を赤らめながら名前を呼んだ。
「「(エッ……!!)」」
2人は湧き立つ感情を押し殺す。
「「(ちゃん付けとか可愛すぎない!?)」」
第二波が彼女たちを襲う。
急に黙り込んでしまった2人を見て、莉乃は困惑する。
「(ま、間違えた……!?ずっと黙っていますし、私何か気に障ることでもしてしまったのでしょうか……)」
流石に理由を聞こうと思った莉乃は口を開く。
「あの……私、何かやっちゃいけないことでもやってしまいましたか?お友達との距離感がまだイマイチ掴みきれていないもので……」
「「(お友達……っ!!)」」
2人はカッと目を見開く。
「いいえ!そんなことはないわ!!」
「呼んでくれて嬉しい限りだよ!!」
莉乃の手を取ってそう言った。
「じゃあ、色々と教えるね?」
「あっ、はい。よろしくお願いします」
莉乃は瑞稀からTwitterの使い方をレクチャーされるのだった。
「「(俺たちほぼ空気じゃん)」」
男子メンツは遠い目をしていた。
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瑞稀side
私たちが帰った後、莉乃っちは早速ツイートというものをしてみたらしい。
店内の写真を添付して。
『喫茶キトゥンです。ぜひ来てください』
なんとも単調な文である。
あまりインプレッションも稼げていない。
そりゃそうか。
ただただ店内の風景を写したくらいでバズるなんてことはないだろう。
「う〜ん……」
激バズりとはまで行かずともちょっとバズるくらいに収めておきたい。
そうじゃないとあの店がパンクしてしまうだろうから。
私はふとカレンダーを見ていいことに気がついた。
「そうだ!これを利用しよう!」
ニヤッと笑い、ウキウキが止まらなくなった。
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第三者side
「お呼びですか。ゲイル様」
「ああ。次の出撃に関してだ」
玉座に座る男にダークエイドヴァルキリーは片膝を着き、頭を下げる。
「はい」
「コイツを連れて行け。きっと役に立つ」
「それは……」
「ゾンビオミナスだ。コイツの力は───」
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その翌日。
「ハッピーハロウィン!」
喫茶キトゥンに瑞稀が来店する。
「瑞稀ちゃん、いらっしゃいませ」
「そういえば薫さんたちは?」
「おじさんはわかりませんが、おばさんなら買い出しです」
「そうなんだ」
莉乃はコーヒーを淹れながらそう言う。
「あれ?莉乃ちゃんのお友達〜?」
「富澤さん。瑞稀ちゃんにあまりウザ絡みはしないでくださいよ?」
「えっ、酔ってるの?」
「はい。普段は一生懸命な漫画家さんなんですけど……」
「それより、なんで喫茶店でお酒やってるのさ!」
「なぜと言われましても、提供出来るからですが……」
瑞稀は頭を抱えた。
「(警戒心が無さすぎない!?ダメな人だったら襲われてるよ!?)」
その言葉を口にしようとしてやめた。
これを言っても伝わらないのだろうなと思ったからである。
「それで、ご注文は何にしますか?」
「じゃあ、カフェオレとパンケーキを……って!そうじゃないよ!」
「え?」
「今日、何の日かわかる!?」
「今日、ですか?」
莉乃は手を顎に当てて考える。
「世界都市デー、でしょうか?」
「そんなのあるの!?」
瑞稀の反応で指しているものと異なることを察した莉乃はすぐに代替の答えを出す。
「では……日本茶の日、でしょうか?」
「もっと有名なのだよっ!!」
「……ハロウィン、ですか?」
「そう!」
「なるほど……ハロウィンは先ほど述べた2つよりも有名でお友達との話題の優先度が高いんですね」
莉乃はメモ帳を取り出し、メモをする。
「真面目かっ!!」
「莉乃ちゃんは真面目だぞ〜ぉ?私が漫画の設定で行き詰まったら色々と調べて考えてまとめてくれるんだぞ〜ぉ?」
「いえいえ、私の考えなんて微力ですから」
「いやいや!莉乃ちゃんの考えてくれたことを入れたら読み切りの連載が決まったんだ〜ぁ!」
「(プロとしてそれでいいのか……!?)」
瑞稀は困惑した。
するとカランコロンとドアベルが軽快な音を立てて、来客を知らせる。
「いらっしゃいませ」
「来たよ、莉乃ちゃん」
「伊達さん!」
「常連さん?」
「はい。彼はバンドをしている方なんですよ?」
瑞稀は彼の背負っているケースを視認する。
「バンド仲間も連れて来たけど大丈夫かな?」
「はい。問題ないですよ。お好きなテーブルに座ってください」
言われて伊達たちはテーブルに座る。
「因みに聞いておくけど、その伊達さんってのは何の楽器をしてるの?」
「ベースですよ」
「(ダメ!!ベーシストはダメなやつ!!)」
内心叫んでいた。
流石に本人の居る前では叫ぶのは憚られるし、そもそもその伊達という人物が“悪”であると断定するには早すぎる。
そう思い、言葉を呑み込んだ。
「(うんうん。落ち着こう私。ベーシストが揃いも揃ってクズなわけがない。たまにバンドファンの友達に誘われて新宿とか下北沢に行くじゃないか。その中に1人はいるはずだ。まともなベーシストが。私の知ってるベーシストの中にもまともなのが……まともなのが…………いない!?常に酔っ払って幸せスパイラルを決めている人か、草食ってバンド仲間に金を集っている人しかいない……っ!?)」
瑞稀は天を仰いだ。
「注文いい?」
「はい。ただいま」
莉乃は注文を受けに行った。
「(いやいや、なんであの人と付き合うみたいに考えてるの!?可能性があるなら同年代……私か会長だ!!うん!安心安心!)」
瑞稀は1人、一喜一憂していた。
「承りました。では、少々お待ちください」
莉乃は丁寧にお辞儀すると厨房へと向かった。
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満も薫も戻って来て仕事が落ち着いた頃。
「では、本日来た目的を説明します!」
「はい」
莉乃の部屋で互いに正座して向かい合っていた。
「ハロウィンなので仮装してはどうかと思ってこれを持って来たの」
そう言って差し出された服は。
「な、なんですかこれは?」
「赤ずきんだよ!!」
「それハロウィン関係あるんですか?」
「わかんないけど、それっぽかったらいいと思うの!!」
瑞稀は鼻息荒く、莉乃に語りかける。
「そ、そうなんですか……?」
「そうなの!!だから、それに着替えて!Twitterに写真上げるから!」
「それは意味あるんですか?」
「大有りだよ!」
瑞稀がそう言うので仕方なく莉乃は奥へと行き、着替えた。
「これ、似合いますかね……?」
「最高!!」
瑞稀が鼻息荒くサムズアップする。
そして、パシャパシャとタブレットで写真を撮る。
「もっとあざとい感じのちょうだい!!」
「あ、あざとい……?」
莉乃は少し考える。
「(そういえば、富澤さんのお手伝いであざといポーズというものを調べたんだった)」
それを思い出した莉乃はあざとめのポーズを取る。
「フォオオオオッ!!最高おおおおっ!!」
「あ、ありがとうございます……」
瑞稀は早速、撮った写真の中でも素晴らしいものを4枚ピックアップし、Twitterにアップした。
「とりあえず、私はそろそろ帰るね!」
瑞稀がそう言ってドアを開けた瞬間。
「なんじゃこりゃああああ!!」
瑞稀の悲鳴が響き渡った。
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「どうしたんですか!?」
莉乃も同じく外に出てみれば。
「何が起きてるんですか!?」
そこにはゾンビのように彷徨う人々がいた。
そんな人々は言葉を発することなく、うめき声を上げながら、彷徨っている。
「莉乃!」
颯斗たちがその場に駆けつける。
「何故ここに?」
「さっき満さんから連絡が入ったんだよ」
「それにしても早くないですか?」
「もともとここに来るつもりだったしな」
「どうしましょう……」
「原因を突き止めるぞ!」
「はい。この感じ、おそらくはオミナスの仕業です」
「ああ。だから満さんが連絡して来たんだろうよ」
そんな会話をしていれば、人々がこちらに気付き、迫ってくる。
一度店内に避難しようとするが、開かない。
「嘘だろ…おい!」
ドア越しに満がサムズアップした。
「“グッ!”じゃないですよ!?」
「おい!颯斗逃げるぞ!」
「このままじゃ……」
「私たちもあんなのに……」
「B級ゾンビ映画かっての!」
だが、時すでに遅し。
全方位をゾンビ化した人に囲まれていた。
「仕方ありません。颯斗君私が道を切り拓きます」
「相手は元人間だぞ!?殺せないぞ!?」
「大丈夫です」
莉乃はスパイダーカードとジェットカードをスキャンする。
『スパイダー!』
『ジェット!』
「オムニバスチェンジ」
莉乃はチェンジャーの外枠を回転させた。
『蒼空の糸使い!ジェットスパイダー!』
莉乃の姿は蜘蛛の要素にほんの少しの飛行機要素で構成された衣装に変わった。
「莉乃っちの姿が変わった!?」
「いきます」
莉乃が両手を突き出せば、糸が発射され、ゾンビ化した人たちを絡め取っていく。
「これで抜けられます」
「サンキュー!オムニバスチェンジ!」
『未確認の手品師!UFOマジシャン!』
「颯斗も!?」
「説明は後だ!乗れ!」
颯斗が呼び出したのは円盤だった。
莉乃はジェットの力で飛び、颯斗は公人たちを乗せて飛んだ。
────────────────────
「とりあえず、ここまで来れば大丈夫だろう」
莉乃たちはホッと息を吐く。
場所はビルの屋上。
なかなか見つかることのない場所だ。
「それにしてもこの状況……オミナスの正体はおそらくゾンビですね」
「ああ。同感だ。こういうのは噛まれたらゾンビになるってのが鉄則だしな」
「なるほど。覚えておきましょう」
莉乃はメモをしていた。
「いやいや、お二人さん?何冷静に話をしてるのさ」
「「え?」」
「さっきのはなんなのかしら!?」
「なんで姿が変わってたの!?」
「それはおいおい説明します」
「いいか。お前たちはここを動くなよ」
「颯斗たちはどうするんだよ!」
「この騒動の元凶を倒してきます。そうすれば、街の人も元に戻るはずですから」
莉乃と颯斗は立ち上がる。
「「オムニバスチェンジ(!)」」
『灼熱の騎士!リアクターナイト!』
『未確認の手品師!UFOマジシャン!』
2人はビルから飛び出した。
────────────────────
「場所はどこだと思う?」
移動しながら颯斗が問う。
「おそらくですが、この騒動の全貌が見えるであろう中心にいるはずです」
「なるほどな!だが、中心って言ってもどこだよ」
「わかりません。ですから、地道に探し回りましょう」
「了解」
莉乃はカードをスキャンする。
『ジェットナイト!』
「じゃあ俺も!」
颯斗もカードをスキャンするが、エラー音が鳴る。
「なんで!?」
「どの組み合わせでスキャンしたんですか?」
「UFOとライオンだけど」
「おかしいですね……」
2人は立ち止まる。
「私が試してみます」
『UFOライオン!』
「変身出来ますよ」
莉乃はジェットナイトフォームに戻り、カードを返す。
颯斗はもう一度試してみるが、またもエラー音が鳴る。
「あれ?」
「機能がオミットされていますね……」
「まぁ、いいか!」
「そうですね。今は現状を打破しないとです」
2人は二手に分かれて、探し始めた。
「(どこだ……?)」
「(どこにいる……?)」
────────────────────
しばらく探した頃。
「見つけましたよ……!」
莉乃は発見していた。
「はあああああっ!!」
そのままゾンビオミナスに斬りかかるがそれをダークエイドヴァルキリーが受け止める。
「邪魔をしないでください」
「それはこっちのセリフだ」
莉乃は一度距離を取り、ダークエイドヴァルキリーと睨み合う。
「オムニバスチェンジ」
『絢爛の狩人!ジュエルシャーク!』
「ならこちらもだ」
『ダークジュエル!』
『ダークハンマーヘッドシャーク!』
「ダークオムニバスチェンジ」
『絢爛の暗黒狩人!ダークジュエルシャーク!』
互いにジュエルシャークフォームにチェンジし、睨み合う。
「「はああああああっっ!!」」
2人は激突する。
────────────────────
「あれは!」
その頃、2人の戦いの様子を見た颯斗が気づいた。
「行かなきゃ!」
颯斗はすぐさまその場に移動し、ゾンビオミナスを発見する。
「オムニバスチェンジ!」
『磁力の百獣王!マグネットライオン!』
「はああああっ!!」
『マグネットライオン!フィニッシュ!』
ライオンのオーラを纏ったパンチを繰り出す。
「グオオオオオッ!!」
そのまま爆散した。
ゾンビオミナスの姿が残っていたため、颯斗はカードを翳す。
するとカードは力を吸収し、被害者を残す。
「あれ!?」
颯斗は吸収したカードを見て驚く。
「フォックス!?」
撃破したにはゾンビオミナスではなくゾンビオミナスの姿をしたフォックスオミナスだったのである。
「ぐあああっ!!」
そんな颯斗の元に莉乃が吹き飛んでくる。
「莉乃!」
「チッ。油断したな」
「颯斗君…ゾンビオミナスは……?」
「それがフォックスオミナスだったみたいで……」
「えぇ!?(じゃあ本物はどこに……!?)」
莉乃は考える。
「颯斗君、ここは任せます」
「ああ」
莉乃はビルから飛び降りる。
『ジェットシャーク!』
「逃がすか!」
「行かせない!」
ダークエイドヴァルキリーと颯斗が対峙する。
「どうやら気づいたようだし、今日はここまでにしておこう」
そう言ってダークエイドヴァルキリーは姿を消した。
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莉乃は探していた。
「いた…あれが本物……っ!」
『灼熱の騎士!リアクターナイト!』
空中でフォームチェンジし、そのまま落下する。
落下の最中にオムニバスブレードにリアクターカードをスキャンし、柄頭を引く。
『リアクター!』
『リアクター!ブースター!』
「はああああああっ!!」
地面に降り立つと同時にゾンビ化した人間を率いていた者、すなわちゾンビオミナスを斬り裂く。
「オオオオオオッ!!」
ゾンビオミナスは跡形もなく溶けた。
そうして街の人々のゾンビ化も解除された。
「ふぅ……」
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戦闘が終わり、2人はキトゥンに戻ってきた。
「それにしてもよくわかったな?ゾンビオミナスが先導してるって」
「はい。よくよく考えれば、人々の中に紛れていた方が安全だと思ったので。おそらく、リーダー的な認識は受けているだろうということで先導者を斬りました」
「流石だわ!」
颯斗はコーヒーを飲みながらそう言う。
「そういえば何かを忘れてる気が……」
颯斗の言葉に莉乃の顔から血の気が引く。
「あら?私たちを放置して、お茶?」
「いい度胸じゃないか」
「怖かったんだよ?」
扉が開いてそんな言葉が耳に入ってくる。
2人はギギギとそちらに首を向ける。
「「「トリックアンドトリート!」」」
「お菓子貰っても、イタズラするぞ♬」
凄い迫力の3人に迫られ、2人はガタガタと震えながら莉乃の部屋に連れて行かれるのだった。
「「お、お助けを〜!」」
To be continue……
────────────────────
次回予告
「修学旅行だぁ〜!!」
「マジで!?」
「初めてです……!!」
「同じ班で回らない?」
「こんなところにまで来るのかよ!」
「沖縄だ〜!!」
第10話 南国修学旅行・前編