第三者side
『これからよろしくお願いします。颯斗君』
「(颯斗君、かぁ〜……)」
莉乃との喧嘩の一件が片付き、帰宅した颯斗は莉乃からの名前呼びが脳裏に焼き付いて離れなかった。
「颯斗?」
「……………………」
父が問いかけるが、颯斗は反応を示さない。
なぜなら彼は。
『お〜い!颯斗く〜ん!』
「(いいなぁ〜……)」
現実から掛け離れた莉乃の妄想に耽っている浮かれポンチだからだ。
「颯斗!!」
「な、なに!?」
「どうした?ボケ〜っとして」
父にそう言われて、颯斗は我に返る。
「別に?なんでもないよ」
「莉乃ちゃんから名前で呼ばれたんだろ」
「なんでわかるの!?」
「あはは!颯斗もお父さんの子ねぇ〜!」
母は料理をしながら楽しそうに笑う。
「え?」
「おい、その話を颯斗にするのはやめろ!」
「怪我に障るよ?父さん」
颯斗は父の口を塞ぐ。
「実はね?」
「んんっ!!」
「お父さんも私が初めて名前で呼んであげたら、ずっとボ〜ッとするし、たまに笑うし、浮かれポンチだったのよ?」
「マジで!?」
「うんうん!」
母から過去の恥ずかしい話を暴露された父は天を仰いでいた。
「父さんにもそんな可愛いところがあったなんてねぇ?」
「兄さん!」
兄が部屋の入り口にもたれかかって言った。
「お前なぁ……」
父は少し頬を染め、母を恨めしそうにじっと見ていた。
────────────────────
莉乃もまた帰って来ていた。
「ただいま帰りました」
「おかえり」
「どうだったんだ?」
薫に聞かれた莉乃はグッ!とドヤ顔でサムズアップしていた。
「「(えっ?可愛すぎか?)」」
満と薫の内心は一致していた。
「莉乃ちゃん、よかったわね?」
満はそう言う。
「はい」
顔にこそ出ていないが、莉乃はご機嫌だった。
カランコロン!
扉が開かれ、ドアベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
莉乃はどこか跳ねているような声色でそうい言った。
────────────────────
第三者side
翌日。
颯斗は席に着いていた。
「颯斗、おはよ」
「ああ。おはよう公人」
「それで?七瀬さんとは仲直り出来たのか?」
「当たり前だ。ちゃんと話せるなら仲直り出来る」
「そりゃ良かった」
そんな会話をしていると、教室のドアが開かれ、莉乃が入ってくる。
「おはよう!七瀬さん!会長とは仲直り出来た?」
「ええ。宮田さんのおかげです」
「よかったよかった!」
「失礼します」
莉乃は軽くお辞儀をし、自席に着く。
「おはよう、七瀬さん」
「おはようございます。久我さん、颯斗君」
「ああ。おはよう、莉乃」
「「「……っ!?」」」
莉乃の言葉に、クラス中が大きく動揺する。
黒板の掃除をしている者は黒板消しを落とし、椅子に座っている者は椅子から転げ落ちた。
名前呼びはそれほどまでに衝撃的だったのだ。
一瞬、静まり返ったクラスはコソコソと会話が聞こえてくる。
「ね、ねぇ…今、名前呼びしなかった?」
「もしかしてくっ付いたのか!?」
「雨降って地固まるってやつ?」
会話は聞き取れず、莉乃は首を傾げる。
「みなさん、どうしたんでしょうか?」
「な、なぁ?」
「どうした公人?」
「お前ら、付き合ってんの?」
「は、はぁ!?そ、そんなわけないだろ!?」
颯斗は顔を真っ赤にして抗議する。
慌てる様子の颯斗を見て、莉乃は。
「どうしたんですか?颯斗君」
「べ、別に!?なんでもないし!?」
「そんなに動揺することはないと思いますよ?現に久我さんの言う通り、付き合ってますし」
「「「えっ」」」
クラスの雰囲気が凍りつこうとした瞬間。
「友達として」
その一言で、普段の雰囲気を取り戻した。
ただ一つ、普段と違うのは、颯斗へと向けられる憐れみの視線が強くなったことだった。
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放課後。
「では、颯斗君。さようなら」
「ああ。じゃあな!」
莉乃が教室を出ようとした時、電話が鳴る。
「はい。どうかしましたか?」
『莉乃ちゃん!オミナスが!』
「わかりました。場所はどこですか?」
『すぐそこよ!』
次の瞬間、悲鳴が聞こえる。
「「……っ!!」」
莉乃はすぐに電話を切る。
「莉乃!!」
「わかってます」
2人は校庭へと駆け出した。
────────────────────
「ゴオオオオオッ!!」
校庭ではジェットオミナスが暴れていた。
「あれは!?」
「ジェット、飛行機のオミナスですね」
「なるほどな?」
「雑談はそれくらいにしておいた方がいいぞ」
言ってダークエイドヴァルキリーが現れる。
2人は緊張した表情で、カードをチェンジャーにスキャンする。
『ジュエル!』
『ハンマーヘッドシャーク!』
『マグネット!』
『ライオン!』
「「オムニバスチェンジ(!)」」
『絢爛の狩人!ジュエルシャーク!』
『磁力の百獣王!マグネットライオン!』
「莉乃はオミナスを頼む。それまでは俺があいつを抑える」
「わかりました」
2人は分かれて対処に当たる。
────────────────────
莉乃side
「ゴオオオオオッ!!」
ジェットオミナスは小型の飛行機を飛ばしてくる。
「ふっ!はああっ!たああっ!」
それらを左手のハンマーで叩き落としていく。
一気に決めて、颯斗君のサポートに入った方が良さそうだ。
「はあああっ!」
私はジェットオミナスにハンマーでアッパーを決める。
「ふっ!」
私はジャンプし、更に地面に叩きつける。
「ゴオオオオオッ!!」
「!?」
ジェットオミナスは大量の小型飛行機を放つ。
撃ち落としきれない!
「なら!」
地面に降りた私が胸を張ると、ドーム状の宝石のバリアが展開される。
そのバリアに直撃した飛行機達は次々と砕け散る。
そして、煙が周囲を包み込む。
「ゴオオッ……?」
「貰いました!」
『ジュエルシャーク!フィニッシュ!』
私は煙の中から宝石に包まれ肥大化したハンマーと共に現れ、横回転をしながらジェットオミナスを地面に叩きつけた。
「ゴオオオオオッ!!」
そして、ジェットオミナスは爆散した。
「よし」
カードにジェットオミナスの力を回収し、被害者を巻き込まれない場所に置いて、颯斗君の助けに向かった。
────────────────────
颯斗side
「ぐあああっ!」
俺はダークエイドヴァルキリーの一撃を受け、吹き飛ばされる。
「お前じゃ勝てない」
「やってみなくちゃわからないだろうが!」
『UFO!』
『マジシャン!』
『未確認の手品師!UFOマジシャン!』
「はあああああっ!」
俺はUFOマジシャンフォームでダークエイドヴァルキリーに襲いかかる。
「甘い」
俺の打撃は全て防がれる。
「ふん!」
更に膝蹴りを喰らう。
『ダークリアクターナイト!フィニッシュ!』
「はあああっ!」
黒いエネルギーを纏った蹴りを受け、俺は一気に吹き飛ばされる。
「があああっ!!」
「終わりだな」
ダークエイドヴァルキリーはダークオムニバスブレードを取り出して、カードをスキャンし、柄頭を引く。
『ダークケルベロス!』
『ダークケルベロス!ブースター!』
「はあああっ!!」
剣を振り下ろせば、黒い3つ首が放たれる。
やばっ!!
その時だった。
『クレイベロス!フィニッシュ!』
クレイベロスフォームの莉乃が立ち塞がった。
「はああああっ!!」
なんとか技を相殺することが出来た。
「随分と早かったな?」
「今日こそあなたを倒します」
「それはお前には不可能だ」
そう言ってダークエイドヴァルキリーは運動をする前のように足首をクルクルを回す。
「まぁ、いい。今日はゲイル様の要望を優先しましょう」
「ゲイル様……?」
「あなた達が知る必要はありません」
ダークエイドヴァルキリーが取り出したのはダークマジシャンのカードだった。
「誕生しなさい。ダークマジシャンオミナス」
そう言ってカードを投げると、オミナスが現れる。
「やりなさい。ダークマジシャンオミナス」
オミナスは頷いてこちらに向かってくる。
「立てますか?」
「ああ。当たり前だ」
俺は莉乃に言って立ち上がる。
その次の瞬間、オミナスが揺らぎ。
「「……っ!!」」
俺たちの目の前にいた。
そして、オミナスは俺たちに向かって手のひらを突き出した。
そして、俺たちは眩い光に包まれた。
────────────────────
第三者side
光が収まれば、オミナスもダークエイドヴァルキリーも居なくなっていた。
「一体なんだったんでしょうか……」
「そうだ…な……」
2人は互いの姿を見て驚愕する。
「俺!?」
「私ですか!?」
「ということは……」
「入れ替わってるぅ〜!?」
2人は入れ替わったのだ。
「マジシャンの力でしょうね」
「冷静かよ」
颯斗の体の莉乃がマジシャンカードを取り出す。
「あなたは治せますか?」
しかしカードは反応しない。
「しゃべって返事してくれるのかよ」
「いいえ。質問の返答が“YES”ならば光るだけです」
「それでも光るんかい」
「となると、あのオミナスを撃破するしかないみたいですね」
「だが、逃げちまったぞ?」
「……仕方ありません。今日はこのまま家に帰って説明をしましょう」
「薫さんと満さんはまだしも、俺の家族にはどうするんだよ」
莉乃の姿の颯斗が聞く。
「問題ありません。以前、颯斗君のお父さんがオミナスと遭遇しているのは知っていますから。“怪物のせいでこうなった”とでも言えば、なんとかなるでしょう」
「くっ……」
莉乃の言葉に颯斗は唇を噛む。
「それにしても、これが男性の……新感覚ですね」
莉乃は颯斗の体をペタペタと触っていく。
「やめろぉ!!」
「?どうかしましたか?あっ、なるほど。こういうのは許可しておかないとセクハラというものに該当するんですよね?颯斗君も私の体を堪能していいですよ」
「堪能なんかしねぇよ!?それと言い方をどうにかしてくれ!」
「言い方、ですか?そうですね……まさぐってもいいですよ」
「よかねぇよ!?」
「では、どのような言い方がいいのですか?」
「…………………」
「なんで黙るんですか」
「とりあえず、一回帰るか。じゃないと心配するだろうし」
「はい」
2人は踵を返し、それぞれの家に帰った。
……わけではなく。
「家、どこですか?」
「そういえば教えてなかったわ」
────────────────────
颯斗side
ん〜、困った。
俺は視線を落とす。
慣れない!!
なんだこのスースーする感じ!!
スカートってこんな感じなの!?
それに……
俺は胸元を見て考えるのをやめた。
俺だって健全な男子高校生だ。
薄い本みたいなことが起きてるんだったら楽しみたい。
だが、そんなことをすれば俺は殺される。
絶対に殺される。
莉乃は知識がないはず……
となると、元に戻った時に学校で聞いてくるかも知れない。
そうすれば俺は女子全員から殺される!!
落ち着け。
俺なら平常心を保てるはずだ。
よし!
俺は意を決して扉を開けた。
────────────────────
莉乃side
「「「入れ替わったぁ!?」」」
颯斗君の家にお邪魔した私は早速説明をした。
「ということは、見た目は颯斗だけど、中身は莉乃ちゃんってこと?」
「はい」
颯斗君のお父さんは頭を抱えていた。
「颯斗の敬語とか新鮮すぎるっ!!」
お兄さんは笑い転げていた。
「笑い事じゃないわよ!?」
お母さんもかなり動揺していた。
「あっ、では、せめてものお詫びに晩御飯を作らせてください」
「いいのか?」
「はい。お世話になるので」
「じゃ、じゃあお願いしようかしら……」
「やばい。颯斗の姿で料理出来るとか頭バカになりそう」
お兄さんは散々な言いようである。
そんなに意外なのだろうか。
私はとりあえず冷蔵庫を見る。
「これは……」
中に入っていたジャガイモ、にんじん、玉ねぎ、牛肉etc……
脳内に思い出されるのは幼き頃の記憶。
『お母さん!美味しい!』
『そう?ありがとう莉乃』
「…………………」
「莉乃ちゃん?どうした?」
「いえ、なんでもありません。得意料理でいいですか?」
「ええ。構わないけど……」
「何を作るんだい?」
「……肉じゃがです」
少し間を置いてそう言った。
────────────────────
颯斗side
「お、落ち着けねぇ……」
俺は莉乃の部屋に座っているのだが。
やばい。
そこかしこから女の子のいい匂いがする。
やばい。
頭がおかしくなりそう。
こういう時は素数を数えるのがいいんだよな!?
2、3、5、7……
「落ち着けるわけないだろぉ!!」
俺は床にドンと拳を叩きつけてそう言う。
『颯斗君!お風呂入れるわよ!』
「はい!」
返事をし、俺は脱衣所に向かった。
「おい!!!」
靴下を脱ぎ、そこで重大なことに気づいた俺は思わず大きな声をあげる。
「俺、今莉乃の体じゃん」
お風呂に入るということは必然的に裸になるわけで……
それはマズい。
じゃあお風呂に入らなかったら?
それもマズい。
あれ?
俺詰みじゃね?
「終わった……」
俺は頭を抱えた。
────────────────────
莉乃side
「美味しかったよ!」
「最高だった!」
「うちの娘にならない?」
「喜んで頂けたようでよかったです」
私の作った肉じゃがは大絶賛された。
「それにしても、料理上手なんだね!」
「はい。……特に肉じゃがは亡くなった母の得意料理でしたので」
「「「………………」」」
「他にもビーフシチューとかロールケーキとか、亡くなる前、母から色々教わったんですよ」
私はカバンからボロボロの1冊のノートを取り出す。
「それは……」
お父さんの方は見覚えがあるらしい。
「これは母が残してくれた料理のレシピが書かれたノートなんです」
「知っているよ。あの一家心中の時、君がそれを手に掴んでいたと証言があったからね」
「そうなんですか。確かに、母がこのノートを書き足していくのを隣でワクワクしながら見ていたことを覚えていますよ。どこに行く時も暇があれば、ずっとそれを読んでて……」
私の言葉に全員が黙り込んでしまった。
「どうかしましたか?」
「い、いや?」
「なんでもない!」
「それより、お風呂!お風呂に入ったらどうだ?」
「え?あ、はい」
私は促されるままお風呂へと向かった。
────────────────────
颯斗side
「や、やってしまったぁ〜……!!」
結局、俺はお風呂に入ってしまった。
そう、莉乃の裸を見てしまったのだ。
正直に言おう。
素晴らしかった……!!
一度着替えを除いてしまったが、あの時よりも間近で見たことでよりよかった。
腹筋は少し割れていたが、腕や足も華奢で女子なんだなと実感した。
それと息子がいないのがすごく違和感だった。
髪の毛は長いし、ムダ毛も完璧に処理されていた。
まぁ、胸に関してはノーコメントで。
もはやこれは実質セッ…では!?
「何考えてんだろ、俺」
特にナニもしていないが俺は賢者になった。
手は出さなかった。
出したら人として終わりだから。
そして俺は悟りを開いた。
────────────────────
莉乃side
「ここが颯斗君のお部屋ですか……」
部屋にはあまり嗅いだことのない匂いがしていた。
これがいわゆる男の子の匂いというやつなのだろうか。
部屋は綺麗に整理整頓されている。
「………ベッド、ですか」
以前、宮田さんから教えてもらったことがある。
“男子の部屋に上がったのならベッドの下をまさぐってみろ。それが男子の部屋に行った時の礼儀だ”と。
「失礼します」
私は一礼し、ベッドの下をまさぐってみる。
「ん?」
すると何か私の手に当たる。
それを取り出してみる。
「なんでしょうか?」
薄い本だった。
「ちゃんと本棚に戻しておきましょう」
特段中身なんぞに興味は無いので、本棚に戻して置いた。
「慣れない体は疲れますね……では、失礼します」
私はそう言ってベッドに入り、眠りについた。
────────────────────
颯斗side
「眠れねぇ」
いや、この状況寝れるわけないだろっ!!
ずっといい匂いがしている。
まるで莉乃に抱きしめられているかのようだ。
「ダメだ……」
寝なきゃいけないのはわかってる。
でないと、莉乃の体に負担が掛かっちまう。
俺はふと、机の上に置いてあった写真立てに目がいく。
「これは……」
俺はベッドから起き上がり、その写真立てを手に取る。
そこには幼い莉乃と2人の男女、おそらく莉乃の父母だと思われる人物が写っていた。
「めっちゃ笑顔じゃん……」
今の莉乃からは想像が出来ないほど笑顔だった。
「……笑えるわけないよな」
写真立てをそっと置き直して、呟く。
両親が死んだんだ。
それで笑えなんていう方が無茶じゃなかろうか。
それに感覚も子供のままストップしているし、俺が守らないと。
そう思った途端、眠くなる。
「寝るか……」
────────────────────
翌日。
俺が目を覚ますと同時に部屋のドアが開かれ、満さんが言ってくる。
「颯斗君!オミナスが現れたわ!」
「わかりました!莉乃に連絡してすぐに行きます!」
俺は早速莉乃に電話をかける。
『はい』
「莉乃か?オミナスが現れた。今から言う場所だ!」
『わかりました』
俺は場所を伝え、現場に急いだ。
────────────────────
第三者side
2人が現着すると、そこにはダークマジシャンオミナスがいた。
「どうやらオミナスだけみたいですね」
「だな!行くぞ!」
「はい」
2人はカードをスキャンし、外枠を回す。
『リアクター!』
『ナイト!』
『UFO!』
『マジシャン!』
「「オムニバスチェンジ(!)」」
『灼熱の騎士!リアクターナイト!』
『未確認の手品師!UFOマジシャン!』
「うひょ〜!もう一回くらい剣使ってみたかったんだよね!」
「ふざけないでください」
「ああ。わかってる!」
颯斗はすぐに切り替え、戦闘を始める。
ダークマジシャンオミナスは無言で大量の矢を放つ。
「であれば!」
莉乃も両手を突き出し、同じように対抗する。
「そんなこと出来んのかよ!」
颯斗は驚きつつも斬りかかる。
オミナスは軽く怯む。
『磁力の百獣王!マグネットライオン!』
マグネットライオンフォームになった莉乃が一気に詰め、オミナスの腹部ゼロ距離でアッパーする。
『マグネットライオン!フィニッシュ!』
「はあああああっ!」
ライオンのエフェクトを纏ったその一撃でオミナスは打ち上がる。
『リアクターナイト!フィニッシュ!』
「はあああああっ!」
ジャンプし、すでに待機状態だった颯斗が蹴り抜いた。
そして、オミナスが爆散した。
それと同時に、2人の入れ替わりも解除された。
「やるな」
そう言って落ちていたダークマジシャンカードを拾い上げたのはダークエイドヴァルキリーだった。
「まぁ、ゲイル様も楽しめたみたいだし、今日はこの辺にして置いてやろう」
そう言ってダークエイドヴァルキリーは姿を消した。
「ゲイル……」
「一体何者なんだ……?」
────────────────────
颯斗side
「ただいま〜……」
俺が家に帰るが、誰も返事をしない。
「なんだよ」
すると兄さんがポンと肩を叩いて。
「頑張れよ」
笑いを堪えながら、一言そう言って去っていった。
「は?」
俺が意味がわからないでいると。
「颯斗。これは何?」
そう言って母さんが出したのは、ベッドの下に隠していたはずの薄い本だった。
「なぁ!?」
なんでそれを!?
その言葉が出る前に母さんが答え合わせをしてくれた。
「今朝掃除しに入ったら見つけたのよ!」
「嘘だろ!?」
これまで見つかってなかったのに!?
すると、それまで無言だった父さんが口を開く。
「本棚はやめておけ」
「はぁ!?本棚ぁ!?」
どうやら、その本は本棚にあったらしい。
一体誰が……
想像したくない人が1人いる。
「莉乃か……!?」
俺は軽いショックを受けながら学校へと向かった。
────────────────────
第三者side
「おはようございます。颯斗君」
「あ、ああ。おはよう」
「そういえば聞きそびれていたんですが、私の体は堪能したんですか?」
「ぶふっ!!」
思わず颯斗は吹き出す。
そして、クラス中が颯斗を睨みつける。
「ねぇ、会長?今のはどういう意味かなぁ?」
宮田が詰め寄る。
「お、落ち着け!」
「昨日、互いの家でお泊りをしたんですよ」
莉乃が更に爆弾発言をする。
「お前!!ズルいぞ!!」
クラスの颯斗への視線が強くなる。
「そういえば、宮田さんのアドバイス通り、ベッドの下をまさぐってみました」
「なっ!?」
颯斗は目を見開く。
「そうしたたら、ベッドの下から薄い本が出てきたんですよ。颯斗君が失くしたと思っていたらと思い、本棚に戻しました。アドバイス、ありがとうございます」
嬉々として紡がれる莉乃の言葉に宮田の汗が止まらない。
颯斗はプルプルと震えていた。
「あっ、颯斗君。安心してください。中は見てません。漫画はあまり読まないので」
その言葉など颯斗にとってはどうでもよかった。
「お〜ま〜え〜かああああああ!!」
颯斗は宮田に飛びかかった。
「な、何をしてるんですか!?」
流石の状況に莉乃も驚きを隠せない。
「莉乃に変なことを教えるなあああ!!」
「ご、ごめんて会長〜!!」
颯斗は宮田を追い回していた。
莉乃は状況が理解できず、終始混乱しているのだった。
To be continue……
────────────────────
次回予告
「ハッピーハロウィン!」
「原因を突き止めるぞ!」
「嘘だろ…おい!」
「トリックアンドトリート!」
「何が起きてるんですか!?」
「なんじゃこりゃああああ!!」
第9話 ハロウィン・ゾンビパニック!