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第6話 覚醒!2人目のオムニバス!


第三者side


莉乃が倒れた後、颯斗はすぐさま救急車を呼んだ。

現在、莉乃は様々な処置を終え、体に包帯を巻かれた状態でベッドの上で眠っている。


「俺のせいだ……俺に力があれば……!!」


颯斗は拳を握りしめ、震える。


「「莉乃(ちゃん)!」」


と、満と薫が入ってくる。


「満さん…薫さん……」

「颯斗くん。君は怪我をしていないのか?」

「ええ。七瀬さんが守ってくれましたから」


颯斗は罰が悪そうな表情を浮かべ、そう言う。


「すみません。俺があの場にいたせいで、七瀬さんをこんな目に遭わせてしまいました」


颯斗は2人に頭を下げる。


「謝ることは何もない」

「自分を責めないで?」

「ですが……」


言葉を続けようとした颯斗に薫が言った。


「莉乃ちゃん、あなたのことをずっと心配していたのよ?」

「え?」

「口には出さなかったけど、顔にはすごく出てたから」

「莉乃は自分が傷つく覚悟を持ってオムニバスに、エイドヴァルキリーになったんだ。だから、君を守った」

「颯斗くんに怪我が無いのなら、莉乃はそのことを喜ぶだろう」

「薫さん……」


そう言われても颯斗は自分の無力さが許せなかった。


「───っん、う〜ん……」


すると莉乃が目を覚ました。


「ここは……」


莉乃は体を起こす。


「うっ……!」


傷が痛む莉乃は体を抑える。


「あまり無理しないの!莉乃ちゃん、重傷なんだから!」

「は、はい……」


満にそう言われてゆっくりとベッドに横になる。


「氷室さん、怪我ありませんか?」

「あ、ああ……」

「よかったです……」


莉乃はホッと息を吐く。

そんな莉乃を他所に、颯斗はギュッと拳を握った。

そんな颯斗を薫はジッと見ていた。


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颯斗side


俺は薫さんに呼び出されていた。


「なんですか?」

「君にならこれを託せそうだ」


そう言って差し出してきたのはオムニバスチェンジャーだった。


「俺と契約してオムニバスにならないか?」

「契約?」

「別に大それたものじゃない。ただ一つ、莉乃を助けてやってくれ。あの子は何もかもを背負い込むことがある。そんなアイツには君の支えが必要だ。だから、俺と契約してオムニバスにならないか?」


そうして差し出されるオムニバスチェンジャーを俺は受け取ろうとして、手が止まった。

その時に思い出されるのはオミナスやダークエイドヴァルキリーへの恐怖心だった。

俺はあんな奴らと戦えるのだろうか。


「……君にこれを預けておこう。どうするかは君が決めるといい。必要ないならいつでも返しに来なさい」


そう言って薫さんは踵を返して歩いて行った。


────────────────────


第三者side


翌日。

学校に来ていた。


「どうした?元気ないんじゃないか?」


公人が話しかけてくる。


「そんなことないぞ」


颯斗はそう返すが、普段よりも覇気がなかった。


「何かあったのか?相談に乗るぞ?」

「いや、大丈夫だ」


2人がそんな会話をしていると、教室のドアが開く。


「「「えっ!?」」」


教室の全員が入ってきた人物に驚愕した。


「おはようございます」

「七瀬さん!?なんで……っ!!」


身体中に包帯を巻いた莉乃は車椅子に乗って登校していた。


「どうしたんだよ七瀬さん!」

「少し事故に遭いまして」

「いやいや!!なんでそんな状態で来てんの!?」


公人は驚きを隠せなかった。

そんな公人よりも驚いていたのは颯斗だった。


「あれだけの酷い怪我をしたのになんで……!!」

「あれくらいなんともないですよ。あの時に比べれば」


莉乃は儚げにそう笑った。


「七瀬さん……」


そして、担任の先生が入ってくる。


「じゃあホームルームを……」


担任は莉乃の状況を見て、出席簿を落とした。


「お、おい。七瀬……?お前、大丈夫なのか……?事故に遭ったとは聞いていたが……想像以上にヤバそうだが……」

「大丈夫です。この程度、どうってことありませんから」


平然とそういう莉乃に担任は“そうか……”という他なかった。


────────────────────


莉乃side


それから授業は難なく進んでいた。

本日の最終科目は体育だった。

無論、大怪我している私は見学だ。


「本日の体育はサッカーだ!」

「「「よっしゃあああ!!」」」


私は盛り上がるクラスの面々を遠くから見守る。


「七瀬さん、大丈夫?」

「大丈夫ですよ?」


私に話しかけてきたのは宮田さんだった。


「そっか……不運だったね、事故なんて」

「はい。流石に驚きました。あれほど強いとは思いませんでした」

「え?」

「いえ、なんでもありません」


私はそう答える。

ダークエイドヴァルキリー……

一体、何者なんでしょうか……

オミナスよりも遥かに強い。

それに加えて、オムニバスシステムを模倣していた……

そんなことを考えても意味はないですよね……

次は勝たないと。

そう思っていると。


「おいバカ!!どこに向かって蹴ってんだよ!!」


そんな声が聞こえてきた。

ふと見れば、ボールはこちら側に、しかも宮田さんに飛んで来ていた。


「宮田さん!!」


私の体は動いていた。

宮田さんに覆い被さるように。

ドンッ!!

途轍もない衝撃が体に走る。


「うがぁ……っ!!」

「七瀬さん!!」

「心配しないで、ください……」


背中がじんわりと暖かくなる。

その感覚でわかった。

傷が開いたのだと。

それは制服にも滲んでいたらしく。


「大丈夫じゃないよ!!血が!!血がぁ!!」


宮田さんは半ばパニック状態に陥っていた。


「落ち着いて、くだ…さい……」


私はそのまま意識を失った。


────────────────────


第三者side


莉乃が目を覚ませば、そこは病院だった。


「七瀬さん!!」

「氷室さん……」

「「本当にごめんなさい!!」」


宮田とボールを明後日の方向に蹴り飛ばした男子が謝罪する。


「気にしないでください……それより、宮田さんは怪我ありませんか?」

「ないけど……」

「よかったです……」


莉乃は安堵の表情を浮かべた。

それから少しして、2人は帰った。

夕日の差し込む病室には颯斗と莉乃だけが残されていた。


「「………………………」」


互いに黙り、部屋には時計の音と、莉乃に繋がれた機械が定期的に発する音だけが響いていた。


「あの……」


颯斗が何かを言いかけた時、悲鳴が聞こえる。


「「「きゃあああっ!!」」」

「……っ!!」


莉乃はベッドから飛び起きる。


「ちょっと!七瀬さん!」

「少し、行ってきます」


そう言って莉乃は向かった。

颯斗もそれを追いかけた。


────────────────────


病院のエントランスでは、オミナスを引き連れたダークエイドヴァルキリーがいた。


「手負いのところ悪いが、消させてもらおう」

「そう簡単にはいきません」


莉乃はカードをスキャンし、回転させる。


「オムニバスチェンジ」


『リアクターナイト!』


「はあああああっ!!」


莉乃は2人に斬りかかった。


「くっ!!」

「手負いでは本領発揮できないだろう?」


ダークエイドヴァルキリーは斬撃を飛ばし、莉乃を病院の外へと吹き飛ばす。


「ぐっ……ぁ…!!」


莉乃は怪我も相まってもう立ち上がる力も残っていない。

しかし、莉乃は颯斗を庇う。


「氷室さん…逃げてください……!!」

「なんで…なんでそこまでして……」


颯斗は莉乃を見てそう呟く。


「自分の方が傷ついているのに……そんな体で勝てるはずもないのに戦って……死ぬことが怖くないのかよ!!」


颯斗は叫んだ。


「怖いですよ。死ぬことは」

「え?」

「ですが、私は今私に出来ることを全力でやるだけです。どんなに危険でも、それが私に託された運命なら」

「運命……」

「あなたは望んで巻き込まれたわけじゃありません。ですから、逃げてください」


莉乃はそう言って2人を睨む。


「ここまでだな」


そう言って迫ってくるダークエイドヴァルキリーに颯斗は。


「うおおおおおおおっ!!」


拳を放った。


────────────────────


颯斗side


俺の放ったパンチはダークエイドヴァルキリーによって軽々と受け止められていた。


「なんのつもりだ?」

「俺の力がどんなに弱くても!!七瀬さんの力になりたい!!」

「無駄だ」


俺はダークエイドヴァルキリーに殴り飛ばされる。


「ぐああっ!!」

「氷室さん……!!」

「フッ。ただの一般人に何が出来る」

「わからない……っ!!でも…それでも!!」


俺は薫さんに渡されたオムニバスチェンジャーを取り出す。


『ただ一つ、莉乃を助けてやってくれ。あの子は何もかもを背負い込むことがある。そんなアイツには君の支えが必要だ』


「俺にその資格があるのなら……!!もう傍観者じゃ嫌だ!!今度は偶然巻き込まれるんじゃない……望んで巻き込まれる!!うおおおおおおおおっ!!」


俺は立ち上がる。


「氷室さん……」


すると、七瀬さんのカードホルダーが光り出し、2枚のカードが飛び出してくる。

それはUFOとマジシャンだった。


「七瀬さんは…俺が……俺が守る!!」


そう言ってオムニバスチェンジャーを腕に装着した。


『オムニバスチェンジャー!』


そして、2枚のカードをスキャンする。


『UFO!』

『マジシャン!』


「オムニバスチェンジ!!」


そう言ってチェンジャーの外枠を回転させた。


『未確認の手品師!UFOマジシャン!』


「なんだと……!?」

「氷室さんが…変身した……!!」

「なんだ!なんなんだ貴様は!!」

「俺はエイドバスターだ!」

「行け!」

「グオオオオオオッ!!」


ダークエイドヴァルキリーはオミナスに指示を出す。


「その容姿、ライオンか!」


俺は飛びかかってくるオミナスを回し蹴りで蹴り飛ばす。


「グオオッ!?」

「強い……!!」

「お前の相手をしている時間はない」


俺はオムニバスチェンジャーの外枠を回転させる。


『UFOマジシャン!フィニッシュ!』


「ふっ!」


俺が手を突き出すとUFOが現れ、ライオンオミナスを拘束する。

そして、俺はジャンプし、キックを放った。


「はあああああああっ!!」


俺のキックはライオンオミナスを貫き、爆散させる。


「グアアアアアッ!!」


爆散したオミナスにカードを当て、力を回収する。


「やっぱりライオンだったか」


俺が振り返ると。


「動くな!動いたらコイツを殺す!」

「人質作戦は相性が悪いよ」


俺が指を鳴らせば、ダークエイドヴァルキリーが人質に取っていた七瀬さんは人形になり、本物の七瀬さんは俺がお姫様抱っこしていた。


「七瀬さん、これ借りるね」


俺は七瀬さんからオムニバスブレードを拝借し、ライオンカードをスキャンし、柄頭を引っ張る。


『ライオン!』

『ライオン!ブースター!』


「はあああああっ!!」


ブレードを振り下ろせば、ライオンのエフェクトがダークエイドヴァルキリーにヒットする。

さらに再びチェンジャーの外枠を回転させる。


『UFOマジシャン!フィニッシュ!』


「はああああっ!!」


キックを放った。


「ぐああっ!!」


ダークエイドヴァルキリーは大きく後退し、膝を着く。


「ここは一旦引くとしよう」


そう言ってダークエイドヴァルキリーは姿を消した。


────────────────────


戦いが終わった後、七瀬さんは再び入院した。

俺はというと、七瀬さんの家に来ていた。


「俺、なります。オムニバスに」


腕に着いたチェンジャーに触れながらそう言う。


「そうか!なら、よろしく頼むよ!エイドバスター君?」

「はい!」


こうして俺はオムニバスになったのだった。

あれ?

なんで薫さん、俺の変身後の名前知ってたんだろ。

ま、いっか!


          To be continue……


────────────────────


次回予告

 「俺は七瀬さんの力になりたい!!」

 「なんなんだお前達は!!」

 「私はあなたを守りたいんです!!」

 「それじゃダメなんです!!」

 「君と一緒なら!!」

 「救済のオムニバス!!」


第7話 すれ違う想い


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