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第5話 闇のオムニバス


莉乃side


「UFO……っ!!」

「キョアアアアア!!」


そんな不快な音を出しながら、私に迫ってくる。

私はブレードにケルベロスカードをスラッシュし、柄頭を引っ張る。


『ケルベロス!』

『ケルベロス!ブースター!』


「はああああっ!!」


ブレードを振り下ろすと、オオカミの3つ首が放たれ、オミナスに噛み付く。

しかし、UFOは光を放ち、それを吸い上げ、無効化してしまった。


「なっ……!?」

「キュキュキュ!!」


オミナスは笑う。


「なるほど、なかなかに面倒ですね……こういう場合1番手取り早いのは、容量を超える攻撃を吸収させることですね……!!」


今あるカードの中で爆発力が強くなりそうな組み合わせといえば。


「これですよね」


『リアクター!』

『ケルベロス!』

『リアクターベロス!』


ケルベロスを感じる衣装に、炎の意匠の入った姿に変わる。

私は外枠を回転させる。


『リアクターベロス!フィニッシュ!』


オミナスの懐に一瞬で潜り込み、炎とオオカミのエフェクトを纏った連続パンチを繰り出す。


「はあああああっ!!」


最後の一撃でオミナスは大きく吹き飛び、爆散した。


「キュルアアアアアアアッ!!」

「ふぅ……」


私はオミナスにカードを触れさせ、力を回収する。


「やはりUFOですか……」


おっと、いけない。

氷室さんのことを忘れていた。

私は急いで氷室さんの元へと戻った。


────────────────────


颯斗side


「お待たせしてしまい、申し訳ありません」


軽く走って戻ってきた七瀬さんがそう言う。


「どこに行ってたの?」


兄さんがそんなことを聞き、七瀬さんは。


「お花摘みです」

「あっ、ごめん……」


気まずそうの視線を逸らした。

七瀬さんは何のことだかわかっていない様子だ。

だが、まぁ、戦ってきたと言わなかったのは褒められる点である。


「そうだ!父さんが七瀬さんに会いたいって言ってたんだ!」

「氷室さんのお父さんが?」

「ああ!」

「俺は父さんのいる場所に2人を案内するために来たってわけだ」

「そうだったんですね」

「じゃあ、早速」

「了解!」


俺たちは父さんのいる場所へと向かった。


────────────────────


父さんが待っていたのは駐車場に停めてあった車の中だった。


「すまないね。このような格好で」

「いえ、別に構いませんが……」

「何の用なのか、それが気になっているのだろう?」

「はい」


父さんは先ほどまでの柔らかい雰囲気から、刑事の雰囲気に変わる。


「莉乃ちゃん、だね?」

「はい」

「すまないね。楽しい文化祭中に呼んでしまって」

「いえ。氷室さんに泣かされて、お昼ご飯を食べていたので問題ありません」

「なんだと!?」

「七瀬さん!?言い方が!」

「何ですか?あんなことをしておいて、責任から逃げるんですか?」

「颯斗!!後で話がある」

「……はい」


どうやらお化け屋敷に連れて行ったことを随分と恨んでいるようだ。

怖いの苦手なの知らなかったのに……


「本題に入ろう。莉乃ちゃん。私のことを覚えているかな?」

「はい。覚えています。私が目を覚ました時に話を聞きに来た刑事さん、ですよね?」

「ああ。その通りだ」


どうやら七瀬さんとは面識があったらしい。


「どのような用件でしょうか?」

「ここで再会したのも何かの縁だ。君の過去、“七瀬家一家心中”を個人的に再捜査したい」

「……何故ですか?あれはもう決着がついたはずです」

「まだ、全てが明らかになったわけじゃない。君の両親が心中をした理由もわかっていない。俺はその理由を突き止めたいと思っている。君は引っかかっていないのか?あれほど仲の良かった両親が何の前触れもなく急に心中するなど」


父の言葉に七瀬さんは少し黙って。


「……今更知ったところで何かが変わることはありません」


七瀬さんはオムニバスチェンジャーにそっと触れながらそう言う。


「確かにそうかもしれないな。いわば、これは私のエゴだ」

「そうですね」


七瀬さんは父さんをじっと見る。


「……理由を知りたくないといえば、嘘になります。ですが、今私は高校生を満喫したいのです」

「だから、私は君に結果だけを伝える。決して君の生活を邪魔することはない」

「……なら、お願いします」

「わかった。どれだけ時間が掛かっても、必ず解明してみせる」

「はい」


七瀬さんと父さんが握手を交わした。


「じゃあ、文化祭に戻りたまえ」

「はい」

「じゃあ、俺も戻るか〜!」


と、俺は父さんに肩を掴まれた。


「どこへ行こうと言うのかね?」

「ム◯カやめろっ!!」


その後、父さんの誤解を解くのに30分ほど要した。


────────────────────


「遅かったですね」


父さんの誤解を解き、ようやく戻ってきた俺を待っていたのは、チョコバナナを口に咥えている七瀬さんだった。


「…………………………」

「なんですか?」

「………別に」

「そうですか」

「よし!もっと回ろう!」

「はい」


俺たちは再び回り始めた。


────────────────────


文化祭も終わったある日。


「美味しい……」

「でしょ?」


俺は七瀬さんの家に来ていた。

というより、純粋に喫茶店として訪れていた。

案外、人気店なのか、結構な頻度でお客さんが来る。


「いらっしゃいませ」

「あ゛ぁ゛!!莉乃ちゃん!!」


1人の女性客が七瀬さんに抱きつく。


「落ち着いてください。富澤さん」


七瀬さんは名前を呼んで、自分から引き剥がす。


「彼女はうちの常連なんだよ」

「そうなんですね」


常連さんまでいるとは。


「それで、今日はどうしたんですか?」

「実はさぁ、頑張って描いた漫画が突き返されたんだよぉ〜!」

「そうなんですか」


七瀬さんはカウンター席に案内していた。


「彼女は漫画家のタマゴなんだよ。まぁ、今のところ、全部突っぱねられてるみたいだけど」

「それでも諦めてないんですね」

「努力は実るからな」


俺が七瀬さんの方を見れば、落とされたと言う漫画を読み、しっかりと批評していた。


────────────────────


第三者side


颯斗は七瀬さんの家を後にし、帰路についていた。


「ちょうどいい」


そんな颯斗見ていた謎の人物はそう言って笑う。


「いけ」

「ヨホホホ!!」


高笑いしたマジシャンオミナスは颯斗に襲いかかった。


────────────────────

莉乃side


「ん?」


カウンターの掃除をしていると、机の上にスマホがあった。


「これは氷室さんのでしょうか?」

「忘れ物だな!莉乃、届けてやってくれ」

「はい」


氷室さんが出てからそこまで時間が経っていない。

徒歩で追いつけるだろう。

私は氷室さんの後を追いかけた。


「………わからない」


そういえば、私、氷室さんの家を知らない。


「追跡しますか」


私はオムニバスチェンジャーにケルベロスカードをスキャンし、外枠を回す。


『ケルベロス!』

『ケルベロス!アビリティ!』


ケルベロスカードは任意の匂いを追跡出来る。

しかも、その匂いを私にだけ視覚化出来る。


「こっちですか」


私は急いで走って行った。


────────────────────


颯斗side


「ホホホホ!!」

「オミナス!?」


帰路についた俺の目の前にオミナスが現れた。

ジリジリと迫ってくるオミナスに恐怖で足がすくんでいると。


「はあああっ!」


七瀬さんがオミナスを生身で蹴り飛ばした。


「七瀬さん!」

「忘れ物を届けに来たんですが、こんなところで遭遇するとは思いませんでした」


七瀬さんは忘れ物のスマホを渡してそう言う。


「氷室さんは下がっていてください」


そう言って莉乃さんはリアクターナイトの組み合わせのカードをスキャンし、外枠を回転させる。


『リアクター!』

『ナイト!』

『灼熱の騎士!リアクターナイト!』


「はあああっ!!」


七瀬さんが斬りかかると、オミナスはポンと煙を出して姿を消した。


「なっ!?」

「ホホホホ!!」


木がつけば木の上にいた。


「ホホホホ!」


オミナスは七瀬さんに飛びかかる。


『クレイドール!』

『ハンマーヘッドシャーク!』

『クレイシャーク!』


「はあああっ!!」


七瀬さんは左手のハンマーでオミナスを地面に叩きつける。

すると大きなクレーターが出来る。


「ホホホホ!」


オミナスは七瀬さんの左手を掴む。

すると、ポンと音を立ててハンマーが花束になった。


「え、あ、すごいですね……」


七瀬さんは思わず感心してしまう。

その隙にオミナスは七瀬さんを蹴り飛ばす。

七瀬さんは少し怯む。


「動きを止める必要がありますね」


七瀬さんはチェンジャーにさらにカードをスキャンし、外枠を回転させる。


『UFO!』

『ナイト!』

『UFOナイト!』


騎士のような風貌に、小さなUFOが幾つかついている姿に変わる。


「ホホホホ!」


七瀬さんはオムニバスブレードにUFOカードをスキャンし、柄頭を引っ張る。


『UFO!』

『UFO!ブースター!』


「はあああっ!」


放たれた斬撃を受けたオミナスはアブダクションされる。


「これで決めます」


七瀬さんは外枠を回転させる。


『UFOナイト!フィニッシュ!』


「はあああっ!!」


七瀬さんは動きを止められたオミナスにスクリューキックを放ち、オミナスを貫通する。


「ホホホホホホホホ!!」


オミナスは爆散した。


「ふぅ……」


七瀬さんはカードにオミナスの力を回収する。


「マジシャン、ですか」

「七瀬s」


俺が七瀬さんに近づくと、七瀬さんは俺を突き飛ばした。

俺は尻餅をつく。

するとその場所に目を覆う仮面をつけた謎の人物が剣を振り下ろしていた。


「ほう。今のを避けるとはな」

「伊達にオムニバスをやっていませんよ」


七瀬さんは睨み合いながら、リアクターナイトフォームにチェンジする。


「何者ですか?」


七瀬さんはオムニバスブレードを構えてそう言う。


「闇のオムニバス。ダークエイドヴァルキリーだ」

「闇の……」

「オムニバス……!?」


空気は一気に張り詰め、緊張感が漂う。


「私の任務はお前達を消すことだ」

「氷室さんは関係ありません」

「いいや。オムニバスを知っている。その時点で消去対象だ」


ダークエイドヴァルキリーは剣を構えた。


────────────────────


第三者side


「「はああああっ!!」」


莉乃とダークエイドヴァルキリーは激突する。


「ふん!!」

「ぐああっ!!」


莉乃は力負けし、吹き飛ばされる。


「その程度か?」

「くっ……!!」


莉乃はクレイドールとケルベロスカードをスキャンし、外枠を回転させる。


『クレイドール!』

『ケルベロス!』

『3つ首の土人形!クレイベロス!』


「面白い。なら、私も見せてやろう」


ダークエイドヴァルキリーはカードをスキャンし、外枠を回転させる。


『ダーククレイドール』

『ダークケルベロス』

『3つ首の暗黒土人形!ダーククレイベロス!』


「なっ……!?」

「行くぞ」


互いにインファイトスタイルでぶつかり合う。


「ぐっ……!!」


莉乃の攻撃は全て防がれ、ダークエイドヴァルキリーの攻撃は全てヒットし、莉乃を吹き飛ばす。


「ぐああああっ!!」

「七瀬さん!!」

「ふん。相手にならないな」

「はぁはぁ……!!」


莉乃はまだ立ち上がる。


「これで終わりだ」


ダークエイドヴァルキリーはチェンジャーを回転する。


『ダーククレイベロス!フィニッシュ!』


「はああああっ!!」


黒いエネルギーを纏った蹴りを莉乃に放った。


「ぐああああっ!!」


莉乃は吹き飛ばされ、そのまま強制変身解除する。


「七瀬さん!!」


颯斗はボロボロになった莉乃に駆け寄る。


「お前から消してやろう」


ダークエイドヴァルキリーはカードをスキャンし、外枠を回転させる。


『ダークリアクター!』

『ダークナイト!』

『灼熱の暗黒騎士!ダークリアクターナイト!』


ダークエイドヴァルキリーはダークオムニバスブレードにダークリアクターカードをスキャンし、柄頭を引く。


『ダークリアクター!』

『ダークリアクター!ダークネスブースター!』


「死ね」


そう言って颯斗に剣を振り下ろす。


『灼熱の騎士!リアクターナイト!』


ダークエイドヴァルキリーに背を向け、颯斗を庇うようにし、変身した莉乃がチェンジャーを回転させ、立ち塞がる。

そして、ダークエイドヴァルキリーはそのまま剣を振り下ろした。


「うあああああっ!!」


莉乃は倒れそうになる


「ぐっ……!!はあああああっ!!」


莉乃は最後の力を振り絞り、ダークエイドヴァルキリーに振り返り様にパンチを放つ。


「なっ!?」


そのパンチでダークエイドヴァルキリーは吹き飛ぶ。

ダークエイドヴァルキリーは立ち上がり、戦おうとする。

しかし、莉乃の拳はダークオムニバスチェンジャーにダメージを与えていた。


「チッ。今回は引いてやろう」


そう言ってダークエイドヴァルキリーは姿を消した。


「うぁ……!」


莉乃は変身が解け、倒れて意識を失う。

その背中には大きな切り傷があった。


「七瀬さん……?」


颯斗は愕然とした表情を浮かべる。


「七瀬さあああああああん!!」


颯斗の悲痛な叫びが木霊した。


          To be continue……


────────────────────


次回予告

 「自分を責めないで?」

 「俺に力があれば……!!」

 「心配しないで、ください……」

 「俺が……俺が守る!!」

 「なんだと……!?」

 「俺はエイドバスターだ!」


第6話 覚醒!2人目のオムニバス!


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