目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第4話 私たちの舞台(ステージ)


颯斗side


「ただいま〜」

「おっ、おかえり。颯斗」

「おかえり〜!」

「ただいま、父さん、母さん」


家に帰れば、母さんは料理をしていた。

さらに、忙しくてあまり家に居ない父がソファーでくつろいでいた。


「父さん、刑事でしょ?こんなところに居ていいの?」

「ああ。今日はちょっとな」

「どういうこと?」


父さんに近づけば、理由がわかった。


「その左手どうしたの!?」

「商店街で怪物に襲われている人を庇ってな」

「怪物……」


オミナスが現れたのか!?


「だが、気がつけば居なくなっていた」

「そうなんだ」


七瀬さんが倒したんだ。


「それで包帯巻いて帰ってきた時はお母さんびっくりしちゃって!」


母さんは皿に料理を盛り付けながら、そう言う。


「仕事はどうするの?」

「しばらく休職だ」

「そっか……」


父さんの言葉を聞いて、俺は思っていたことを聞いてみることにした。


「父さん。刑事の目線で教えて欲しいんだけどさ」

「なんだ?」

「……おしどり夫婦が子供を巻き込んで急に心中する理由ってなんだと思う?」


その言葉に、父さんはピクリと眉を動かした。


「何かあったのか?」

「ちょっと、友達の話が上手く腑に落ちなくて」

「聞かせてみろ。何かありそうなら調べてやる」

「いいの?」

「ああ。休職中だからな。だが、俺1人の捜査になるから時間はかかるが」

「え?」

「友達の話なんだろう?その友達もこの話が広まるのはあまりいい気分がしないだろう」

「それもそうだね。配慮が足りてなかった」

「次からは気をつけろ」

「うん」

「それで?その話はなんだったんだ?」

「その子の両親はおしどり夫婦と呼ばれていたのに、何故かいきなり一家心中を図ったらしいんだ」

「一家心中、か……」


父さんはコーヒーを飲みながら、そう呟く。


「その友達の名は?」

「七瀬さんだよ」


父さんはマグカップを落とした。


「お父さん!?大丈夫!?」

「あ、ああ……颯斗。もしかして、下の名前は莉乃、か?」

「え?そうだけど……なんで知ってるの?」

「知ってるも何も、こっちに引っ越してくる前に俺が担当した事件だ」

「え!?」


俺は衝撃の事実を知ってしまった。


「じゃあ、七瀬夫婦が心中を計画した理由って……」

「わからず終いだった……」


父さんは椅子に座り、頭を抱えてそう言った。


「なぁ、七瀬夫婦のお子さんに合わせてくれないか?」

「合わせるってもねぇ……そうだ!文化祭で紹介するよ!」

「本当か!?」

「約束する!」

「わかった。俺も莉乃ちゃんの意向を聞いて再捜査出来るように準備しておこう」


────────────────────


「似合ってる〜!!」


文化祭の準備を始めて3日。

白雪姫の衣装が出来たらしく、七瀬さんはそれを着せられていた。


「そ、そうでしょうか……」


男子全員が鼻の下を伸ばしていた。


「あの、氷室さん」

「ん?なんだ?」

「似合って、ますか?」

「ああ。すごく良く似合ってる。本当の白雪姫みたいだ」

「……っ!あ、ありがとうございます」


七瀬さんはそう言って稽古に戻った。


「意外だな〜!」

「何が?」

「もう少し動揺すると思ってたんだけどな」

「衣装で動揺するわけないだろ?」

「はいはい。さいですかさいですか」


公人は呆れたように言ってくる。


「なんだよ」

「別に?さ、練習練習!」


────────────────────

そして、迎えた文化祭当日。


「俺たち1番で大丈夫かな……」

「でも、そのあとは自由だし、案外1番でよかったかも!」


俺たちの劇はスタートダッシュを飾るものだった。


「さぁ、みんな!気合い入れていくぞ!」

「「「おぉ〜!」」」

「お、おぉ〜……」


七瀬さんは恥ずかしいのか、少し照れながらやっていた。


「それでは、2年3組の劇“白雪姫”です!」


ここからはダイジェストでお送りしよう。


「カガミよカガミ、この世で一番美しいのは誰?」

「山を越えたその向こう、七人の小人の家にいる白雪姫です」


「美しい娘さんに、おくり物だよ」

「まあ、何てきれいなリンゴ。おばあさん、ありがとう」


「何てきれいな姫なんだ。まるで眠っているようだ」


ラストのキスシーンは暗転し、ナレーションが入ることで寸止めで終わることが出来た。


「めでたしめでたし!」


撃破終わると同時に拍手が巻き起こる。

その拍手を聞いて、隣に立っていた七瀬さんもホッと息を吐いていた。


────────────────────


「大成功してよかったね〜!」


教室へと帰還した俺たちは口々に感想を言い合う。


「ホントに七瀬さんの演技上手だった!」

「ね〜!」

「あ、ありがとうございます」


褒められ慣れていないのか、コップに入ったジュースをちびちびと飲みながら、頬を赤らめている。

感情が表情に出にくいだけなんだな……


「颯斗、なんでラストシーンキスしなかったんだよ」

「いやいや、するわけないだろ?ファーストキスってのは大事な人にとっておくものだ」

「せっかくのキス出来る機会を逃しても良かったのか?俺なら絶対やってるわ」

「お前、後でしばかれて来い」


すると先生が入ってくる。


「よし!お前ら良くやった!演劇は大成功に終わったな!俺たちのやるべきことはこれで以上だ!後は好きなように文化祭を楽しんでくれ!」

「「「はい!」」」


そうして自由時間が始める。

クラスの面々は誰と文化祭を回るか決めていたらしく、次々と教室を後にしていく。

そんな中、七瀬さんも教室を後にしようとしていた。


「七瀬さん!」


俺はそんな彼女を呼び止めた。


「はい?なんでしょうか?」

「誰かと回る予定でもあるの?」

「いえ。特にはないのでおじさんとおばさんを探そうかと」

「七瀬さん、あの……」

「なんでしょうか?」


やばい……っ!!

心臓がうるさい……っ!!

落ち着け俺……っ!!


「よ、よければなんだけど!い、いい、一緒に文化祭回らない!?」


勇気を出して俺はそう誘った。

俺の言葉に七瀬さんは目を丸くしていた。


「私なんかでいいんですか?」

「七瀬さんだからいいんだ!」


俺の言葉に七瀬さんは視線を逸らして。


「よろしくお願いします……」


頬を赤らめながらそう言った。


「じゃあ、行こう、か……?」


俺と七瀬さんが教室の入り口の方に目をやると。


「お、おじさんにおばさん!?」

「これは早くも孫の顔が見られるかもしれないな」

「そうね!」

「つ、付き合ってないですって!!」

「あら?さっきのは告白じゃないの?“七瀬さんだからいいんだ!”っていうのは!」

「ち、違いますよ!」

「ま、俺たちはここで退散するとしよう」


ひとしきり揶揄われた後、2人は去っていった。


「おじさんとおばさんがすみません……」

「いやいや。気にしないで?じゃあ、俺たちも行こうか!」

「はい」


俺たちは文化祭を回り始めた。

────────────────────

まず最初に向かったのは。


「ここは?」

「まぁまぁ!入ってみようよ!」


何もわかっていない七瀬さんと一緒にかなりクオリティが高いと噂のお化け屋敷に入ることにした。


「きゃああっ!」


いつもオミナス相手に飄々と戦っている七瀬さんは鳴りを顰め、今はただのお化け屋敷に怖がる女の子だ。


「……っ!?」


俺は違う意味で心臓がバクバクしている。

本人は無意識だろうが、七瀬さんが俺の腕に抱きついている。


「こ、こうなったら……」


何をするのかと七瀬さんの方を見る。

その手にはアビリティカードが2枚握られていた。

なるほど!

変身するのか!

……変身っ!?

俺は一度視線を逸らし、二度見した。


「ちょいちょい!七瀬さん!ダメだって!オムニバスは秘密なんでしょ!?」

「だ、だってぇ……」


普段の凛々しい敬語が崩れ、半泣きになって俺を上目遣いで見てくる。

破壊力エグい……っ!!

これはダメだ。

俺は七瀬さんの手を引いてお化け屋敷をゴールした。


「ごめん!ここまで怖がるとは思わなくて……」


両手を合わせて謝罪する。


「氷室さん、意地悪、です……」


制服の裾で涙を拭きながら、七瀬さんは頰を膨らませてそう言う。

そんなことをしても可愛いだけだぞ、と言いたいが、それを言ってしまえばやってくれなくなりそうなので黙っておく。

すると、グゥ〜とお腹の虫が鳴る。


「〜〜〜〜っ!!」


七瀬さんは声にならない悲鳴を上げ、顔を真っ赤にしていた。


「ふふっ!」

「これは生理現象です!」

「ちょうどお昼頃だし、ご飯を探しに行こうか」

「はい」


俺は七瀬さんとも昼食へと向かった。


────────────────────


現在、目の前には唐揚げやらたこ焼きやら焼きそばをガツガツと喰らい、頬袋を作っている七瀬さんがいた。

かなり豪快な食べっぷりだ。


「美味しい?」


俺の問いに気づいたのか、口の中のものを一生懸命に飲み込んで。


「美味しいです」


普段と変わらぬ様子でそう言った。

だが、なんとなくだが、彼女の頭の周辺にポワポワと花が浮かんでいるように見えた。


「ああ〜、可愛いな〜……」

「え!?」


俺が発したわけではない言葉に驚き、振り返れば。


「兄さん!」


そこには俺の兄、隆二がいた。


「颯斗〜?俺が研究室で寝泊まりしてる間に彼女捕まえたのか〜?」


兄さんは肩を組んでそう言ってくる。


「え!?あ、いや、その……」


七瀬さんも困っているような反応をする。


「違うよ。七瀬さんとは友達なだけだ」

「そうなのか〜!じゃあ、俺が貰っていい?」

「死ぬ覚悟があるなら」

「我が弟ながら強烈だねぇ?」

「兄さんが悪いんだろ」


見てわかる通り、俺に兄はチャラい。

だが、大学生としてはめちゃくちゃ優秀なのが腹が立つ。


「ええっと……」


七瀬さんは現在進行形で困っていた。


「ああ、このチャラいのは俺の兄の」

「隆二で〜す!よろしくね、かわいこちゃん」

「七瀬 莉乃です。よろしくお願いします」


兄のかわいこちゃん呼ぶをスルーして、七瀬さんは自己紹介していた。

すると、兄さんは七瀬さんに背を向けるように肩を組んでくる。


「え、あの子あんなにクールなの!?」

「どっちかって言うとシャイなだけが気がするけど……」

「俺に対してめっちゃ冷たくなかった!?」

「どう考えてもうざいからだろ」

「………………………………………」


兄が黙り込んでしまった。

七瀬さんの方を見れば、小さく“ごちそうさまでした”と呟き、3人前を完食していた。

あまりの暴食ぶりに、兄の顔も引き攣っていた。

そんな時だった。

七瀬さんの携帯が鳴った。


「ガラケー!?」


兄がツッコむがそんなものは無視している。


「はい。もしもし。……はい。わかりました。すぐに向かいます」


七瀬さん立ち上がり、水を飲み干す。


「すみません。急用ができました」

「ああ。行ってらっしゃい」


俺は七瀬さんを見送った。


────────────────────


莉乃side


おばさんからの情報によると、学校の裏庭の方で出現したとのこと。


「グオオオオッ!!」


オミナスは目に映るものを破壊していた。


「はああっ!!」


私はとりあえず飛び蹴りを喰らわせる。


「グアアアッ!」

「これで行きましょう」


私はクレイドールカードとナイトカードをチェンジャーにスキャンする。


『クレイドール!』

『ナイト!』


「オムニバスチェンジ」


そう言ってチェンジャーの外枠を回した。


『クレイナイト!』


古代的な服に騎士の鎧が一部装着される。


「はあああっ!!」


お手なみ拝見と言わんばかりに、斬撃を飛ばす。

しかし、オミナスは攻撃がヒットしても無傷だった。


「硬い……!!」

「グオオオオオッ!!」


オミナスは私に襲いかかってくる。

そして、その拳が私にヒットする。

すると、私はバリーンという音を立てて、砕け散る。

その破片はすぐさま、背後に移動し、再び私を形作る。

これがクレイドールカードの効果だ。

攻撃を受けても自身を砕くことで、ダメージを軽減できるものだ。


「硬いなら、これでどうでしょう」


私はリアクターカードとハンマーヘッドシャークカードをスキャンし、外枠を回転させる。


『リアクター!』

『ハンマーヘッドシャーク!』

『リアクターシャーク!』


左手はハンマーになっていた。


「なるほど、こういうタイプですか」


私はハンマーを撫でながらそう言う。


「グオオオオオッ!!」


背後から飛びかかってきたオミナスを振り向き様にハンマーで殴り飛ばす。


「グオオッ!?」


オミナスは地面を転がる。


「はあああっ!!」


私はオミナスに飛びかかり、同じ場所を何度も殴りつける。


「グオオオッ!!」


そして、バリーンという音ともに、殴り続けた場所が砕け散る。

私はそれを見てリアクターナイトフォームにチェンジする。


『灼熱の騎士!リアクターナイト!』


「これで決めます」


私は外枠を回転させる。


『リアクターナイト!フィニッシュ!』


炎を纏った蹴りでオミナスを貫いた。


「グオオオッ!!」


そして、オミナスは爆散した。

私はカードを触れさせ、力を回収する。


「ジュエル、ですか」


と、そんな時だった。

奇々怪々な鳴き声が響く。


「まさか……!?」


振り返れば、2体目がいた。


「なるほど。今度は随分とわかりやすいですね」


その敵は円盤状の体を持っていた。


「UFO……っ!!」


私はオムニバスブレード握った。


                       To be continue……


────────────────────


次回予告

 「お願いします」

 「私のことを覚えているかな?」

 「わかった」

 「お前から消してやろう」

 「七瀬さあああああああん!!」

 「ダークエイドヴァルキリーだ」


第5話 生徒会長の苦悩、闇のオムニバス


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?