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第3話 文化祭への準備


颯斗side


俺は七瀬さんと共に生徒会室に来ていた。

既に俺以外の生徒会メンバーは揃っていた。


「遅いぞ、颯斗!って七瀬さん!?」

「おはようございます。久我さんも生徒会の方だったんですね」

「え?あ、ああ……」


すると公人は俺の肩に腕を回し、七瀬さんに背を向ける。


「おい、颯斗。どういうことだよ?」

「七瀬さんが一緒に行きたいっていうから連れてきただけだぞ?」

「お前、なんでそんなに七瀬さんと仲良いんだよ!」

「仲良い、ねぇ?」


やっぱりそう見えるだろうか。

確かに、薫さんと満さん以外で最も仲が良い自信がある。

向こうは“友達”って感じて来ているが、俺からしたら“危なっかしいから守らないといけない子”という印象の方が強い。


「何を話しているんですか?」

「なんでもない。ちょっとした世間話だ」

「そうですか?」


七瀬さんは小首を傾げる。

なんでそんなにいちいち挙動が可愛いんだよっ!!


「そろそろ始めないと時間がないわよ?せっかく七瀬さんもいるんだしね」

「ああ。あれ?俺、美香に七瀬さんのこと紹介したっけ?」

「昨日の朝、ここに来る前に会ったのよ」

「その通りです。職員室の場所を教えてもらいました」

「そうだったのか」


意外だな。


「今、“意外だな”って思ったでしょ?」

「えっ!?」


冷や汗が滲む。


「別に人と関わることが嫌なわけじゃないわよ」

「さ、さいですか」


すると公人が七瀬さんに小さな声で。


「美香は“冷血姫”って呼ばれてるんだ。人とほとんど関わらないからな」

「そうなんですね」


すると、公人の隣の壁にハサミが突き刺さった。


「そこ!七瀬さんに何不要なことを教えているのかしら?」

「いやいや…これはちょっと良くないんじゃないかな?」

「お黙りなさい」

「この暴力女め」


公人の聞こえるか聞こえないかの声で言ったそんな小言も美香は聞き逃さない。


「なんですって?」

「す、すいませんでした!!」


公人は速攻で謝っていた。


「みなさん仲が良いんですね?」

「まぁ、幼馴染だしな」

「そうなんですね」


特に感情の起伏もなく、そう言って来る。

どう言う心境なのそれぇ!?


「全く…始めるわよ」


そうして、文化祭に向けての話し合いが始まった。


────────────────────


「早速、今回決めなければならないものは3つ。1つ目は以前募集したスローガンの中から今回の文化祭に相応しいものを選定する。2つ目は各クラスに配布する文化祭の出し物に関する規定が書かれたしおりの作成。そして、3つ目が、生徒会で行うべき文化祭の細かな配慮についての話し合いだ」

「オーケー!」

「しおりに関しては印刷できてるからあとはホチキスで止めるだけよ」

「では、私はその仕事をさせていただきます」

「ありがとう。ページ番号は振ってあるからその通りにお願い」

「はい。お任せください」


そう言って七瀬さんは作業に取り掛かった。


「じゃあ、俺たちはスローガンを決めるとしよう」


俺はスローガンの候補が書かれた紙の入っている箱をひっくり返す。


「うわっ!結構あるなぁ……」

「だよな」

「文化祭、ここまで人気とは思わなかったわ」

「だな」

「よし!全部見ていくぞ!!」

「随分とやる気じゃない」

「まぁな」

「どうしたんだよ?」

「別に?何もないぞ」

「それにしては浮き足立ってると思うんだけどな」


公人にそう言われて、思わず手が止まる。


「お?図星か?」

「ああ〜……なるほどねぇ?」


2人がニマニマして俺を見てくる。


「なんだよ」

「別に〜ぃ?」

「なんでもないわよ〜ぉ?」


ちょっち腹が立つ。

まぁ、いい。

そんなやりとりを聞いてか、七瀬さんがこちらを不思議そうに見ていた。


「と、とりあえず決めるぞ!」

「「はいはい」」


────────────────────


「さて、今日から文化祭に向けての準備が始まる。なので、今日から文化祭までの間、授業はないぞ」

「「「よっしゃあああっ!!」」」


教室は歓喜の声でいっぱいになる。


「だが、まず、うちのクラスの出し物は決まっていない。だから、まず、何をするかを決めてから準備に取り掛かるぞ〜!」

「「「はい!」」」


それから話し合いが始まる。


「何が良い?」


文化祭実行委員が前に出て、クラスをとりまとめる。

とは言っても、高校生がはしゃがないわけがない。

みんなが口々に言って何ひとつ決まらない。


「おいおい……どうすんだよ」

「実行委員も困ってるみたいだしな……」


俺が一喝するか。

そう思った時、隣から、バァン!という音が聞こえた。

その音で教室が静まり返る。


「みなさん、落ち着いてください。文化祭というものが楽しみなのは良くわかります。私だって初めて参加しますかあウキウキです。ですが、実行委員の方が困っているではありませんか。はしゃぐのは後にして、今やるべきことを見落とさないでください。以上です」


そう言って席に着いた。

すると、今度は実行委員を含めた全員が七瀬さんのことをニヤニヤとした表情で見る。


「な、なんですか?」

「「「七瀬さん可愛い〜!!」」」

「へ?な、なんでそんなところに帰着するのですか!?理解不能です!」


七瀬さんはかなり動揺していた。


「よし!改めて、文化祭、出し物を決めるぞ〜!」


クラスが一丸となった。

そのことに先生は随分と驚いていた。

結局、クラスで話し合った結果、“演劇”に決まった。

題目は王道の“白雪姫”になった。


「じゃあ、誰が白雪姫役をやるかだけど……」


これは争奪戦になるんじゃ……

と、思っていたのだが。


「満場一致で七瀬さんになりました〜!」

「え?わ、私ですか?」


七瀬さんは困惑していた。


「私よりもっと相応しい方がいらっしゃると思うのですが……」


するとクラスでも人気の高い女子の宮田が七瀬さんに近づき。


「七瀬さんが初めてだっていうから、その最初の思い出をすっごく良いものにして欲しいの!だから、主役がいいと思ったんだけど……いや、だったかな?」

「そういうわけでは……」

「じゃあ決まりだね!」

「わかりました。やるからには必ず成功させましょう」

「もちろん!」

「じゃあ王子役は……」

「っしゃあ!燃えてきた〜っ!!」

「じゃんけんだな!!」


次は王子役か。

公人くらいがいいかな。

俺は小人役にでも……


「七瀬さん、王子役のご指名はある?」

「では、氷室さんでお願いします」

「「「えっ!?」」」


何の迷いもなく言ったことで教室がザワつく。


「えっ、な、七瀬さんって会長と付き合ってるの!?」

「いえ、お付き合いはしていません。ですが、秘密を共有する中ではあります」

「ちょっと!?」

「何か間違ってますか?」

「いや、間違ってないんだけどね!?」

「七瀬さん!変なことされてない!?」

「おい、宮田!俺が変なことをするわけないだろ!」


すると七瀬さんがさらに爆弾を落とす。


「そうですね……変わったことと言えば、今朝、少し運動した後、教室で着替えていたら、その時、下着姿を見られましたね。私の貧相な体は見るに耐えなかったのか、目を背けていましたけど」


すると宮田が七瀬さんを抱き寄せ、他の女子が守りに入る。


「会長……覗きは良くないですよ」

「はぁ!?」

「こんなにも純粋な七瀬さんの着替えを覗くなんて!!」


女子から敵視される。

さらには。


「颯斗!お前なんてうらやま…じゃなくてけしからんことを!」


男子からも敵意を向けられていた。


「お前ズルいって!」

「おい、本音漏れてるぞ」

「ヤベッ」


本音を漏らした奴はおそらく処刑されるだろう。


「ホントにあんなやつでいいの!?」

「え?ええ、この中では氷室さんとは1番仲が良いと思いますから。それに今朝の一件も教室で着替えていた私に非がありますので、氷室さんを責め立てないでください」


そんな七瀬さんの言葉に、その場にいた全員が思ったことだろう。

“この子、天使かよ”と。


「じゃあ、連絡する手段がないと色々と不便だろうから、LINE交換しよ!」


宮田はスマホを取り出してそう言う。


「あっ」


俺はこれからどういう展開になるのか大体想像が着いた。


「そんな機能は無いと思うんですが……」

「そんなわけないじゃ〜ん!ほれ!見せてみ?」


宮田に言われた、七瀬さんは愛用している黒色のガラケーを取り出した。


「「「えっ?」」」

「七瀬、お前この時代にガラケーなのか……!?」

「え?何か問題があるんですか?」

「いや、別に問題はないんだが……」


先生も絶句してるし……


「携帯なんて連絡できればそれで良いので。それに連絡する相手もまだ3人しか居ません」


七瀬さんはそう言って、連絡先の画面を出す。


「………ねぇ、なんで会長の電話番号が入ってるの?」

「これは昨日うちに来た時に教えてもらったんですよ」


その発言にクラスが再び凍りつく。

さらには公人まで雰囲気を変える。


「おい、颯斗。昨日、生徒会の仕事をほっぽり出してどうしたのかと思ったが……まさか、七瀬さんの家に行っていたんじゃないだろなぁ!?」

「そ、そんなこと……」

「氷室さん、なぜ嘘を吐くんですか?昨日、生徒会の方々に連絡を入れてうちに来たじゃないですか」

「なぁ!?」


最悪だ。

七瀬さんの悪意のない口撃が俺に尽くクリーンヒットしてくるぜ……!!


「颯斗!昨日、七瀬さんの家に行って何をした!!ナニをしたんだ!!」

「何もしてねえし、ナニもするわけねぇだろうが!!」

「??????」


七瀬さんは何を言っているのかわからないと言った表情だ。


「七瀬さんは知らなくていいの」

「そうなんですか?」

「うん」


う〜ん、この。

なんで俺が悪者になっていくんだ?

そんなに王子役への恨みやら、連絡先の恨みが強いのか?

結局、七瀬さんは全員と連絡先を交換するのはしんどいと言うことで宮田と公人の連絡先だけを交換した。


「ありがとうございます」

「こっちこそ、交換してくれて嬉しいよ!」


宮田、すごく良いやつなんだけどなぁ……

俺はしばらく、クラスから敵対視されることになった。

────────────────────


莉乃side


「ただいま」

「おかえり〜!」


おばさんが私を抱きしめてくれる。


「今日はどうだった?」

「すごく楽しかった」

「よかったな!」


おじさんがそう言ってくる。


「それに、文化祭の劇、白雪姫の役をやることになったの」

「そうかそうか!絶対見に行かなきゃな!」

「私、頑張る」

「おう!がんばれ!」


そんな会話をしているとお客さんが入ってくる。


「いらっしゃい…って、伊達さん?大丈夫ですか?」


常連の伊達さんは走ってきたらしく、息を切らしていた。


「どうしたんですか?」

「商店街に怪物が出て……!!」


おばさんは慌てて確認しにいく。


「莉乃ちゃん。間違いないわ」

「わかりました。私、行ってきます」

「ああ」


私はすぐさまバイクに乗り、現場へと急いだ。


────────────────────


第三者side


「壊してやる!!」


莉乃が商店街に到着すると、ハンマーヘッドシャークオミナスが暴れていた。

人々が逃げ、残っていないことを確認する。


「これ以上の狼藉は許しません。あなたを救済して差し上げます」


そう言って莉乃はリアクターカードとナイトカードをチェンジャーに読み込ませる。


『リアクター!』

『ナイト!』


「オムニバスチェンジ」


オムニバスチェンジャーの外枠を回転させる。


『灼熱の騎士!リアクターナイト!』


莉乃はオムニバスへと変身した。


「はああああっ!!」


オムニバスブレードを携え、オミナスに斬りかかる。


「ウラアアアアッ!!」


オミナスは容易く、攻撃を受け止め、弾き返す。


「くっ……!!」


莉乃は一旦距離を取る。


「使ってみますか」


そう言ってチェンジャーにリアクターカードとスパイダーカードを読み込ませる。


『リアクター!』

『スパイダー!』


オムニバスチェンジャーの外枠を回転させる。


『リアクタースパイダー!』


蜘蛛のような造形に衣装に炎のエフェクトが入った姿に変わる。


「はあああっ!!」


両手を突き出して、糸を発射する。

しかし、リアクターの熱によって糸が燃え尽きる。


「えぇ……この2枚は相性が悪いですね……」

「グオオオオオッ!!」


オミナスが地面を叩くと、巨大なハンマーヘッドシャークが現れ、莉乃に激突した。


「ぐああっ!!」


莉乃は地面を転がる。


「仕方ありません。確実な方にしましょう」


そう言って立ち上がり、チェンジャーにクレイドールカードとケルベロスカードを読み込ませ、外枠を回転させる。


『クレイドール!』

『ケルベロス!』

『3つ首の土人形!クレイベロス!』


古代的な服にケルベロスの意匠が盛り込まれた姿へと変わる。


「さぁ、参ります」


莉乃は野生的なポーズを取る。


「はあああっ!!」


そのまま大地を駆け抜け、一気にオミナスの元へと辿り着き、膝蹴りを顔面に喰らわせる。


「グアアアッ!!」

「はあっ!!」


さらには後ろ足で蹴り上げる。

オミナスはアーケードタイプである商店街の天井を貫通する。

莉乃はチェンジャーを再び回転させる。


『クレイベロス!フィニッシュ!』


「はあああっ!!」


莉乃が上空に拳を掲げると、オオカミの頭部のエネルギー態が3回、オミナスを噛み砕いた。


「グアアアアアッ!!」


オミナスは爆散し、地面に落下した。

莉乃はオミナスに近づき、カードを翳す。

すると、ハンマーヘッドシャークの力が回収され、元の人間に戻る。


「宮田さん!?」


莉乃は変身を解除し、彼女を抱き上げる。


「……っん、う〜ん」

「気がつきましたか?」

「七瀬さん?」

「倒れていたのでびっくりしました」

「心配かけてごめんね!もう大丈夫だから!」


そう言って宮田は立ち上がる。


「それならよかったです」

「今度、家に行っても良い?」

「構いませんよ」

「やったね!じゃあね!」

「はい。また学校で」


宮田はそう言って去っていた。

そんな莉乃の様子を木の上から見つめる者がいた。


「あれが、オムニバス…エイドバルキリー、か。実に面白そうだ」


その者は“オムニバスチェンジャー”に似たものを装着していた。


           To be continue……


────────────────────


次回予告

 「意外だな〜!」

 「似合ってる〜!!」

 「意地悪、です……」

 「美味しいです」

 「え!?あ、いや、その……」

 「七瀬さん、あの……」


第4話 私たちの舞台ステージ


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