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第30話 関わっている者は数少ないのですね


「はい、わたくしですわ」

「「「そんな出方があるかーー!!」」」

「姉ちゃんはまだこっちの世界に慣れてないから」


 わたくしが電話に出ると三人とも何故か「おかしいでしょ!」と声をあげる。

 なぜか全員にツッコミというやつを入れられました。涼太がフォローをしてくれましたが、それはそれで納得がいきませんわね。


「どうしたんだ? 騒がしいけど」

「いえ……なんでもありませんわ。それでどうかなさいましたか?」

「なになにー?」


 何故か群がってくる才原さんと佐藤さんを追い払ってから若杉警部と話を続けます。


「ああ、君に頼まれていた調査結果報告ってところだな。あの日、飛び降りた時間だけど、君が指定した人物にアリバイがあったかどうかだ」

「ありがとうございます。さすが、早かったですわね」

「ちょっと、わたし達にも聞かせてよ。この件に関してでしょ?」

「ふむ」


 肩越しに口を尖らせた才原さんが登場し、通話を聞かせろと言ってきました。まあまあ勘はいいですわねと、少し考えたのち、わたくしは涼太に声をかけます。


「涼太、『すぴいかあ』のやり方を教えなさいな」

「知らないのー!?」


 佐藤さんが珍しくぎょっとした顔で大声を上げていました。知らないものはしりませんもの。


「――すみません、お騒がせしました。どうぞ」

「あー、うん……。そこの居るのは、例の三人?」

「ええ。それと弟が一人」

「オッケー、いいんだね?」

「はい」


 わたくしがはっきりと意思を示すと若杉警部は『分かった』と続きを語り始めました。


「アリバイについて、まず一番はっきりしないのは里中さん。彼女は飛び降りた時間、家には居なかったようだ。それは母親から聞いている」

「母親……。どこに居たかは?」

「それはわからないそうだ」

「あの時、迎えに来なかったけど……」

「それは後で。次、お願いします」

「ああ」


 そして次に海原先生、次に三人、そして――


「校長先生はあの日、家には居なかったそうだよ」

「……そうですか」


 海原先生は三人組と会っていたことを説明しており、その三人も先ほどわたくしからも聞いたので整合性が取れる。

 と、なるとわたくしに関わってくる人物で怪しいのは里中さんと校長の二人になりましたわね。


「まさか委員長が……?」

「あの子、わたし達が言うのもなんだけどそういうことをするかな?」

「……さあ、それはわかりませんよ? あなた方が不良と言われて忌み嫌われているように、彼女にもなにか闇があるかもしれませんよ?」

「怖い怖い。校長は……どうなんだろ」

「怪しいよねえ。先生は全員やばい気がするしー?」


 そんな推測を三人組が始めたので、最後に若杉警部へ確認します。


「今の話は間違いありませんね?」

「ああ。ウチの奥さんと部活動の生徒。それと、部下に調べさせたからね。他にも数人、怪しい人物をピックアップしているけど?」

「いえ、これで十分ですわ。後は、どうやって犯人を炙り出すかにシフトするだけですので」

「その時は必ず連絡をしてくれよ?」

「いやいや、警察の人がそれで済ませちゃダメでしょ」


 若杉警部があっさりとわたくしがやろうとしていることを肯定したので、田中さんが正論を呟く。


「向こうの世界だとこういうことは割とありますし、自分で解決するのは吝かじゃありませんわよ」

「情報を教えていいの?」

「……こっちとしても『あたり』がつくのはありがたいからね。事情聴取のウインウインってやつさ。神崎さんより俺達が先に犯人を見つければいいだけだし」

「すご。普通の刑事さんのやることじゃないわ、それ……」

「冒険者だとこれくらいはやるんですけどねえ」

「姉ちゃんの世界と一緒にしちゃダメだって」


 というわけでギブアンドテイクな情報交換は滞りなく終了。他にも首謀者が居そうですがまずは怪しいこの三人をピックアップしておきましょうか。

 通話を切ると、才原さんが背伸びをしながらわたくしに視線を合わせて口を開く。


「これで一旦話は終了、ってことかな」

「そうですわね。少なくともわたくしの周囲であの時間、アリバイが無いのは二人。海原先生とあなた方は邂逅しているようですが、その時間、単独行動をしているのでアリバイが無いのと実はあまり変わらないことをお忘れなく」

「確かに。だけど私達は助けた側だけど?」


 田中さんはしっかりとした口調でわたくしと目を合わせます。


「武道家がいじめに加担するわけないわよねー。莉愛ちゃん」

「ふふん、まあね」

「フッ」

「なにがおかしいのよ?」

「恐らく、これはいじめが原因ではありませんわ。そんなことで誘拐をしますか? 道路へ突き飛ばされたりするでしょうか? そもそも、飛び降りたのではなく落とされたのなら?」


 そう言うと三人は苦い顔で顔を見合わせて息を飲む。女子高生が何者かに『狙われている』なんて考えたくありませんものね?


「それで。今後はわたし達がレミコ、あんたの周囲を調べる」

「美子ちゃんは餌としてこれまで通り動くのねー?」

「警察がバックに居るから大丈夫……。大丈夫……なの?」

「そこは、わたくしにはこういうのがありますから」


 そこで先ほど見せようとした魔法を一通り発動して戦う準備はできていることを告げる。


「すご……。手品じゃないんだよね……」

「ええ。後は格闘技も少し嗜んでおりまして」

「へえ、面白いわね。後でちょっとやらない?」

「いやいや、その前にレミっちの世界の話を聞こうよ! いや、ほんと凄いってぇ!」

「いや、順応性高いなこの人たち!?」


 涼太も大概だと思いますがね。

 さて、もう少し遊んでから家へ帰りましょうか。次の登校から楽しみですわね――

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