「やっぱり見込みがあるなぁ」
「予想を上回る
えっ。
なにこの反応。
ちなみに上記は、僕らが仲良く警察所有の特殊施設〈コラージュ〉に向かい、(豆腐のような家と高い壁と有刺鉄線といういかにも怪しげな施設である)、さっそく変な実験室に通されて、頭に変な機械を被されて、濁都、から次の僕のコメントである。ちなみに濁都は「予想計算通り」とのコメントをもらっていた。
「おい、その"
こらえきれなくなって濁都が訊ねる。僕は重い機械をちょうど脱いだところであった。
問いには大友刑事が答えた。
「神の声を聞いたり、共振する才能だ。それを
――って、だめじゃんっ!
とセルフツッコミする僕に、大友刑事が「悪いことばかりではない、」と注釈を入れてくれる。
「どうも近頃の不審な事件は例の黒い電波塔から発信される電波のせい、……でもあると"俺"の研究により特定できた。
――ちなみに"俺"は訳あってお前と同じく
とさらに続けて説明してくれる。
そうか、大友刑事も
とにかく、
「これは……」
「そ、測定不能……やねぇ……」
まじかよ僕の幼馴染超主人公じゃん。
しっぽも耳もしまい方が分からないのでしまい忘れたままぽかんとしている、未だ現状を把握できていない
■■
「まあそういうわけや。聞いての通り、ウチらが扱うんは
「……それは食事中にする話じゃねぇだろ」
説明を終えた昼永さんに、文句を言いたくなったのは濁都だけではなかったろう。と思ったけれども、大友刑事とのどかは普通に食事を続けている。ガツガツと。
場所は同じく〈コラージュ〉。食堂。
昼永さんの話というのは、まあ今回追っている事件についての持っている情報である。どうしてあの時、あの黒い電波塔の近くにいたのか。もちろん
そこで。
「――おい」
大友刑事が、ぎょろりと、不機嫌そうに言葉を挟んだ。
「I団じゃないだろう。正式名称で言え。正式名称で」
どういうことだろうと昼永さんを見ると、露骨に目を泳がせている。
「え、え~?なんでなん?そんな必要ない思うけどなぁ?ええやんこれで――」
「きちんと言え、I団ではなく、い――」
「うわーっ!いややー!篤弘はんの口からその言葉聞きとうなぃーっ!!」
「"俺"は正式名称を好むようだ。I団ではなく〈逝け逝けレッツGO!団〉と」
「ぎゃぁぁあ――っ!!」
昼永さんが椅子から転げ落ちた。食事中に下品である。
濁都は吹き出しかけて咳払いで誤魔化し、のどかは笑いどころが分からず首を傾げていた。うん。さすがそれでこそ僕らののどかだ。
「で、その〈逝け逝けレッツGO!団〉が今回の事件の犯人で間違いないんですね?」
僕が素知らぬ顔で話を続けて念を押すと、昼永さんが地面にうずくまって頭を抱えた。どうやらダサいネーミングに弱いらしい。
大友刑事が答える。
「ああ。逃げ延びて警察に駆け込んだ被害者が咄嗟に爪で犯人の皮膚を引っ掻いた。そこから鑑定ができてな」
「はいはーい!」
「なんだ。"俺"は質問を許す」
のどかが口に入れたものをやっと飲み込んで訊ねた。
「なんで鑑定でそこまで分かるの?コーアンがマークってやつ?」
ありうる話だ、と僕は思った。さすがに情報面だと警察には叶わない。警察の公安リストに載っているデータと合致した可能性も無きしにもあらずだ。今時の警察がどこまでのデータを持っているのかは知らないが……。
しかし濁都は深く考え込むような顔をしていた。
それから、僕に耳打ちして、「これは
大友刑事はその会話が聞こえていたのかいないのか、表情を変えないまま、
「今はまだ詳細について話せない、と"俺"は下している」
と淡々と告げた。
大友刑事が腕時計を確認する。僕は携帯を確認した。朝の七時。すっかり朝食になってしまった。
「もう一時間もすればアジトの場所も出るだろうと"俺"は推測している。そうしたら出発する。仮眠をとっておけ」
はい。はーい!おう。と、僕ら子供陣から三者三様の返事がきた。
一応十八である僕とのどかは、無断外泊をしてもあまり目くじらは立てられない。濁都は……何歳なんだろう。まあ不良だから、無断外泊くらい今更かもしれない。
僕らがいそいそと仮眠室に向かおうとしていると、その背に、昼永さんが声をかけた。
「せや、気ぃつけぇ。
僕は一瞬振り向いた。
その一瞬、大友刑事の苦々しい顔が映った気がした。