「さて! 施設のことは一通り説明したけど、何か質問はあるかい?」
三神は一通り説明し終えると、興奮気味に二人に問いかけた。彼の表情には期待感が満ち溢れており、早く何か質問されて説明を続けたくてたまらない様子だ。
「じゃあ私、質問いいですか?」
「もちろん! なんでも聞きたまえ!」
姫凪乃が手を軽く挙げた。三神は声を張り上げ、さらに興奮を抑えきれない様子で答えた。
「アビリティは今、主に戦闘で使われていますけど、もっと他のことにも使えるはずですよね? 例えば環境保全とか、エネルギー供給とか……?」
「おぉ! さすがだ! それに気づくとは素晴らしい!」
三神は拳を握りしめ、まるで自分の思考を見抜かれたかのように喜び、筋肉を見せつけるようなポーズを取った。彼の反応に、姫凪乃は少し驚きつつも微笑んでいた。
「さぁ、晴斗君も遠慮なく何でも聞いてくれ!」
三神が熱を帯びた目で晴斗に視線を向けると、晴斗は少し戸惑いながらも質問を口にした。
「えっと……アビリティって、そもそも何ですか?」
晴斗の質問に一瞬の沈黙が訪れるが、すぐに三神が爆発的なリアクションを取った。
「それだ! それがまさに核心だ! なんてすばらしい質問だ! 素晴らしい!!」
突然の大声に、晴斗は少し後ずさりしながらも苦笑し、「ありがとうございます……」と控えめにお礼を言った。
「では、まず姫凪乃君の質問から答えよう!」
三神は姿勢を正し、再び講義を始めた。
「確かに、アビリティは様々な応用が可能だ。戦闘に使われることが多いが、それが唯一の用途ではない。私個人としては、戦闘以外の分野でこそその真価が発揮されるべきだと考えている。医療、環境、エネルギー……これら全てが、アビリティの力で変わる可能性があるんだ!」
彼は拳を握りしめ、未来への可能性を語る目に力を込めた。
「例えば、医療の分野だ! 治療系統のアビリティや、副次的に治癒効果を持つアビリティが存在している。今、再生医療や難病の治療において、これらの能力がどれだけ活用できるかが研究されているんだ!」
「不老不死なんてことも……?」
姫凪乃が興味津々に問いかけると、三神はさらに熱を込めて答えた。
「そうだ! 傷を癒すメカニズムが完全に解明されれば、理論的にはそれも可能かもしれない!」
晴斗は驚いた顔で三神の話に聞き入っていた。まさか自分が生きる現実の世界で「不老不死」という言葉が現実的に語られるとは思ってもいなかった。
「さらに、精神に作用するアビリティもあるんだ。これを心理学や教育、トレーニングに応用できる可能性がある! 精神療法としての効果も期待されているよ!」
三神は大きなジェスチャーを交えながら説明を続ける。姫凪乃は真剣にメモを取りつつ、うなずいて話を聞いている。
「次に姫凪乃君が言っていたエネルギー、資源の分野だ! 姫凪乃君、君は炎を操るアビリティを持っているよね?」
三神がそう言うと、姫凪乃は少し肩をすくめながら答えた。
「はい。ただ、私の場合、種火がないと炎を操れないんですよ。だから、完全に炎を生み出すことができるわけではなくて……」
その言葉に晴斗は、真取の言っていた珍しくないの意味が何となく理解でき、優秀な彼女が特別じゃないということに少し安心した。
「いや、それでも十分エネルギー分野での応用が考えられる。例えば、加熱発電だ。エネルギーを自在に操れる者たちは、持続可能なエネルギー資源としての役割を果たせるかもしれない!」
「あの、それって……いろいろ倫理的に問題があるような……」
晴斗が心配そうに口を挟む。
「そうだ、晴斗君。まさにその通りだ。倫理的な問題もある。人間がエネルギー資源として使われる可能性があるからだ。だからこそ、我々は慎重に進めているんだ!」
「アビリティの影響はまだまだ無限の可能性を秘めているんだ。実は、環境問題への応用や、新しいテクノロジーの開発、さらには芸術の世界にまで、その力が及ぶかもしれないんだよ。」
三神はニヤリと微笑みながら、次の話題に移る準備をしているかのようだった。
「さぁ、これからはその可能性について少し掘り下げてみようか。もしかしたら、君たちのアビリティが、今後の世界に大きな影響を与えることになるかもしれないからな。」
そう言うと、三神は少し間を置いて、再び二人に目を向けた。
「次はこれも姫凪乃君が言っていたね! 環境保全についてだ!」