突然家に押し入られ、よく分からないことを言われた晴斗。彼女は親密でもなければ、見たところ年齢も自分が上、にもかかわらず、タメ口で話しかけてくる。そんな無礼な態度に、正直一言ガツンと言ってやりたい気持ちでいっぱいだった。
だが、怒りを覚えながらも、つい見惚れてしまう自分がいた。彼女は一目でわかるほどの美女で、スタイルも抜群だった。それだけに、一瞬でもそんな気持ちになる自分に、晴斗は腹立たしさを覚えた。
「え……と……あなた今朝の盗撮騒ぎの時の方ですよね?」
晴斗は彼女の顔をしっかりと確認する。間違いなく、あの時の金髪の女だ。
「いきなり何なんですか?ていうか、家の場所をどうして知ってるんですか?」
普段から怒りを表に出すことが得意ではない晴斗は、平静を装いながらも、彼は精一杯怒りを込めて言葉を放った。
「なに、怒ってんの?」
彼女は晴斗の言動に気付き、呆れたような態度を見せた。
「せっかく大出世できるような良い話を持ってきたのに」
彼女は少し顎を上げ、視線を少し見下ろすような角度で、自慢げに語り始めた。だが、残念なことに晴斗には出世への興味など微塵もなかった。
「とりあえず立ち話もなんだから中に入れてくんない?」
彼女の言葉に晴斗は一瞬、耳を疑った。
「(中に入れろ、てマジで言ってんのか!?)」
不用心な金髪美女に対して、晴斗の警戒心は一気に高まる。それと同時に、僅かな期待を抱いてしまう自分に気付き、自己嫌悪に陥った。
「え、中……て、いや……それはちょっと……」
「何よ、今どきエロ本なんて持ってないでしょ?変なもんあっても気にしないわよ」
「仮にアンタに襲われても余裕で倒せるし」
「(今、バカにされたか……?)」
彼女は明らかに口が悪かった。無意識のうちにそんな言葉が出ているのかもしれないが、それでもやはり男としてムッとくる気持ちを抑えつつ、晴斗は仕方なく家の中に入れることにした。
「そうですか、じゃあ、どうぞ」
彼女が入ると、部屋の狭さに驚いた様子を見せた。
「うわ、せま」
「まぁ、でも掃除はちゃんとしてるのね、よかった」
「……」
晴斗は彼女の口の悪さに呆れつつも、どうして今までこんな口調でトラブルに巻き込まれなかったのか、心底不思議に思った。