光輝は、彼女を無事に避難させる方法を考えていたが、その瞬間――ガラガラと音を立てて、瓦礫からあの怪物が再び姿を現した。
「いっでぇぇぇ、なんだぁさっきのは?」
「チッ、思い切り殴ったつもりだったが……」
光輝は、怪物の異形の姿を見て、何かが異常であることを直感的に感じた。魔物とも、魔族とも異なるこの存在は、光輝が今までに遭遇したことのない種類の敵だった。そして何より、彼の渾身の一撃に耐えられる強さを持っていた。
「おめぇぇかぁぁさっきのはぁぁ!!」
怪物は、自らの絶対的優位を奪われたことで、怒り狂ったかのように吠え始めた。その怒声は、まるで猛獣の咆哮のように空気を震わせ、地面を揺らした。
「クソッ、なんなんだコイツは!?」
明瑠は光輝に何か役立つ情報を提供しようと、焦りながら思い出した。
「あいつ、口から火を出したり、翼から見えない刃を出すんだ!それに、もともとあの人達の仲間だったみたいなんだ!」
彼はSAUの無惨な遺体を指差しながら、怪物たちが話していた内容を伝えた。
「なっ!!?もともと人間だったのか!!?」
「あ、あとアビリティが弱いからいじめられてたとか……」
「ほぉぉぉ……よく聞いてたなぁぁぁクソガキィィィ!!」
怪物はその言葉に激しく反応し、光輝に向かってさらに威圧的な咆哮を放った。その声は、ライオンの咆哮を思わせるほど力強く、ビリビリと体全体に振動が伝わってきた。
光輝は、元は人間だったという事実に一瞬驚きを隠せなかったが、今は目の前の敵を倒すことが最優先であると自らを律した。そして「アビリティ」という聞き慣れない言葉に反応しつつも、まずはこの怪物を2人から引き離すことを最重要課題と考えた。
「だが俺は最強の体を手に入れたぁぁぁ!!俺をバカにするヤツはぶっ殺すぅぅぅ!!!」
「おい!お前が手に入れたその最強の体、俺が試してやる!」
光輝は再び怪物に向かって瞬時に移動し、渾身の蹴りを放った。
「ぐおぉぉ!」
光輝は怪物を煽り続け、意図的に2人を怪物から引き離そうと誘導し続けた。
「おいブサイク!ここは狭い!こっちに来い!躾をしてやる!!」
「いい気になるなよぉぉぉ!八つ裂きにしてやるぅぅぅ!!!」
怪物は怒りに任せて吠え、狙い通り光輝を追い、2人から引き離されていった。そして、光輝は瞬時に状況を利用し、攻撃のための準備を整えた。
光輝は怪物を挑発し、意図的に怪物を2人の場所から引き離す。怒りに任せた怪物は、その挑発に乗り、光輝の後を追って移動する。
「おいおいぃぃぃ、自らこんな危険な場所に移動するとはなぁぁぁ……」
光輝は周囲に魔物が徘徊しているのを確認し、戦闘のテンションを一気に引き上げた。
「さぁ、かかってこい!」
怪物は再び口から火球を放とうと大きく息を吸い込むと、光輝は即座にその動きを察知した。火球が発射される直前、彼は素早く動き、周囲にいる魔物たちを巻き込む位置へと移動した。
「ここだ!」
怪物の火球が光輝に向かって放たれたが、光輝はそれをギリギリで避け、周囲の魔物たちを焼き尽くした。光輝は即座にその魔物たちの魔力を回収し、次なる一手に備えるため、さらに魔物が徘徊している場所へ移動する。
「ちょこまかと動き回りやがってぇぇぇ!!」
怪物は光輝を追い詰めようと、翼を広げて宙に浮かび上がった。その動きは一瞬で、光輝の周囲を覆うように超高速でドーム状に飛び回り始めた。
「ぎゃはははは、全方位からの見えない刃だ!!」
怪物は狂ったように笑いながら、翼から無数の見えない刃を放ち、光輝を包囲した。
「死ね!!!」
その瞬間、光輝は魔物が潜んでいる位置を確認しながら、冷静に自身を守る準備を整えた。
「大地よ!我が身を護る盾となれ!!」
光輝は地面に手を当て、その瞬間、地面が轟音を立てて盛り上がり、彼を囲むようにして高い壁が現れた。
「アースウォール!!!」
見えない刃は全方向から光輝に向かって飛んできたが、彼の周りを取り囲んだ地面の壁に当たると、そのまま弾かれるようにして消滅していった。
「なぁぁ!地面の壁ごときに打ち消されるはずがぁ!?」
だが、その攻撃は無差別で、光輝を狙った刃は近くにいた魔物たちにまで及び、彼らを次々と八つ裂きにしていった。光輝はこの状況を壁の内側から魔力を探知、魔物が倒れていくのを冷静に観察し、さらなる策を練るための時間を稼いだ。
「俺の魔力がこもった特別製だ、そんな簡単に壊されてたまるか」
光輝は周囲の魔物たちが刃に巻き込まれて次々と倒れていくのを見て、その魔力をすかさず回収した。彼は状況を冷静に分析し、反撃の準備を整えた。
「さぁ、次は俺の番だ」
光輝はアースウォールの上に素早く跳び上がり、周囲の状況を一瞬で把握した。空中にいる怪物はまだ余裕を見せていたが、光輝はその油断を突くつもりだった。
「
光輝の声が静寂を切り裂き、空に響いた。その瞬間、彼の手にはバチバチと雷光が走る槍が現れ、強烈なエネルギーが溢れ出した。
「ライトニングランス!!!」
彼は全力で槍を投げつけ、その軌跡が空中を切り裂きながら怪物の元へと突き進んだ。雷光の槍は怪物の口を貫き、そのまま高電圧の放電を浴びせ続けた。
「あばばばばばばばばば!!」
怪物は痛みに耐え切れず、体中を痙攣させたまま叫び声を上げた。そして、雷光が頂点に達した瞬間、槍が爆発し、怪物は力を失い、地面に無力に落下した。
「……あ……あ……が……」
怪物は地面に倒れ、完全に息を引き取ったように見えた。光輝はその光景を見届け、ようやく安堵の息を吐いた。
「ふぅ……危なかった……周りに魔物がいて、魔力を回収できなかったらどうなってたか……」
彼の額には汗が滲んでおり、心拍数がまだ高まっているのを感じた。この異様な怪物との戦いは、今の光輝にとって非常に厳しいものであり、彼の限界を試すかのようなものだった。
光輝は一瞬、これが最後ではないことを確信した。この怪物が現れるのであれば、他にも同じような存在がいる可能性が高い。勝利の喜びと共に、彼の心には一抹の不安が残った。
「まだまだ終わらないかもしれないな……」
光輝はそう呟きながら、次なる戦いに備えるために自らを律した。周囲の静寂が戻る中、彼は未来に向けての新たな決意を胸に刻んだ。