明瑠は生き延びるための手段を探して、周囲を焦りながら見渡した。彼の心臓は激しく鼓動し、冷たい汗が背中を伝って流れる。
息を詰まらせながら、目を細めて視線を巡らせると、左手側の数十メートル先に一人の男の姿が見えた。その瞬間、恐怖と絶望が入り交じった感情が一気に噴き出し、明瑠はその男に向かって無意識に叫び声を上げた。
「助けて!!」
その叫び声は夜の静寂を破り、辺りに響き渡った。光輝はその切迫した声に瞬時に反応し、魔法を用いて身体を強化した。
彼の体内に宿る魔力が、全身に力をみなぎらせ、筋肉を鋼のように強固にする。周囲にはまだ魔物が徘徊していたが、彼にとって今、最も優先すべきはこの少年の命だった。
「レゼク!」
彼は一瞬で怪物の元に飛び、強烈な一撃を繰り出した。怪物は光輝の超人的な速度に反応できず、大きな力で吹き飛ばされ、瓦礫の中に叩き込まれた。
「大丈夫か?」
光輝はすぐに少年の元に駆け寄り、優しい口調で少年に問いかけた。明瑠は、自分を殺そうとしていた怪物が突然消えたことに驚き、助けを求めた男が代わりに目の前に立っていることに戸惑った。
しかし、すぐに彼が助けを求めた存在であることを理解し、安堵の息を漏らした。
「あ、あぁ……」
言葉を絞り出しながら、明瑠は彼を見上げた。その後、彼は突然思い出したように叫んだ。
「あ、あの!家の瓦礫の中に姉が閉じ込められて!!」
「だ、だれ!?明瑠早く逃げて!!」
杏の声がどこからか響き渡り、明瑠はその方向に目を向けた。彼女の声は怯えと焦燥感に満ちていた。
「大丈夫、助けが来たんだ!!」
光輝は杏の声の方向を素早く確認し、瞬時に彼女の位置を把握すると、すぐさま瓦礫をどかして彼女を救い出した。彼の力強い腕で瓦礫が持ち上げられると、冷たい夜風が彼女の顔に触れ、息を呑むような静寂が訪れた。
「杏!よかった!」
明瑠は、助け出された杏に駆け寄り、その肩を抱きしめた。彼女が無事だったことに心から安堵し、目には涙が浮かんでいた。
「君、大丈夫か?怪我は?」
光輝は優しい声で、杏の状態を確認する。彼女は少し怯えながらも、静かに頷いた。
「え、えと、上手く空間に挟まってたみたいで、そんな大きな怪我は無いと思います」
光輝と明瑠は、彼女に大した怪我が無いことにほっとし、深く息をついた。