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陽生 光輝5話その1 一抹の不安 - 安堵

明瑠は生き延びるための手段を探して、周囲を焦りながら見渡した。彼の心臓は激しく鼓動し、冷たい汗が背中を伝って流れる。


息を詰まらせながら、目を細めて視線を巡らせると、左手側の数十メートル先に一人の男の姿が見えた。その瞬間、恐怖と絶望が入り交じった感情が一気に噴き出し、明瑠はその男に向かって無意識に叫び声を上げた。


「助けて!!」


その叫び声は夜の静寂を破り、辺りに響き渡った。光輝はその切迫した声に瞬時に反応し、魔法を用いて身体を強化した。


彼の体内に宿る魔力が、全身に力をみなぎらせ、筋肉を鋼のように強固にする。周囲にはまだ魔物が徘徊していたが、彼にとって今、最も優先すべきはこの少年の命だった。


「レゼク!」


彼は一瞬で怪物の元に飛び、強烈な一撃を繰り出した。怪物は光輝の超人的な速度に反応できず、大きな力で吹き飛ばされ、瓦礫の中に叩き込まれた。


「大丈夫か?」


光輝はすぐに少年の元に駆け寄り、優しい口調で少年に問いかけた。明瑠は、自分を殺そうとしていた怪物が突然消えたことに驚き、助けを求めた男が代わりに目の前に立っていることに戸惑った。


しかし、すぐに彼が助けを求めた存在であることを理解し、安堵の息を漏らした。


「あ、あぁ……」


言葉を絞り出しながら、明瑠は彼を見上げた。その後、彼は突然思い出したように叫んだ。


「あ、あの!家の瓦礫の中に姉が閉じ込められて!!」


「だ、だれ!?明瑠早く逃げて!!」


杏の声がどこからか響き渡り、明瑠はその方向に目を向けた。彼女の声は怯えと焦燥感に満ちていた。


「大丈夫、助けが来たんだ!!」


光輝は杏の声の方向を素早く確認し、瞬時に彼女の位置を把握すると、すぐさま瓦礫をどかして彼女を救い出した。彼の力強い腕で瓦礫が持ち上げられると、冷たい夜風が彼女の顔に触れ、息を呑むような静寂が訪れた。


「杏!よかった!」


明瑠は、助け出された杏に駆け寄り、その肩を抱きしめた。彼女が無事だったことに心から安堵し、目には涙が浮かんでいた。


「君、大丈夫か?怪我は?」


光輝は優しい声で、杏の状態を確認する。彼女は少し怯えながらも、静かに頷いた。


「え、えと、上手く空間に挟まってたみたいで、そんな大きな怪我は無いと思います」


光輝と明瑠は、彼女に大した怪我が無いことにほっとし、深く息をついた。

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