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勇者の不可分
たりきん
現代ファンタジー都市ファンタジー
2024年09月16日
公開日
78,069文字
連載中
3人の主人公による、それぞれの視点から描かれる物語。地球と異世界に隠された謎、そして魔法とアビリティという特殊な力の謎とは……

何故か地球に異世界の魔物が現れ混乱する中、異世界で邪神を倒しそこで平和に過ごしていた光輝は気づくと一部記憶を無くし地球に……
考える余裕もなく、彼は戦うことになる。

光輝と共に異世界を救った勁亮は邪神を倒した後、地球に戻り平和な日常を過ごしていた、しかし突如として地球に現れた異世界の魔物に襲われ、彼もまたわけも分からないまま戦うことになる。

どこにでもいるただの警備員、晴斗は突如「フォールドゲート」というアビリティを手に入れた事により運命が大きく変わることに……

陽生 光輝1話 勇者の帰還

陽生 光輝の目に飛び込んできたのは、かつて知っていた世界の風景だった。その瞬間、胸の奥から懐かしさがこみ上げると同時に、何かが引き裂かれるような感覚が彼を襲った。


記憶の深淵から断片的な映像が浮かび上がり、一気に押し寄せてくる。しかし、それらはぼんやりと遠い存在で、まるで蜃気楼のように掴みどころがない。

自分がここに立っていること自体が信じられず、懐かしさと驚きの狭間で光輝はただ立ち尽くしていた。


「ここは……地球……だよな……」


何が起きたのか分からず、自分が直前まで何をしていたのか必死に思い出そうとする。しかし、その記憶はまるで霧の中にいるかのように曖昧で、手を伸ばしても届かない。


「……確か……ニサはまだ産後間もない状態で……子供たちは……」


「ぐっっ!!」


記憶を呼び起こそうとした瞬間、激しい頭痛に襲われる。まるで身体がそれ以上の追及を拒絶しているかのように、光輝は痛みに耐えきれず、思考が中断された。


その時、不意に大地を揺るがすような破壊音が耳をつんざいた。建物が崩れ落ちるかのような轟音が周囲に響き渡り、耳を裂くような獣の雄叫びがこだまする。

その音には、尋常ではない力と狂気が宿っており、光輝の身体は反射的に構えを取った。

胸の奥にまで響く振動が、戦士としての本能を刺激する。


「やはりレイジオークかッ!!!」


「何故地球に……いや、今はそんなことを考えている場合じゃない!」


脳裏に浮かぶ疑問を一瞬で振り払い、光輝は戦士としての本能に従い、レイジオークの凶暴な瞳に狙いを定めた。息を荒らげ、目に宿る狂気は、まさに破壊の化身として地上に降り立ったかのようだった。


「ここで止めなければ……!」


一瞬で光輝の身体が消え、次の瞬間、レイジオークの眼前に現れた。風が巻き起こり、彼の魔力が静かに周囲を包み込む。その力は周囲の被害を抑えるために緻密に調整されていたが、その強大さは否応なく伝わってくる。


「地獄の炎よ、全てを燃やし尽くせ!!」


光輝の叫びは、まるで地獄からの使者が降臨したかのように響き渡った。その瞬間、レイジオークの顔に一瞬の恐怖がよぎる。光輝の手から解き放たれた炎が爆発的に広がり、凄まじい熱量がレイジオークを包み込んだ。


「インフェルノ・フレア!!」


轟音と共に炎が巻き上がり、レイジオークは息をする間もなく、その炎に焼き尽くされた。獣の雄叫びはもはや響くことなく、ただ静かに大量の灰が舞い上がるだけだった。





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