陽生 光輝の目に飛び込んできたのは、かつて知っていた世界の風景だった。その瞬間、胸の奥から懐かしさがこみ上げると同時に、何かが引き裂かれるような感覚が彼を襲った。
記憶の深淵から断片的な映像が浮かび上がり、一気に押し寄せてくる。しかし、それらはぼんやりと遠い存在で、まるで蜃気楼のように掴みどころがない。
自分がここに立っていること自体が信じられず、懐かしさと驚きの狭間で光輝はただ立ち尽くしていた。
「ここは……地球……だよな……」
何が起きたのか分からず、自分が直前まで何をしていたのか必死に思い出そうとする。しかし、その記憶はまるで霧の中にいるかのように曖昧で、手を伸ばしても届かない。
「……確か……ニサはまだ産後間もない状態で……子供たちは……」
「ぐっっ!!」
記憶を呼び起こそうとした瞬間、激しい頭痛に襲われる。まるで身体がそれ以上の追及を拒絶しているかのように、光輝は痛みに耐えきれず、思考が中断された。
その時、不意に大地を揺るがすような破壊音が耳をつんざいた。建物が崩れ落ちるかのような轟音が周囲に響き渡り、耳を裂くような獣の雄叫びがこだまする。
その音には、尋常ではない力と狂気が宿っており、光輝の身体は反射的に構えを取った。
胸の奥にまで響く振動が、戦士としての本能を刺激する。
「やはりレイジオークかッ!!!」
「何故地球に……いや、今はそんなことを考えている場合じゃない!」
脳裏に浮かぶ疑問を一瞬で振り払い、光輝は戦士としての本能に従い、レイジオークの凶暴な瞳に狙いを定めた。息を荒らげ、目に宿る狂気は、まさに破壊の化身として地上に降り立ったかのようだった。
「ここで止めなければ……!」
一瞬で光輝の身体が消え、次の瞬間、レイジオークの眼前に現れた。風が巻き起こり、彼の魔力が静かに周囲を包み込む。その力は周囲の被害を抑えるために緻密に調整されていたが、その強大さは否応なく伝わってくる。
「地獄の炎よ、全てを燃やし尽くせ!!」
光輝の叫びは、まるで地獄からの使者が降臨したかのように響き渡った。その瞬間、レイジオークの顔に一瞬の恐怖がよぎる。光輝の手から解き放たれた炎が爆発的に広がり、凄まじい熱量がレイジオークを包み込んだ。
「インフェルノ・フレア!!」
轟音と共に炎が巻き上がり、レイジオークは息をする間もなく、その炎に焼き尽くされた。獣の雄叫びはもはや響くことなく、ただ静かに大量の灰が舞い上がるだけだった。