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第7話 没落令嬢と私のスゴいトコ・前


とくに目立つ飾りつけもなく、モノを置くためのカウンターとイスだけが置いてある小さめの建物……【デフォルトな雑貨屋】の状態だ。


「ええっとね、これがカウンターで、こっちが売り物を入れたコンテナ!」


そんな雑貨屋に飛び込んだキュウは、机をばんばん叩いたり、うえに乗ってみせたり……とにかく全身を使って店の内装をアピールしてくる。


「んで、こっちが【錬金釜】!」


受付まわりの紹介が終わったのか。

キュウは店の奥へ移動し、工房がわの説明へ入る。


それにしても【錬金釜】も借りれるのか……。

【生産道具】も借りれるのはいい配慮だ。売るものを切らして補充したいとき、また工房へ戻って──なんてやってられないものね。

でも、キュウって【錬金術】使えるのかしら……?


「そんで、【裁縫道具】、【工具】、【彫金道具】に【フラスコ】に……」


「ちょっと待てーーーーッ!!」


それを皮切りに、出るわ出るわ【生産道具】のラインナップ!

いくらなんでもこんな子供に、全部使いこなせるほどの生産技術があるはずがない!


「これ全部レンタルなの!?」


「うん、みんなドク……おじいちゃんが使ってた道具だったから、オイラにも使えるかなって思ってたんだけど、全然使えなくってさ」


あっけらかんと語ってしまうキュウに、思わず顔を覆ってしまった。


「そりゃそうよ……【スキル】、あーいや女神の加護をもらってないと、【生産道具】は使いこなせないもの、むしろそのおじいさんが何者よ」


「そっか、ドクターってやっぱりスゴいんだ、わかる人にはわかるんだ……へへ!」


「笑ってる場合か!」


くっそー、トンデモない奴もいたものだわ……!

そんな何でもかんでもこともなげに作れる人が身近にいたら、そりゃあ感覚がくるってしまうというモノだ。


そんな現実ぶつけられてしまうと、少し迷いが出てきてしまう。


これ、大丈夫か?

私なんかが手を出していいモノだったのか?


「え、でも……」


考え込み始めたところで、キュウが口をはさんできた。


「リーズも、そのくらいスゴいんじゃないの?」


「──はい? 私が? そんなとんでもないのと同じくらい?」


いやいやいやいや買いかぶりもいいところ!

私なんて【錬金術】しか扱えないし、それだって始めてからまだ1週間も経ってない!

ひよっこもいいところだ!


……なーんて言おうとしたところに、キュウの言葉がかぶさった。


「だって見たよ? みーんなリーズのことを待ってくれーって追いかけてるところ! あれってリーズのことを【スゴい錬金術士】だって知ってて、それで探していたんじゃないの?」


「……見てたの?」


「うん!」


元気よく返してきたキュウとしばらく見合う。

こいつ、少しも疑ってない。


「はあ……」


呆れたもんだ。

あの時の私なんて、ワケも分からず逃げまどってただけだったのに。


あーあ。

一本取られちゃった。

反論のひとつも出てこないや。

印象っていうのは見る人が違うってだけで、ここまで変わっちゃうのね。


しょうがない、ハラくくるか。

両手の平を顔の横へ。

そして──気合を入れなおす!


「せーーーの!」


パッチーーン!


「ど、どうしたのっ!?」


「いや、ちょっとね」


慌てるキュウにそれだけ言って、コンテナの中を確認する。


「えーっと【草】0エン、【枝】0エン、【布のきれはし】1エン、【石】0エン、【じょうぶなツル】8エン、【綿毛】10エン、【水】0エン……うへえ、素材ばっか」


まとめて【一の解】の力で見やれば、タダ同然の素材ばっかり。

ということは、アイテムへ変えてやるのは急務か。


「リーズ?」


「【オトウト】!」


「は、はい! 【ネーチャン】!」


「これからコレ全部アイテムにして出すから、あんたはカウンターで売りさばいて!」


「う、うん!」


いいわよ、わかった。

そんなにお望みなら見せてあげよう。


「【スーサイド】、オン!」


私の、すごいところを!

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