とくに目立つ飾りつけもなく、モノを置くためのカウンターとイスだけが置いてある小さめの建物……【デフォルトな雑貨屋】の状態だ。
「ええっとね、これがカウンターで、こっちが売り物を入れたコンテナ!」
そんな雑貨屋に飛び込んだキュウは、机をばんばん叩いたり、うえに乗ってみせたり……とにかく全身を使って店の内装をアピールしてくる。
「んで、こっちが【錬金釜】!」
受付まわりの紹介が終わったのか。
キュウは店の奥へ移動し、工房がわの説明へ入る。
それにしても【錬金釜】も借りれるのか……。
【生産道具】も借りれるのはいい配慮だ。売るものを切らして補充したいとき、また工房へ戻って──なんてやってられないものね。
でも、キュウって【錬金術】使えるのかしら……?
「そんで、【裁縫道具】、【工具】、【彫金道具】に【フラスコ】に……」
「ちょっと待てーーーーッ!!」
それを皮切りに、出るわ出るわ【生産道具】のラインナップ!
いくらなんでもこんな子供に、全部使いこなせるほどの生産技術があるはずがない!
「これ全部レンタルなの!?」
「うん、みんなドク……おじいちゃんが使ってた道具だったから、オイラにも使えるかなって思ってたんだけど、全然使えなくってさ」
あっけらかんと語ってしまうキュウに、思わず顔を覆ってしまった。
「そりゃそうよ……【スキル】、あーいや女神の加護をもらってないと、【生産道具】は使いこなせないもの、むしろそのおじいさんが何者よ」
「そっか、ドクターってやっぱりスゴいんだ、わかる人にはわかるんだ……へへ!」
「笑ってる場合か!」
くっそー、トンデモない奴もいたものだわ……!
そんな何でもかんでもこともなげに作れる人が身近にいたら、そりゃあ感覚がくるってしまうというモノだ。
そんな現実ぶつけられてしまうと、少し迷いが出てきてしまう。
これ、大丈夫か?
私なんかが手を出していいモノだったのか?
「え、でも……」
考え込み始めたところで、キュウが口をはさんできた。
「リーズも、そのくらいスゴいんじゃないの?」
「──はい? 私が? そんなとんでもないのと同じくらい?」
いやいやいやいや買いかぶりもいいところ!
私なんて【錬金術】しか扱えないし、それだって始めてからまだ1週間も経ってない!
ひよっこもいいところだ!
……なーんて言おうとしたところに、キュウの言葉がかぶさった。
「だって見たよ? みーんなリーズのことを待ってくれーって追いかけてるところ! あれってリーズのことを【スゴい錬金術士】だって知ってて、それで探していたんじゃないの?」
「……見てたの?」
「うん!」
元気よく返してきたキュウとしばらく見合う。
こいつ、少しも疑ってない。
「はあ……」
呆れたもんだ。
あの時の私なんて、ワケも分からず逃げまどってただけだったのに。
あーあ。
一本取られちゃった。
反論のひとつも出てこないや。
印象っていうのは見る人が違うってだけで、ここまで変わっちゃうのね。
しょうがない、ハラくくるか。
両手の平を顔の横へ。
そして──気合を入れなおす!
「せーーーの!」
パッチーーン!
「ど、どうしたのっ!?」
「いや、ちょっとね」
慌てるキュウにそれだけ言って、コンテナの中を確認する。
「えーっと【草】0エン、【枝】0エン、【布のきれはし】1エン、【石】0エン、【じょうぶなツル】8エン、【綿毛】10エン、【水】0エン……うへえ、素材ばっか」
まとめて【一の解】の力で見やれば、タダ同然の素材ばっかり。
ということは、アイテムへ変えてやるのは急務か。
「リーズ?」
「【オトウト】!」
「は、はい! 【ネーチャン】!」
「これからコレ全部アイテムにして出すから、あんたはカウンターで売りさばいて!」
「う、うん!」
いいわよ、わかった。
そんなにお望みなら見せてあげよう。
「【スーサイド】、オン!」
私の、すごいところを!