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第20話 没落令嬢と一時の別れ


さて。

私たちはファラと違って【イカロスの羽】はないので、街までは徒歩だ。

あの熱気ムンムンの最下層から……ということはなく、ダンジョンクリアの特典で洞穴の入り口まで自動で戻されてからの帰り道になった。


「親切なんだか不親切なんだか……」


ここからだって下山したり、街道歩いたり結構な道のり。

余ってる【コンバットレーション】をアルに食べさせつつ──。


「げほっ、ごほっ……!」


「だから吐くな―!」


 そうこうしているうちに、街の門が見えるところまでやってきた。

 ここを抜ければ、何時間かぶりのリヒターゼンだ。


「なあ、リーズ……俺たち、やっちまったんだよな?」


 そんなところでアルは軽く震えながら口を開く。


「……そーよ、誰も攻略できなかった火山ダンジョンを最速で攻略しちゃったのよ私たち! 夢かなんかだと思ってる?」


「夢っつってもわかる気がするんだよ……むしろ1回失敗してる身としちゃ、こんなうまくいっていいのかって」


「私のオカゲだって、ほめたたえてもいいのよー?」


「その通りだから信じらんねーんだけどさ……」


 でも現実です!

 私たちが暴れまわるドラゴンを討伐したことはファラの動画はもちろん、お金もドロップアイテムもぜーんぶ証明してくれるからね!


「いい土産話になるんじゃない? あの火山を攻略したって聞いたら彼女さんもきっと驚くわよーー?」


「別に俺とあいつはそういう仲じゃ!」


「あーあーいーいー、いーよそーゆーのは!」


アルの弁明を軽く流す。

こういう言葉の次にやってくるのは、言い訳風のノロケって相場が決まってる。

そんなことよりも、だ。


「それよりも、よ! あんたはあんたの目的、ちゃんと果たせたの? ボスへの道のりだけでもかなり頑張ってたし、けっこーイイ【スタイル】もらえたんじゃない?」


「…………」


あれ、固まった。


「おーーいどしたー? またロクでもないスキルになっちゃったの?」


「笑わないな?」


「笑わない笑わない!」


「本当にか?」


こいつ、なかなか話そうとしないな!

何が恥ずかしいのかしら!


「ほらあんたがもたもたするからもう門まで来ちゃったわよ、ひとっこひとりにも聞かれたくないなら、今言っちゃった方がいいんじゃない!?」


「……わかったよ、絶対に笑うなよ? ステータス開示!」



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【従者】

 スタイル。

 自身以外がパーティリーダーの時ターゲット集中状態を付与する代わり、パーティリーダーに対して行う補助効果が常に最大値になる。


 取得条件:以下の条件を満たす。

 ①パーティリーダーをかばう行動を10回以上とる

 ②ボスバトルにおいてパーティリーダーより与えたダメージが少ない状態で勝利する。


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「ぶっ――――!」


「笑うな!」


「いやいやゴメンって……」


 口をとがらせていじけてしまったアルに軽く謝っておく。

 街道で過激派信者に襲われた時も、火山でファラから魔法をどかどか浴びせられた時もずーっと助けてくれてたんだもの、笑うのは不誠実よね。

 門番さんに頼んで門を開けてもらい、街へ入った私たちはそこから二手に分かれた。


「まあ、また連絡でもしろよ――今度はマリーのやつもいっしょに連れてきてやるから」


「うん、楽しみにしてるー!」


 アルはまあ冒険者ギルドやらに行って、クエストをもらいに行くのだろう。

 大きく手を振って見送ったら、私も私のすべきことをやんなきゃね!


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