━━━━━━Congretulation!━━━━━━
ボスモンスターの討伐成功!
MVP:ファラ
ベストダメージ:リーズ 経験値30%アップ!
ラストアタック:リーズ 経験値20%アップ!
EXPを大量に獲得!
リーズはレベル24にアップ!
アルフォンスはレベル21にアップ!
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アルがやってきたのは長いような短いような、そんな死闘が終わって、私たちがひと息ついたころだった。
「はっ、ぜっ……ようやくついた……」
「遅いですわよアルフォンス、淑女を守れない護衛がいますか!」
フラフラとした足取りのアルに追い打ちをかけるようにファラは叱り飛ばす。
「んなこと言うなよ……このフロアにきてからずっと走ってばっかりで、そろそろ死んじまうよ……」
熱に浮かされたようにしゃべりだすアルのHPゲージを見てみれば、ロクに戦っていないのにもう残り僅か。
【焦熱】を防ぐリキッドウェアの効果が切れてなお、一刻も早く駆け付けようときてくれたんだ。
「だいたい淑女なんてタマかお前たち……」
それはうれしいけども。
「あいてっ!?」
女の子に対してそんな言い草はないでしょうと、HPに影響が出ない程度に軽く小突いてやった。
まったく、生きるも死ぬも私に握られてるの分かってないでしょ。
……そうだ!
そういう奴にはお仕置きだ。
「【スニーク】がもうロクに残ってないのよねー、ちょーどひとり分しかないのよ」
「い!?」
「これは私に使っちゃおうかなー! せっかくボスも倒せたのに、そんなとこで離脱しちゃうのはかわいそうよねー!」
「待った待った、俺が悪かったよ! リーズさんは偉大なる錬金術士さまです!」
「よろしい! ではしかと受け取るように!」
ふふん。アイテム持ちに逆らうとこうなるのよ!
アルを言い負かして気分がいい私は、アイテムボックスからお望みの物を出してあげる。
「……さてお二方!」
そんな時、やり取りをじっと静観していたファラが口を開いた。
張りのある声に私たちはそろって向き直る。
「うすら寒い茶番はここまでにいたしましょう! この火山攻略勝負の勝者を決めなければ!」
まあそうだよね。
ドラゴンの登場から流れで共闘したけど、このままレースの結果をうやむやにできないもん。
でも――
「……でも、どうするんだ?」
自前の【回復薬】を飲みながら、アルが口を開いた。
「俺の見た限りお前ら二人同時に祠に突っ込んだんだが、どうやって勝敗をつけるつもりだ?」
それを言われてしまうと悩ましい。
ファラが痺れを切らして作り出した大砲によって、とんだ珍事が起こってしまったものだ。
審判代わりの映像が当てにならないこの状況を、もし打破できるとするなら――
「ご心配には及びませんわ! 私に妙案がございますの!」
「妙案ン?」
さてどうすると考えあぐねているところに自信満々なファラ。
なーんか、ヤな予感がするんですけど?
「まさか視聴者に判断をしてもらおうってんじゃないわよね? ダメよ、アルの動画も含めて私たちが完全にアウェーじゃない!」
「ふふ……そんなつまらないマネしませんわよ」
私を見ながらファラは不敵に笑うばかりだ。
そこから急に大きく両手を広げ、高笑いとともにくるくると回転しだしたのである。
「ちょうどいいですわ、ここで告知といたしましょう! 私ファラは、このインフィニティ・フォークロアの公式配信者として運営じきじきに言伝を預かっておりますの! しもべの皆様はもちろん、最後まで聞いてくださいますよね?」
「おわっ!」
私の後ろでアルがたじろいだ。
今、彼の目の前はおびただしい数の【ハイヨロコンデ―!】で埋め尽くされているのだろう……ってそんなことより!
「それとこれと、なんの関係があるのよ?」
「まあお聞きなさいな……」
そこから急に大きく両手を広げ、高笑いとともにくるくると回転しだしたのである。
コッテコテの悪役令嬢モードだ。
「近日、このインフィニティ・フォークロアにて初となる、大型バトル・ロワイヤルイベントが行われますの! 詳細までは分かりませなんだが、この無限民話を彩るプレイヤーたちがこぞって参戦し、大盛り上がりになることは間違いないですわ──もちろんッ!」
「きゃっ!?」
回転をやめたファラは突然こっちに飛びついてきた!
そして目と鼻がくっつきそうなほど顔を近づけて、高らかに宣言!
「もちろんこの私も参戦し、すべてを蹴散らしてさしあげますわ……貴女をふくめてね!」
「えっ」
「察しの悪い! その日が来るまでこの勝負はひとまずお預けといたします! どうせ貴女も参戦するのでしょう? であればバトルロワイヤルにて、今日の決着をつけましょう!」
「いやいやいやまてまて!」
「おーっほっほっほ! それではごきげんよう! どこまで成長するか、今から楽しみですわ!」
私の訴えを完全無視しながら、ファラは【イカロスの羽】を取り出してその場から消えた。
ちょっとーー!!?
「私これから錬金術でアイテム作りまくるつもりなんですけどーー!?」
後に残ったのは「お前やべーのに目をつけられたな」的な視線を送って肩をポンポンたたくアルのみ。
「ちょっとーーー!! 聞いてよーーー!!」
うるさいものが何一つなくなったフィールドで、私の声だけがやたらと空洞に響いた。
それにこの時、私は思ってもいなかったんだ。
この一連の騒動を、生配信で見せてしまうことがどういうことを引き起こすのかを。
そのお話は、また今度ってことで。