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第16話 没落令嬢と壊れた祠



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 条件「高さ20メートル以上から落下しダメージを受ける」達成! 【クラックフォール】獲得!


【リバースドール】発動! リーズは復活した!


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「なんつー条件よ……」


 ヒドい煙の中、場違いにも軽快に鳴って現れたウインドウがあたりを照らし出した。

 取得条件がダメージな時点でどうせろくでもないスキルなんでしょうけど!

 あーあー、スーサイドだのデスマーチだの! このゲームどうしてこうヘンなスキルばっかりなんですかね運営さん!?


「ったく、ファラもどこよ……って」


 探す必要はなかった。

 私の目の前でファラは……。


「んーー! んんーーーっ!」


 刺さっていた。

 斜め45度。地面に見事な鋭角で刺さってて、ファラの実況画面は一面真っ黒な中『ファラ様ああああああああ!』のコメントで埋まってる酷い有様。


 アル曰くVRの実況映像は視線をカメラ機能とつなげて直接映像が届けられるらしいから、顔が埋まってしまったらそりゃあこうなろうという物だ。

 面白いからスクショ撮ったろ。ぱしゃり。


「しっかしまあぞっとしないわね……ワンチャン私もああだもの」


 都合よく死ねるくらい弱ってたからいいものの、運が悪ければアルが二人仲良く床に刺さっている謎の光景を目にして、カメラを通してネットに垂れ流されるところだ。

 アイテムボックスを見てみると、半分にぽっきり折れた彫像【リバースドールの残骸】が2枠分残されていて、どうやら役目を果たしたらしい。

 マルジンさん、あなたが渡してくれたアイテムはしっかり役に立ちましたよ。


 それはそれとして、どうしたもんか。


 ファラが刺さっている限り、勝敗の確認もできやしない。

 かといって自分ひとりの力じゃたぶん抜けないし、HPもスタミナも全快とはいえ走りっぱなしはちょっと堪えた。


「アルを待つか……」


 クラッシュピラーは攻撃してよし、壁にしてよし、道にしてよしの万能スキルだけど、出している間は地面に刺している剣を戻せない。

 今頃はひとりで必死こいてあの回廊めいた道をぐるぐる回ってるんだろうな……と思ってたら、大きく地面が揺れ始めた!


「な、なに!?」


「んーーー!?」


 原因不明の揺れに、私とファラは声を上げる、けどほどなくして揺れは収まった。

 なんだ、ただの火山活動ってやつか……


「もう、早く来なさいよアル……! アイツだってリキッドウェアの効果がそろそろなくなるでしょ!」


 ファラと私はさっきの大砲でずぶぬれだから、【焦熱】でダメージを受ける心配はほぼないようだけど、アルは補充しないとまずい。

 最悪道半ばでぶっ倒れてロスト、埋まっている彼女を私がひとりで掘り起こす羽目になりそうだ。


「はぁ……この私が土いじりとか、ずいぶんはしたなくなったもんよね……」


 令嬢がそういうことするのは、アニメや漫画だけにしろっての。本物はもっと一般的なんだから。

 仕方ない、ここの素材を集めてアルを待つか。最奥部の素材なんて絶対いいものばっかりだし。


「フラムパウダー、キプロス石、焼けた砂、シュヴェア鉱石……まあ岩石や砂よね……」


 そんな風に独りぶつくさ言いながら、キラキラ集めをしていた時だ。



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 素材【シュヴェア鉱石】獲得!

 素材【黒曜石】獲得!

 素材【オーブのカケラ】獲得!

【アルフォンスからコールされました ボイスチャットを開始しますか?】

 素材【烈火の水晶石】獲得!

 素材【石材】獲得!

素材【木材】獲得


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 ん?

 素材に交じって、なんか変なメッセージがあったぞ今?

 あいつめ、こんな便利な機能あるんなら教えなさいよ……


「聞かなかった私も悪いけど!」


 言いながらYESのボタンをタップ。

 すると息を切らしながら走るアルの声がしてきた。


「おー走ってた走ってた」


『おーじゃないわ、逃げろ!』


「はい? なんでよ、ここいい素材たくさんあるわよ!」


『気づいてなかったのか!? さっきの地震でマグマからドラゴンが出てきて、今その上を旋回してる! 早くファラを連れ出して外に出るんだ!』


 いいい!?

 そういえば確かに、私とファラがぶち抜いた屋根の上を影が覆ってる!


「ちょ、ちょっと! ファラ、さっきの大砲で地面に刺さっちゃって、ぐったりしてるのよ! あんたが追いついたら掘り起こしてもらおうと思ってて」


『いや素材採るより先に掘り返せよ! 窒息して死ぬぞ!?』


「……わかったわよ! ブリッツ!」


 ファラの周囲に電撃を当て、地盤を少しだけ壊した。こうすれば引っこ抜くのも少しは楽になるはず――


『あぶない!』


 瞬間。

すさまじい勢いの衝撃波が祠の上から襲い掛かった!

私とファラはその余波で吹っ飛び、もろともに浮島の出入口に投げ出された。


「っつつつ、いったい何──」


起き上がった私は、祠を押しつぶした何かの……全容を見ることになる。


「シャアアアアアーーー!」


 言うなら20メートルは超えてる巨大ヘビ。

 赤黒いウロコ、後頭部あたりから伸びるヤギみたいなツノ。顔は鼻先にかけて逆三角形になっていて、ツノの間から燃え上がる炎のような毛がたなびいていた。

 山の噴火が意思を持ったんじゃと感じさせるそのドラゴンの瞳は、ダイヤモンドのようにギラギラと輝いており、侵入者たる私たちを睨みつけていた――!



 ━━━━━━━BOSS━━━━━━━━


 灼熱蛇龍 イグニール

 属性 火


 Lv 25


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「げほっ、ごほっ……!」


『くそっ! 逃げ回ってなるべく時間を稼げ!』


 ファラは酸欠で動けず、アルはまだこっちに来ない!

 ……この状態で、どこまでやれる!?


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