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第3話 没落令嬢とはじめての戦闘



「うーりゃりゃりゃりゃりゃりゃー!!」


 水の中土の中草の中森の中!

 茂みの中私のスカートの……短パンだった!

 とにかくまあキラキラめがけ突っ込んでいく!

 仮にも令嬢がはしたない? 知らん! そんなことは!



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 素材【樹液】獲得!

 素材【肥えた土】獲得!

 素材【ミニウッド】獲得!

 素材【くされ蜘蛛の巣】獲得!

 素材【貝がら】獲得!

 素材【ムカムカデ】獲得!

 素材【飲み水】獲得!



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 だって何でも拾えるんだもん! 草だけじゃなく虫も生き物も素材! キラキラを見るだけでそこに何があるんだろうって、気になってきちゃう!


「そーれどっこいしょー!」


 それに全く疲れない!

おっきな石とかひっくり返しても、何度も中腰になったりしても、痛くないし、痺れも全然こない!


「やー、楽しい!」


 拾ったもの全てを謎の異次元に収めたあと、手についた土を軽く落とす。

 これが全部お金にかわるんだって思うとワクワクしてくるわね。


 手にしたものはなんでも売れる物にかわる。

この調子でバリバリ集めて、売りさばくわよー!


「ひっ、ひいいい! 助けてくだされー!」


「なっ、なに!?」


 素材いっぱいでほっくほくとしていた時だった。

 大きく草が揺れたと思ったら、大きな鼻に緑のちょびひげをしたおじさんが情けない声で飛び出してきた!


「ギャギャギャー!」


 さらにそのあとから小さい影が飛び出た!

 それはおおよそのファンタジー世界でスライムとかと肩を並べるメジャーモンスター。

 緑色の肌で鬼っぽい姿をしてて、大体汚く描かれてるアイツだ!


「ゴブリン?」


「そこのお方っ、ちょうどよいところにおられた! いきなりで申し訳ありませぬがわしを助けてくだされ!」


 私が言うのと、おじさんが後ろに回ってきたのがほぼ同時。


「ええっ!? ちょ、ちょっと待ってよ! いきなり現れて助けを請われても、心の準備ができないわよ!」


「ギヒヒヒ!」


 ゴブリンはゴブリンでしたり顔でこちらを見ている!

 うわあ、こん棒で手を鳴らしていかにも今すぐボコってやる!って感じだ。

 どうしよう、前門のゴブリン後門のおじさん! 逃げる? 戦う!?


「お礼なら何でも致します! 商いの帰り故、良いものはありま」


「やります!!!!」


 古来から人は言いました!

 タダと何でもという単語には全力でたかるべし! と!


 数秒前の私? 死にました!

私は前しか向きませんので!


「よっしゃどっからでもかかってこーい!!」


 先制攻撃!

 手に持ってる杖を構え、私は猛然とゴブリンへ突っ込んだ!

 すべてはお金のために! 悪く思わないでよね!


「えーい!」


 とりあえずぶん殴る!

 ってワケで手に持っていた杖をゴブリンの脳天に振り下ろしたんだけど――


「受け止められた!? ってわわっ!」


 そのままこん棒で杖を押しのけられちゃった!

 しかもよろめいたのをニヤニヤしながら見ててなんか腹立つ!

 これならいつでもやれるぜってか!?


「イイイイイイヤッ!!!」


 そう思ってたら今度はゴブリンからすごい勢いでこっちに突っ込んできた!


「いけませんぞ! ゴブリンのスキル【ぶちかまし】じゃあ!」


 おじさんが後ろから危険を知らせてくれたけど、崩れた体勢を直すのに間に合わない! 

 結果私は全力投球なタックルをもろに食らって跳ね飛ばされ、おじさんの前からやり直しになってしまった。


「痛ったーー……」


 何とか立ち上がりはしたんだけど、お腹がとっても痛い。


「敵はスキルを持っておるのです! 迂闊に近づけばお嬢さんの貧相な体ではたちまち吹っ飛ばされてしまいますぞ!」


「誰が貧相ですって!?」


「キキィィィィィ!」


 おじさんの失礼なセリフに怒ったら、迫っていたゴブリンのこん棒をもろに受け、今度は横に吹っ飛ばされてしまう。


「ひゃあ、すみませぬすみませぬ!」


 おじさんは謝りながら尋常じゃない速さで私の後ろへ。

ええい、いちいち私の後ろに立つなー!!


「ヒヒヒーッ!」


 面白いように技が決まってゴブリンはご満悦……っていうか、全然相手の動きについてけないのなんで!? リアリティってやつ!?


「お嬢さん、魔法です! 魔法をお使いくだされ!」


「まほう?」


 突然出てきたキーワードに一瞬小首をかしげる。


「見たところその武器は【駆け出しの杖】ですな! ならば打撃より魔法を唱えたほうがダメージが入るはずですぞ! 【杖】は魔法の武器、【ハンマー】などではありませぬので叩いても力は出せぬのです!」


「まほう……魔法! ステータス!」


 そうだ、魔法を使うスキル! キャラクリの時に見たやつ!

急げ急げ……! 私はなんの魔法が使えるんだ……!?


「見つけた! これが私の魔法!」


「ひええ、来たぁあ!」


 とどめを刺そうと高く飛び上がったゴブリンをみて、もうおしまいだとばかりに頭を抱えるおじさん。

 大丈夫、あなたはお礼のために私が助けるから!


「【ブリッツ】!」


 かわされたら終わりの一発勝負。

 だけど、相手がいるのは空中、地に足がついてないならかわせるわけがない!


「ギャァァア!?」


 よっし大当たり!

 矢のような光はゴブリンのお腹に突き刺さる!


「さっきのお返しだ、ざまーみろ!」


 ようやくまともな攻撃をきめた私はすっかり上機嫌。

……だったんだけど、どうやらそれで体力がなくなったらしいゴブリンが、電気をまとったまま落ちてきて!?


「あばばばばばばばっ!」


 勝利を告げるファンファーレの中、こと切れた敗者を見事体で受け止め、私も感電してしまうのでした……




 ━━━━━━YOU WIN!━━━━━━



 モンスターの討伐成功!

 EXPを150獲得!


 レベルが2にアップ!

 ステータスポイント5を獲得!



 条件「一回の戦闘でHPが半分以下になるまで相手から通常ダメージ、スキルダメージを受け、更に自傷ダメージを受ける」達成! 【スーサイド】を獲得!



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「だ、大丈夫、ですかな?」


「大丈夫じゃなーい……」


 まだまだ明るい森の中おずおずと聞いてきたおじさんへ、私は蚊の鳴くような声で返した。




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