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第2話 没落令嬢とチュートリアル


 ざわざわと風の音が聞こえつつ、感覚がはっきりしてくる。

 横になってちょっと丸まってるんだろうなっていう漠然とした感覚が、ちょっと湿った土の匂いと風のひんやりした気持ち良さでわかる。


 ほんとすごいな科学の力……生で触れてるって感じがある。これ全部ゲームの中だっていうんでしょう?

 ゆっくりと目を開けてみると、目前にあるのはすっぽり私を覆った木陰と、雑草と……なんかキラキラ光ってる──!


「お金っ!!」


 瞬間、私の意識は完全に覚醒した! コンマ数秒の早業当社比で手を伸ばしそれを掠めとる!

 間違いない! ジュース売ってる自販機の下を覗くとたまーにあんな感じで光ってるもの!


「10円かな? 100円かな? 500円だったらお米買えるかなー!」


 拾い物は交番に届けなきゃなんだけど硬貨に名前なんて書けないし、交番も近くにないもんね!

 ということは私のものでぜんぜんオッケーよね! そう思って起き上がった後に手を開くと、


「あり?」


 たしかに握ったはずのものはどこにも無くなっていて、


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 チュートリアル「素材収集のすゝめ」が解放されました。

 チュートリアルを見ますか?


 素材「魔石のカケラ」「魔法の草」を獲得!


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 というメッセージと、はいいいえの二つのボタンが現れた。当然ここははい。


「あー、なるほど」


 するとこの現象について説明が出てきた。

 今のキラキラが素材用アイテムを示すものらしく、【素材発見】だとかのスキルで見えるようになる……試しに取ってみよう!と。


 そんでこのウィンドウの順番からして、キラキラが視界に入ったのでチュートリアルの為に出てこようととしたら、その間に私が素材を取ってしまったわけだ。

 ……すごいな私。ホントにコンマ数秒で取っちゃった。


「そういえば、ここはどこ……?」


 どうみても木に囲まれた湖のほとりだし、街の中とは思えない。


 湖に別段変わったところはない。

 覗き込んでみても、横にまとめた赤い髪と青い目、そんでもって見事なくらい細めの……いわゆるスレンダーな体が見えたからやめた。ナイチチじゃないもんスレンダーだもん……。


 ついでに看板も見当たらない……って! 不親切にもほどがあるでしょ!


「そうだ、ステータス!」


 私の声に合わせてゔん、という音を立てながら、あのスケスケウインドウが姿を表した。

 現在地とかこっちを探せばあるんじゃない?


「えーっと場所の名前、場所の名前……プロイス湖、バザルト公国城下街の西にある小さな湖。 かあ」


 やっぱりここは街の外か。

 西にある、ってことは逆に東へ進めばそれなりに広い街がある、と。

 まずはそっちを目指すって事で良さそう。


 じゃあ次は、だ。

 アインさんとの問答で、私のステータスは一体どんふうになっているだろうか。ちょうどさっきでたウインドウをスワイプしながら見ていくと、リーズとだけ書かれた項目が。これを軽くさわってみると………



 〜〜〜〜〜〜Status〜〜〜〜〜〜〜

 リーズ


 レベル:1

 Next……150exp


 職業:錬金術士

 属性:雷


 体力:130(+100)

 MP:40

 スタミナ:120(+100)


 攻撃力0(+0)

 防御力0(+10)

 魔力0(+12)

 素早さ0(+0)

 幸運0(+0)


 装備

 体 【旅人の服】

 右手 【かけだしの杖】

 左手 【×】

 足 【旅人の靴】

 装飾品 【なし】

【なし】

【なし】


 スキル

 バトルスタイル 釜調合 素材発見 魔法の才覚:雷

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 まず見るべきは振り切られたHPとスタミナ。

 ミスがあったらたまったもんじゃないもん。

 そしてありましたありました、【素材発見】! これがさっきのキラキラを見つけるスキル!


 ほかの【釜調合】も【魔法の才覚】もキャラクリで貰ったもの。 アイテム作りのスキルと魔法が使えるスキル。

 で、だ。


「【バトルスタイル】? こんなのいつもらったっけ?」


 少なくともあの扉に入るまでにはなかったはずよね。早速スキル一覧で確認してみましょう。




 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【バトルスタイル】

 特殊スキル。

 培った経験により、専用のスキルに変化する。

 あなただけの、無限の可能性。


 取得条件:初めてゲームをスタートさせる。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 ふんふん。

 ってことはまだ、これについて考えることはなさそうね。放置放置。

 そうと分かればすることはただ一つ。


「ここにあるキラキラを取り尽くすわよー! えい、えい、おー!」



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