「待ってたわよ『インフィニティ・フォークロア・オンライン』! 私の最初で最後の希望!」
開いた段ボールの中から出てきたゲームパッケージを手にとって、私は思いっきり抱きしめた!
「うふふふふふふふふふふ……」
我ながら気味の悪いニヤケ声がとまらない。
だってこれで私はすべてを取り返すんだもの、 これからの輝かしい日々を考えたってバチは当たらないでしょう?
「ああ長かった……これでなんもかんもぜんぶ取り返して、パパもママも……」
昂りすぎた気持ちが涙として頬をつたい、きらりーんとおちていく中、私は自分の身に降りかかった災難の数々を思い出していた。
ほんの半年前まで、私は今をときめくIT企業の令嬢だった。
あれが欲しいといえば買えたし、旅行したいといえば全国どこへでもいけるゼータク三昧の日々だったわ。
けれどある時、役員さんが悪いことをして捕まっちゃったものだからさあ大変。
そこからパパに隠れて悪いことをしていた人たちがどんどん見つかって捕まり、あれよあれよと言う間に借金をこさえて経営破綻。会社は借金のアテに差し押さえられちゃった!
差し押さえられたあとは悪夢以外の何者でもなかったわ。
ヤのつく自営業めいた借金取りからひとり逃がしてもらえた私は、若い身空でこの安アパートを借り、また見つかってしまわないよう慎ましく生活することを強いられてた。
……けど、そのまま惨めに終わる私じゃない。
イヤだ! こんな人生の終わり方絶対イヤだ! なんもかんも取り返して、また悠々自適に暮らすんだ!! って執念をエンジンに、私はお金稼ぎの方法を色々調べたの。
そしてある特集記事を見た瞬間、私は閃いた!
「これだ! VRゲームの世界に乗り込んでクエストをこなしたり、手に入れたアイテムを売りまくったりして得たゲームマネーを両替しちゃえば、借金取りに見つかることなくお金を稼いでいける!」
そうして見つかったのがこのゲーム『インフィニティ・フォークロア・オンライン』!
VRMMOっていうオンラインゲームで、おあつらえむきなことに業界大注目と大評判! 雑誌のレビューも満点だし間違いない!
「いっただっきまーす!」
大興奮冷めやらぬまま、もうすぐサービス開始の時間。私はこの日のためにとっておいたレンチンご飯を一気に食べ、
「頼むわよ、あなたのために残ってたお金が半分以上消し飛んだんだから……!」
一緒に送られてきたVRヘッドギアに語りかけ、これを装着する。
おかげさまで今後は三食もやしで暮らすことになっちゃったけど、必要経費だもの、しかたない!
「トイレよし! 水分よし! お腹いっぱい……じゃないけど! 行くわよ、“ダイブ・イン”!」
最後に起動に必要らしいワードを言うと、そのまま私の意識は深く沈み込んで行ったーー!